2012年07月27日

政府事故調の最終報告書を批判するB

6月18日の記事「原発事故の真相を教えます」にこのように記しました。

バックフィットの大切さは、1981年の5月の第094回国会 エネルギー対策特別委員会で専門家から指摘されていますが、細川護煕元総理や共産党の山中郁子元議員などが、「何もしてこなかった」、つまり怠慢政治をしてきた結果が今回の事故につながったのです。共産党は「わが党は危険性を指摘してきた」と宣伝していますが、まったくのナンセンス、原発問題に口を出せる立場ではないことを思い知る必要があります。

http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/094/1720/09405291720007c.html

(長いです。難解です。しかしながら専門家からの指摘は最もなものばかりであり、この議事録を頭に入れない事故調査はありえません。原発問題の入り口であり、今後への指針もこの中に詰まっています。)
<終了>
http://dream333.seesaa.net/article/275838278.html

私は、この議事録が示す原子力発電所が抱える問題点を理解した上で、福島第二原子力発電所の安全研修に臨みました。

畑村委員会は、果たしてこのエネルギー対策特別委員会の議事録を読んでいるのでしょうか。聞いてみたい気持ちでいっぱいです。なぜなら、この特別委員会の提言は極めて貴重なものであるからです。

その中から、今日は一点だけ重要な点を指摘しておきます。それは「労働組合機能が全く働かない組織に安全はない」ということです。

この特別委員会は、1981年3月8日の敦賀原子力発電所廃液漏れ事故を受け、設立されたものです。

<引用開始>
○参考人(高松実君) 電力労連の政策局を担当している高松でございます。
<中略>
 電力労連は、エネルギーの安定供給のためには、現実的な問題として原子力発電は不可欠の選択と認識しています。そういう中で、スリーマイルアイランドの事故の教訓を生かしながら、ガラス張りで運営をしていくべきだということを強調してまいりました。特にスリーマイルアイランドの事故が、人為的なミスの重なりにより大きな事故に発展をしていった経過を踏まえまして、人為的なミスをいかに最小限に食いとめていくか、またそれに対応するような保安規定の見直しなど、運営体制の確立などを求めますとともに、仮に人為的なミスが発生をいたしましても、十分カバーできるようなハード面、設備面を整える、いわゆる品質管理のあり方などを電力経営はもちろんのこと、関係各位に要請してまいりました。
 また、労働組合としての組合員を初め、従事者に対しましても、みずからの技能におぼれることなく、安全を最優先に心がけるよう指導、教宣をしてきたところであります。その観点から、今回の敦賀原子力発電所の事故は、まことに重大であり、地域住民の方々を初め、多くの関係者の皆さんに多大の御迷惑をおかけいたしておりますが、事故の事前防止に労働組合として力が及ばなかったことについて、責任を痛感をしているところであります。目下、事実関係の把握に当たってまいりましたが、ほぼ全容が明らかになる中で、次々にこれまで知り得なかった新たな事実が明らかになるという事態は、率直に申し上げまして組合も背かれたと断ぜざるを得ないと思いますし、憤りの気持ちでいっぱいであります。この結果を会社が謙虚に反省をし、会社が責任の結末を厳格に措置して、特殊性の強い原子力発電を管理運営するに値をする経営体制の確立を断固として求めていきたいと考えているところであります。
 電力労連といたしましては、今回の問題を重要視いたしまして、内部に特別委員会を設置をいたしまして、事実関係の調査の終了次第、原子力発電所の安全確保に対する労働組合としての見解を明らかにしてまいりたいと考えております。
<引用終了>

オリエンタルランドには「OFS」というゼンセン同盟系の労働組合が存在し、上記のような「ガラス張りの運営」に大きく寄与しています。

翻って、現在の日本経済界における労働組合の存在価値はどれだけのものであるでしょうか。

私の持論は「国鉄の民営化は間違っていた」というものです。中曽根元首相も「民営化は労働組合つぶし」が目的の一つだったと認めているようですが、安全管理の専門家の私から見るとその弊害は甚大なものになってしまったと断じざるを得ません。

以下のシンポジウムはそのことを極めて明確に表現しています。

2005年09月14日16時51分掲載日刊ベリタの無料記事から引用
<引用開始>
先月28日開かれた「人らしくフェスティバル」で、中山千夏、鎌田慧、立山学の各氏が、公共性をはがし取った「民営化」の本質について、語り合った。(ベリタ通信)


国鉄民営分割化政策全体の見直しを」

立山 鎌田さんがおっしゃるとおりですね。ちょっと言っておきたいことは、安全性を向上するっていうやつは安全を優先しろということで、職場で事故を芽のうちから発見してチェックする労働組合の力を認めてあげないといけないですね、だって事故の芽を見つけるのは現場の人たちでしょう、それは事故になってまずいのちを失うのは鉄道労働者だから、このことを認めることによって国鉄時代にも事故はありましたが 世界一と評価される安全な輸送ができるようになったのは国鉄の安全闘争が盛り上がったからなんですね。だから世間ではいかにも大人なんてさ順法闘争をやったときに混乱したようなことをいいますけども、あれほど一番事故が減ってるんです。あれを証明するのは定刻発車という本が最近出ていますから、それをご覧になればね、順法闘争をやってたころには安全で遅れは少ないんですよね。それに2番目はね、そういうことをやったときにはね細かいことは別にしても国労と当局の間でもし遅れた場合に、もし遅れた場合無理な回復運転は絶対にしないという協定がむすばれているんですよ。これがいまだに生きていたら尼崎事故はなかったわけです。つまり無理な回復運転をしない、そうゆう圧力をかけませんということを労働組合と当局との間で結ばなきゃいけないですね。そのためには労働組合がね、経営から自立しなければだめなんだな。実際、経営の言いなりになるような組合ならだめなんでしょう。
<引用終了>
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=200509141651503

国鉄民営化の際に中核をなした労働組合員に課せられたのがあの「日勤教育」でした。徹底的に労働組合をやっつけたことが、今日の「不安社会」のもとになっているのです。

この点からの考察がなされていない政府や国会の事故報告書には「一文の価値もない」と言わざるを得ません。
posted by M.NAKAMURA at 11:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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