【ニューヨーク17日共同】一九九八年冬季五輪の招致争いで、ソルトレークシティー(米ユタ州)が国際オリンピック委員会(IOC)と深い関係にあった米NBCテレビ関連会社のNBCスポーツ幹部から、ライバルの長野市に打撃を与えるために、カネにまつわるうわさを流すようアドバイスを受けていたことが十七日、分かった。
AP通信によると、二〇〇二年ソルトレークシティー五輪組織委員会が明らかにした招致段階の資料で、イスラエル・オリンピック委員会代表でもあったアレックス・ギラディ氏が「うわさだけでなく、日本についての事実をつかむように」と指示していた。
イスラエル五輪委代表団との会合に関するメモには、「長野で五輪を開催することの一番の強みはIOCに入るカネだ」とのうわさを流すよう、同国代表団は助言したとなっている。ギラディ氏はその後、九四年にIOC委員に就任している。
(2000年12月19日 信濃毎日新聞掲載)
ソルトレークシティー冬季五輪招致委員会の資料が、長野冬季五輪の招致活動で買収工作があったと指摘した―との米メディアの報道について、長野市の塚田佐市長は十八日の定例記者会見で「伝聞の伝聞に基づく内容で、全くのデマ情報。何か政治的な意図があるのかもしれないが、長野にとっては全く迷惑な話だ」と述べた。
米NBCテレビ関連会社の幹部が、長野市に打撃を与えるうわさを流すよう、ソルトレークにアドバイスした―との報道についても「当時は招致都市が多く、自分たちが有利になろうと、相当なデマが流れていた。長野は国際オリンピック委員会(IOC)が示したルールに沿って招致活動をした」とした。
一方、田中康夫知事は、米紙の報道がはっきりしない内容のため「情報があいまいな状況では、私が答える必要はないと思う」としている。
(2000年12月19日 信濃毎日新聞掲載)
【ニューヨーク17日共同】「長野は一票を十万ドル(約一千百万円)で買った」―。ソルトレークシティー冬季五輪招致委員会が作成した秘密文書が、一九九八年冬季五輪招致に成功した長野市の買収工作を指摘していることが十六日、明らかになった。
ソルトレークシティーは九八年大会開催に立候補し、長野に敗退。再挑戦して二〇〇二年大会の開催権を獲得したが、その際に不正な買収工作をしたとして招致委員会の責任者らが起訴されている。
AP通信によると、ソルトレークシティーの招致責任者は、九一年三月にアイルランドの五輪関係者から、イタリアの五輪関係者の話として「長野は一部の国際オリンピック委員会(IOC)委員と、一票につき十万ドルで取引をしている」との手紙を受け取った。
同年六月のIOC総会での投票で、長野は小差でソルトレークシティーを破り、開催権を獲得した。
罪を問われているソルトレークシティーの招致責任者は、長野が買収したのは疑いのない事実であると指摘している。
◇
塚田佐長野市長は十七日、ソ市招致委の秘密文書が指摘したという買収工作について「全くの事実無根であり、そのような事実は絶対にない」と、全面否定している。
(2000年12月18日 信濃毎日新聞掲載)
北佐久郡軽井沢町の元町議岩田薫さんら五人が、長野冬季五輪招致費の使途は不当として、長野五輪招致委員会(九一年解散)に招致費を支出した吉村知事と、塚田長野市長ら開催地の三市町村長、招致委の当時の役員四人を相手に、交付金など計八億三千万円余を各自治体に返還するよう求めた訴訟で、長野地裁(佐藤公美裁判長)は十日、訴えを却下した。岩田さんら原告は控訴する方針。
住民訴訟は「当該自治体の住民のみが原告となり得る」と定めている。佐藤裁判長は「そこに住んでいない自治体への訴えについて各原告は原告適格がない」と指摘。また、原告の一部が県に対して行った住民監査請求から提訴までの期間が、同法の規定(三十日以内)を超えており、「訴えは不適法で不備を補正できない」と却下した。
