大津弾でスペイン沈めた！日本初、男女白星発進！…サッカー男子

前半３４分、決勝ゴールを決めて喜びを爆発させる大津

　◆ロンドン五輪サッカー男子１次リーグＤ組　日本１─０スペイン（２６日・グラスゴー、ハンプデン・パーク）　関塚ジャパンが“グラスゴーの奇跡”を演じた。前半３４分にＭＦ大津祐樹（２２）＝ボルシアＭＧ＝が挙げたゴールを守り切り、１―０で優勝候補筆頭のスペインを破った。９６年アトランタ五輪の“マイアミの奇跡”以来となる大金星。次戦（２９日）のモロッコ戦で勝てば、００年シドニー五輪以来３大会ぶりの決勝トーナメント進出が決まる。五輪サッカーで男女がそろって白星発進するのは史上初となった。

　関塚ジャパンが、サッカー史に残る番狂わせに成功した。気温１５度。肌寒いグラスゴーを沸騰させ、優勝候補のスペイン撃破の主役は“チャラ男”だ。

　前半３４分、ＭＦ扇原の右ＣＫに大津が反応した。ＤＦモントーヤに体を預けて難しいバウンドに右足を合わせる。技ありのボレー弾が、マンチェスターＵの正守護神デヘアの牙城を破った。「気持ちのいいゴールだった。初戦は絶対に勝ちたかった」。まさかの決勝ゴール。鮮やかな茶髪を振り乱して歓喜を爆発させた。

　２１日の親善試合メキシコ戦で途中出場ながら後半３９分に決勝点を決めて２―１の勝利に貢献。ＭＦ宇佐美から先発の座を奪った大津は“もっている男”だ。１１年１１月のアジア最終予選バーレーン、シリア戦は２戦連続決勝弾。関塚ジャパンで決めた４発がすべて決勝点だ。

　しかし、サッカー人生のすべてが順風満帆だったわけではない。鹿島のジュニアユースからユースに昇格できず、東京・成立学園に進学した。「ここ一番に弱い子だった」と鹿島スタッフは成立学園の宮内聡監督（５２）に落選理由を説明したという。大事な試合前にけがで体調を崩す“もっていない”少年だった。

右足でシュートを決めた大津（右）

　「３年後に絶対に見返す」。卒業後のＪリーグ入りを目指してサッカーに打ち込んだが、甘さも残った。授業中に騒ぐなどの問題で監督に苦情が届くこともあった。「チャラ男と言われても仕方ないヤツ。ただ、サッカーでは情熱を燃やして、文句言うようなことは何もしなかった」と宮内監督は言う。派手なルックスと裏腹に地道な努力を貫いた。０８年に柏に入団。１１年に移籍したボルシアＭＧで出場機会に恵まれなくても必死に成長の糧を探した。負傷のため、前半４５分でＭＦ斎藤と無念の交代。後半はベンチで痛めた左足首をテーピングで固定しながら、見守った。１―０で勝利の笛を聞いた直後、うれし涙があふれた。

　「最後まで戦ってくれた選手に感謝したい。メダルを取りに行きたい」。次のモロッコ戦（２９日）の出場は微妙だが、９６年アトランタ五輪でブラジルを撃破した「マイアミの奇跡」と並ぶ衝撃をグラスゴーに残した。６８年メキシコ五輪以来、４４年ぶりのメダルも夢物語ではない。

　◆大津　祐樹（おおつ・ゆうき）１９９０年３月２４日、茨城県生まれ。２２歳。鹿島ジュニアユース、東京・成立学園高を経て０８年に柏に入団。２年目の０９年にレギュラーに定着し、３３試合で６得点。１１年７月に独１部ボルシアＭＧに移籍した。ブンデスリーガでは３試合出場で得点なし。関塚ジャパンでは１１試合４得点。利き足は右。１８０センチ、７３キロ。