プロの舞台での活躍を誓ってガッツポーズをする岸部桃子=茨城GC東Cで
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◇2012年度LPGA最終プロテスト<最終日>
▽26日、茨城県・茨城GC東C(6476ヤード、パー72)▽晴れ、気温33度、風速2メートル▽94選手
昨年の東日本大震災で被災した福島県いわき市生まれの岸部桃子(18)=富岡高卒=が、75とスコアを落としながらも通算4オーバーで一発合格を果たした。高校の授業中に地震にあい、しばらくは愛用のクラブも置き去りにしなければならない苦難を味わった。他の被災した人たちに勇気を届ける合格となった。7アンダーでトップ合格した東浩子(20)はmeijiカップ(8月3〜5日、札幌国際CC島松C)から13試合のツアー出場権を獲得。4オーバー、18位タイまでの24人が合格、27日の入会式を経て正式に女子プロゴルフ協会(LPGA)会員となる。
岸部の目から、大粒の涙がポロポロととめどなくあふれた。悲しみ、苦しみを乗り越えての合格だった。
福島第一原発から10キロ圏内に位置する母校での授業中に被災し、今年3月の卒業式も、学校ではなく福島市内のホールに集まって卒業証書を受け取った。プロスポーツ選手になるにはきゃしゃな体つきで、昨年8月のNEC軽井沢72ゴルフに出場した際には同じ名の上田桃子に「ご飯いっぱい食べなよ」と言われた。だが、震災後の1年間で、心は人一倍強くなった。
「いろんな人たちに支えてもらったので、その人たちのために頑張ろうと思った。プロになろうと決めたのも、その気持ちからです」という。通算1オーバーからの最終日。「やっぱり力が入っちゃって、ショットは左へ飛んで木の下とかに行くし、パットも短いのが外れて…」。我慢を続け、合格ライン上での通過となった。
苦しいラウンドを支えたのは、部室に置いていて、もう出すことはできない、あきらめてほしい、と言われた愛用クラブの1本、ユーティリティーだ。運良く取り戻すことができた“相棒”だ。
合格者アンケートには「自分の力だけでは合格できませんでした。テレビに出られるように頑張ります」と書き込んだ。被災地へのメッセージに違いなかった。
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