(1999年9月11日 信濃毎日新聞掲載)
六日の県会総務委員会(太田道信委員長)で、長野冬季五輪の招致活動問題が取り上げられた。日本オリンピック委員会(JOC)の同問題での最終調査報告が三月末にまとまり、長野冬季五輪組織委員会(NAOC)が六月の国際オリンピック委員会(IOC)総会で五輪運営の最終報告を済ませたのを受け、あらためて総括的に論議。この中で、花岡勝明総務部長は、同招致委員会の会計帳簿を焼却した問題で「県民からの(批判の)声を謙虚に受け止め、今後の行政運営の教訓にしたい」と述べた。
下崎保氏(県政会、更埴市)が「招致委が九一年に解散して間もなく、帳簿を焼却してしまった問題では、県民にいまも釈然としない思いがある」とし、招致委を指導する立場にあった県の見解をあらためてただした。
同委員会の要求で出席した所管の県教委体育課の荒井英彦課長は「招致委の当時の事務局幹部の判断で焼却し、法的には問題はなかった。六月のIOC総会でも、長野の招致関連で、特に問題となるような事実はなかったとの結論だったと聞いている」と説明した。
また、中島昭一氏(社県連、塩尻市)が「帳簿問題などは、特別委員会を設置するのでなく総務委員会で責任をもって対応する方針できたことを再度、確認したい」と述べ、了承された。
(1999年7月7日 信濃毎日新聞掲載)
五輪招致疑惑への見方は厳しいが、スポーツの祭典としての五輪人気は変わらない―。日本オリンピック委員会(JOC)は三十日、五月に実施したアンケートの結果を公表した。JOCが一般市民を対象に、五輪に関する意識調査を行ったのは初めて。
五輪招致疑惑に対する認知度では、「よく知っている」(二九・五%)と「大体知っている」(五二・七%)の合計が八割を超え、問題への関心の高さを示した。だが、国際オリンピック委員会(IOC)が行う改革については、三二・〇%が「全く期待できない」と答え、「期待できる」の一七・四%を大きく上回った。
五輪に対する興味では「非常に興味がある」が二〇・二%、「まあ興味がある」が五六・三%を数え、根強い五輪人気を証明。五八・六%が五輪を「スポーツを通した世界的なお祭り」と位置付けた。
五輪招致疑惑を「知っている」と答えた五百十八人に聞いた気持ちの変化では、七二・六%が「興味は変わらない」と答えたが、「興味がなくなった」という人も九・五%いた。
調査は、首都圏に住む十五歳から五十九歳の男女を無作為に抽出。直接面接法で九百人に質問し、六百三十人から有効回答を得た。(共同)
(1999年7月1日 信濃毎日新聞掲載)
吉村知事は二十二日の定例記者会見で、国際オリンピック委員会(IOC)がこのほど韓国・ソウルで開いた総会で、五輪関連組織に会計帳簿の保存を義務付ける―との倫理規定を承認したことについて「IOCにどこまで義務付ける権限があるかは分からないが、一定期間、帳簿を保存しておくことは望ましい」と述べた。
IOCの方針の背景には、長野冬季五輪招致委員会の帳簿類が焼却処分され、批判を招いたことがあるとみられる。知事は「長野の招致委は焼却したことで疑惑を招いてしまった」とも述べた。
また、サマランチ・IOC会長がソウルの総会で、二〇〇八年夏季五輪の開催都市を選定する際、IOC委員の候補都市訪問を禁止するべきとした点で、知事は「現地を見てもらった上で決めた方がベターではないか」とした。
(1999年6月23日 信濃毎日新聞掲載)
【ソウル20日共同】国際オリンピック委員会(IOC)の倫理委員会は二十日、総会で中間報告し、五輪憲章に盛り込む新しい倫理規定の効力の範囲はIOC委員ばかりでなく、五輪招致都市、五輪組織委員会、五輪招致に関係する国内オリンピック委員会(NOC)も含むとの内容を示した。
