「遙なるコンシェルジュ「男の悩み 女の嘆き」」

「53歳妊娠」いいかげんにしてくれ

無責任に“勇気”をばらまくメディアとタレントたち

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2012年7月27日(金)

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「子供がほしい人は35歳まで」こそ報道すべし

 主観で、無茶を承知で要約しよう。子供を産みたければ35歳までに決断を。45歳ではもう手遅れ。35歳から40歳まではまだなんとか不妊治療対象として可能性があるが、高額出費やそのことに人生の目的を集中したくないのなら、35歳までだ。

 「子供がほしい人は35歳まで」ということこそ、学校や社会で声高に広めるべき情報なのに、53歳まで子が産める情報のほうが優先する。

 そして「うそ!」という現実をやむなく受け入れ断念した女性たちが、“53歳妊娠”に心を爆破されるのだ。

 坂上みきに罪はない。報道の仕方と、タレントのコメントに罪がある。騒ぎを見る限りにおいて、仕事をすることで先延ばし感が自責の念を生み、もう生理もあがろうかという年齢になってなお、女の肉体に課せられた宿題のようなもののくびきから解放されない女性たちの心の内が見え、胸が痛む。

 だが、改めて振り返り、35歳の時に、仕事をいったん横に置き、子育てに専念できたか。

 20代で産むとキャリアを放棄する人生が待ちうけ、35歳で産むと築いたキャリアから転落する恐怖心がまだまだ今の女性たちにある。残念だが、環境や条件に恵まれた女性以外は、仕事か子育てかどちらかを選ぶしかない。選んだ以上は、腹をくくるしかない。

 35歳までに、どっちの人生を選択するか決めてください。坂上みきを目指したら、将来、自分を恨むことになるでしょう。

(文中敬称略)

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遙 洋子(はるか・ようこ)

遙 洋子

大阪府出身。タレント・エッセイスト。関西を中心にタレント活動を行う。東京大学大学院の上野千鶴子ゼミでフェミニズム・社会学を学び、その体験を綴った著書『東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ』(ちくま文庫)を執筆。これを機に、女性の視点で社会を読み解く記事執筆、講演などを行う。近著に『主婦たちのオーレ!』(筑摩書房)、『女ともだち』(法研)など。公式ウェブサイトはこちら

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