下関市彦島福浦町のアパートで2010年11月、保育園児の女児=当時(6)=が殺害された事件で、殺人などの罪に問われた同市向洋町、無職の男(28)の裁判員裁判の判決公判が25日、山口地裁であった。長倉哲夫裁判長は「犯人であると強く推認できる。身勝手な動機に酌むべき事情はない」として、懲役30年(求刑無期懲役)を言い渡した。弁護側は「事実認定はずさん」として26日にも控訴する方針。
長倉裁判長は、同被告のものと同型のDNAが検出された、アパート室内のおもちゃについて、同被告が事件以前に触れる機会がなかったことや、DNAの鑑定結果から、DNAが付着したのは「犯行時以外にない」と断定した。
DNAが物から物へ付着したという弁護側の主張に対し、鑑定人の証人尋問や鑑定結果を挙げ、「考えがたい」と一蹴。遺体発見現場のそばで被告が吸ったとみられるたばこが見つかり、同被告が公判で「現場には行っていない」と述べたのに対し、「常識的に考えて偶然の一致が起こるとは考えにくい」とし、弁護側が訴える「第三者による犯行の可能性」を否定した。
犯行動機について、同被告は事件前に元交際相手で女児の母親(31)から警察に通報、逮捕されていることなどから、「恨みを晴らす目的で犯行に及んだ」と指摘。その上で、被告の靴とみられる足跡が現場アパート1階と2階のベランダ手すりから採取されたことを挙げ、「ベランダ窓から侵入した」と結論付けた。
「何の罪もないわずか6歳の女の子を殺害し、残虐な犯行。遺族らの悲しみは深く、怒りは強い」と量刑理由を説明。被告の法廷での発言には「不合理な弁解に終始しており、反省している様子が全く認められない」と断罪した。 |