倫理委は新倫理規定の作成作業の進度に応じて、同規定を順次改訂することにしているが、この日の中間報告分までが総会で承認された。
委員への贈り物については全面禁止とはしないが、地元の習慣に応じて尊敬や友情のあかしとして儀礼的なものに限ると明記した。
五輪関連の組織は、収支を明確に記載し、会計の原則に従って帳簿の保存を義務づけられる。IOC理事会が指定する専門家による監査を受ける場合もあるとした。長野冬季五輪の招致委員会が帳簿類を焼却処分したような事態が、今後起こらないようにするための措置とみられる。
このほか五輪立候補都市は、IOCの招致に関するマニュアルを順守しなければならず、経済的、政治的な支持を得ることを目的にエージェントら第三者に接触することは厳しく禁止される。
(1999年6月21日 信濃毎日新聞掲載)
【ソウル20日共同】国際オリンピック委員会(IOC)のサマランチ会長は二十日、当地での総会閉幕後の会見で、ソルトレークシティー五輪招致スキャンダルがひとまず終結したとの認識を示し、倫理規定、罰則規定の承認など、改革に向けた活動が順調に進んでいることを強調した。
同会長は「まだまぶしい太陽を取り戻してはいないが、荒波は収まり、静けさを取り戻した」と述べた。
改革委員会(IOC二〇〇〇委員会)で見直しを進めているIOC委員の構成に関して、現在三十六人いる五輪出場経験者の委員をさらに増やしたい意向を表明し、選手委員会などから十人程度を迎え入れたいとした。国際競技連盟(IF)、国内オリンピック委員会(NOC)の代表をより大きな割合で加える考えも示した。
トリノ(イタリア)を選んだ二〇〇六年冬季五輪開催地決定では、新しい選定方法が機能したと指摘。招致疑惑の問題を提起したホドラー理事(スイス)に対する反感が反シオン(スイス)の票につながったのではないかとの質問には「そうは思わない」と否定した。
大阪が立候補の意思を明らかにしている二〇〇八年夏季五輪の開催都市選定方法については、個人的意見としながらも、IOC委員の都市訪問を禁じるべきとの見解を示した。
(1999年6月21日 信濃毎日新聞掲載)
【ニューヨーク6日AP=共同】国際オリンピック委員会(IOC)の組織改革に取り組む「IOC二〇〇〇委員会」の委員に、ヘンリー・キッシンジャー元米国務長官と一九八四年ロサンゼルス五輪組織委員会会長を務めたピーター・ユベロス氏が任命されたことが六日、明らかになった。
関係筋によると、アニタ・デフランツIOC副会長も選ばれ、既に発表されていたビル・ヒブル米国オリンピック委員会(USOC)会長と合わせ、計四人が米国から選ばれた。IOC二〇〇〇委員会は、二十人から二十四人の規模で構成され、IOCは六月初旬に初会合をもちたいとしている。
(1999年4月8日 信濃毎日新聞掲載)
長野五輪招致で国際オリンピック委員会(IOC)委員が過剰な接待を受けたのは不当などとして、北佐久郡軽井沢町の元町議岩田薫さんら三人が六日、IOCとサマランチ会長を相手取り、県と競技開催地の長野市、下高井郡山ノ内町、北安曇郡白馬村が五輪招致委員会に交付した計八億三千万円余を県などに返還するよう求める訴えを東京地裁に起こした。
訴状によると、日本オリンピック委員会(JOC)が設けた「IOC問題プロジェクト」が、九人のIOC委員がIOC規定違反の視察などを行ったとIOCに報告したが、IOCは三月の臨時総会で長野招致に関しては問題とせず、一切処分をしなかったのは不当だと主張。「招致費のうち、税金である交付金の返還をIOCに求める形でしか、不正を糾弾できない」とした。
サマランチ会長も招致委から高価な贈り物や過剰接待を受けていると指摘。その費用が招致費から流用されており、個人として弁済する義務があるとしている。
(1999年4月7日 信濃毎日新聞掲載)
日本オリンピック委員会(JOC)は二十九日、長野冬季五輪の招致活動について調査した国際オリンピック委員会(IOC)問題プロジェクトが先にまとめたIOCへの提言を、スイスのローザンヌにあるIOC本部へファクスで送付した。
提言は八木祐四郎JOC専務理事名で送付され、(1)五輪開催都市の選定にかかわるIOC委員は立候補都市を視察するべきだ(2)その費用はIOCが負担する(3)不正再発を防ぐためIOCは自己監視機能を持つべきだ―の三点を指摘した。(共同)
(1999年3月30日 信濃毎日新聞掲載)
日本オリンピック委員会(JOC)は二十四日、東京の岸記念体育会館で理事会を開き、長野五輪招致をめぐる国際オリンピック委員会(IOC)問題プロジェクトの最終調査結果が報告された。席上、猪谷千春IOC理事は、招致委員会が情報収集などを目的に同理事の紹介でスイスの広告代理店「スタジオ6」と契約したことが不適切だった、と最終報告が指摘した点について「調査は不十分。紹介した私に対してアンフェアだ」と発言、不快感を示した。
猪谷理事は、同プロジェクトのこれまでの面接調査で元招致委幹部が「(契約が)長野招致に必ずしも有効だったとは言えない」と証言したことに対し、「(情報収集能力などの点で)スタジオ6と同じような仕事が国内の代理店でできたのか」と反論した。
さらに、スタジオ6との契約金四十五万スイスフランが高額で、うち長野開催決定後の追加分十五万スイスフランが集票活動の成功報酬では―との疑念を招いたと指摘されたことについては、「情報はただでは入らない。他の代理店と比較したのか。海外では成功報酬を設けて契約金を低く抑えるのは一般的だ」と述べた。
これに対し、同プロジェクトの座長を務めた八木祐四郎専務理事は「あくまで長野の招致関係者から事実確認する中で出た話。多くの関係者が(情報収集の)成果に疑義を持っていることは確か」と応じた。
(1999年3月25日 信濃毎日新聞掲載)
長野五輪招致活動について調査していた日本オリンピック委員会(JOC)の「国際オリンピック委員会(IOC)問題プロジェクト」(座長・八木祐四郎専務理事)は二十三日、東京・渋谷の岸記念体育会館で最終会合を開き、調査結果をまとめた。長野招致委員会による活動全体を「おおむね妥当」としたが、会計帳簿類焼却処分など一部で不適切な対応があった―とあらためて指摘した。
報告書は▽プロジェクト発足までの経緯▽プロジェクトの会議内容▽招致委関係者からの事実確認内容▽IOCへの報告書内容▽長野招致をめぐる総括的評価▽国際総合競技大会の招致に関する提言―の五項目。JOC理事会に提出する。
長野の招致活動について「不適切かつ必要以上」としたのは、▽会計帳簿など関係書類の焼却▽複数回の長野訪問などがあった九人のIOC委員への接待▽長野開催が決まった一九九一年IOC英バーミンガム総会での接待▽情報収集を目的としたスイスの広告代理店「スタジオ6」との契約―など。
スタジオ6との契約については、「招致委幹部から、必ずしも(情報収集の)効果があったとはいえない―との証言も得ている」(岡崎助一理事)とした。
IOCに対する提言もまとめ、IOCが五輪開催立候補都市への委員の訪問禁止を打ち出していることに対して、「正当な判断を下すために訪問は必要。ただし、費用はIOC負担が望ましい」とした。さらに、不正行為防止のためにIOC内部に監視機関を設置するよう求めた。
プロジェクトは、招致委の幹部らから延べ七日間、二十三人に対する面接調査を行った。最終報告がまとまったことについて、吉村知事は「JOCの判断を厳粛に受け止める」とした上で、「今回の教訓を踏まえ、五輪ムーブメントの推進のために、さらに努力したい」と述べた。
<最終報告の要旨>
JOCのIOC問題プロジェクトがまとめた最終報告の要旨は次の通り。
一、今回の調査は七日間で延べ二十三人に対して行ったが、前回IOCに報告した点以外で新たな問題は確認できず、長野冬季五輪の招致活動はおおむね妥当と判断した。
一、会計帳簿の焼却、来日IOC委員への接遇、スイスの広告代理店との契約などで、不適切、かつ必要以上の対応があった点は大いに反省し、今後の課題とする。
一、JOCは長野五輪招致委員会に十分な連絡、指導をしなかったことを踏まえ、今後の国際総合大会招致では計画、立案から活動まで密接な共同作業を行う。立候補都市には情報公開、第三者による監視システムの整備を促す。
一、五輪開催都市選考法に関し(1)選定にかかわるIOC委員は、現地を視察する必要がある(2)渡航費はIOCが持つ(3)IOC内に自己監視機能を設ける―などの点をIOCに提言する。
(1999年3月24日 信濃毎日新聞掲載)
【ローザンヌ(スイス)18日共同】国際オリンピック委員会(IOC)は十八日、ローザンヌで臨時総会最終日を開き、シオン(スイス)、トリノ(イタリア)など六都市が立候補している二〇〇六年冬季五輪開催地の選定方法について、新設する選定委員会が候補を二都市に絞った後、全IOC委員が最終的に投票で開催都市を選ぶ方法を決めた。委員による立候補都市の訪問は今回は認められない。
一連の五輪招致疑惑によるイメージ失墜の回復と厳格な倫理規定の確立などを目指し、倫理委員会と改革委員会(IOC二〇〇〇委員会)を新設することも承認した。
会議終了後に会見したサマランチ会長は「今年末か来年の臨時総会で、新しい五輪憲章の採択を目指す。二〇〇一年までの任期を全うしたい」と改革への意欲を強調した。
五輪開催都市の選定について、委員は五輪憲章で保証されている投票権を維持することになった。選定委員会の構成メンバー決定、絞り込む二都市の選考、最終選考はすべて六月十九日の総会(ソウル)で行われる。
IOC理事会は一月に、選定委員会が最終選考する新方式をまとめていた。しかし、五輪開催都市の選定こそ委員の最大の使命と主張する批判が巻き起こり、委員側に譲歩する形となった。
選定委員会はIOC委員八人、IOC選手委員会代表三人ら投票権を有する十五人と、投票権を持たずに委員長として加わるサマランチ会長の計十六人で構成する。
緒方貞子・国連難民高等弁務官に対して委員就任を要請している倫理委員会について、総会はその構成をIOC委員三人、IOC選手委員会代表一人、外部の有識者三人とすることを決めた。改革委員会は二十人から二十四人の構成にするとの理事会提案を基本的に了承した。しかし、具体的な構成や活動内容について十分な論議ができなかったことから、最終的には六月の総会で正式承認することになった。
同総会で暫定的な改革案を話し合い、十二月に臨時総会を再度開いて、組織改革に向けての骨格をつくり上げたいとしている。
(1999年3月19日 信濃毎日新聞掲載)
【ローザンヌ(スイス)17日共同=江波和徳】一連の五輪疑惑に揺れる国際オリンピック委員会(IOC)は十七日、ローザンヌで臨時総会を開き、ソルトレークシティー冬季五輪招致に絡む不正行為が指摘されたジャンクロード・ガンガ氏(コンゴ共和国)ら六委員の追放を決定、またフアン・アントニオ・サマランチ会長を圧倒的多数で信任した。
出席委員の三分の二以上の賛成で追放処分が成立した委員は、招致委などがすすめた土地転売で多額の利益を得るなどしたガンガ氏のほか、アグスティン・アローヨ氏(エクアドル)、ゼイン・ガディル氏(スーダン)、ラミン・ケイタ氏(マリ)、セルヒオ・サンタンデル・ファンティニ氏(チリ)、セイウリ・ポール・ウォールワーク氏(サモア)。
こうしたスキャンダルで委員が追放されるのはIOC史上初めての出来事だ。
総会の冒頭、サマランチ会長の無記名信任投票に臨んだ委員は九十人。結果は賛成八六票、反対二票、白票一票、棄権一人だった。
ソルトレークシティー五輪の招致疑惑に端を発した五輪スキャンダルで、IOCは創設以来最大の危機に直面。五輪運動のリーダーであるサマランチ会長への批判も集中したことから、同会長は先に「総会で自らの信任を問う」と表明していた。パウンド調査部会長(IOC副会長)は会議後の会見で、同部会から「極めて重度の注意」処分が下された金雲竜理事(韓国)については「解決しない一つの問題があり、まだ調査は継続している」と明らかにした。
調査部会が追放処分勧告の対象とし、理事会が承認した六委員は、総会で自己弁護の機会を与えられ、それぞれ潔白を主張した。
(1999年3月18日 信濃毎日新聞掲載)
「オリンピックいらない人たちネットワーク」(江沢正雄代表)は十七日までに、国際オリンピック委員会(IOC)の解体と五輪廃止を求める声明文をスイス・ローザンヌにあるIOC本部に送った。二〇〇六年冬季五輪立候補都市のイタリア・トリノの五輪反対グループ「TETE」と連名で、大阪府内の市議らでつくる「大阪オリンピックいらない議員連盟」(代表世話人・二木洋子高槻市議)も賛同している。
声明文は、▽五輪開催地は投票権のあるIOC委員への金や便宜供与によって決まっている▽自然破壊と多額の税金を要する巨大競技施設は市民スポーツと無縁▽一部委員の処分だけでIOC組織の民主化は不可能―など十一項目を理由に挙げた。
(1999年3月18日 信濃毎日新聞掲載)
【ローザンヌ(スイス)16日共同】国際オリンピック委員会(IOC)の猪谷千春理事は十六日、IOCが十五日に開いた臨時理事会でパウンド副会長が長野を含み、過去に五輪招致で立候補した三十七都市については不正行為は認められなかったと報告したことを明らかにした。
猪谷理事はただ「パウンド副会長の報告は調査リポートを提出した都市個々についてではなく、全体的な報告だった」とも指摘。今後の継続調査については「理事会の雰囲気ではリポートを提出した都市の中からはこれ以上の違反者が出るという感じではなかった。長野についても同様と認識している」と語った。
これに対し、理事会内には新設する倫理委員会が継続調査の任務に当たると認識しているメンバーもおり、長野に関する調査が終了したのかどうかは不透明だ。
(1999年3月17日 信濃毎日新聞掲載)
県民オンブズマン会議、県労連などでつくる「長野冬季五輪招致疑惑をただす県民会議準備会」(松村文夫会長)は十三日、長野市県町の県高校教育会館で、「招致疑惑をただす県民集会」を開いた。約三十人が参加。吉村知事や塚田長野市長ら関係者に対し、引き続き積極的な実態究明を求めていくことを確認した。
同準備会は二月、知事らに対し、招致活動の全容解明を求める公開質問状を提出。回答は寄せられたが、疑問に答える内容ではない―としている。今後も知事らに第三者調査機関の設置などを求めていくため、集会後の設立総会で県民会議を発足させた。
(1999年3月14日 信濃毎日新聞掲載)
長野五輪の元招致委員会職員らから話を聞く日本オリンピック委員会(JOC)の「国際オリンピック委員会(IOC)問題プロジェクト」(座長・八木祐四郎専務理事)の再調査は十一日午後も行い、来日したIOC委員に同行した職員など計七人に話を聞いた。「問題となるような新事実はなかった」としており、来週のIOC臨時総会の動向もみた上で、二十三日に会合を開いて最終報告をまとめる方針だ。
八木座長ら四人が長野市内のホテルで、来日したIOC委員や海外で招致活動をした元招致委事務総長代行の吉田総一郎氏に同行した職員三人と、委員の案内などに協力した民間ボランティア二人に、もてなしの状況などを確認。招致委事務総長だった市村勲氏に、大阪の招致活動をにらんで、経験などを聞いた。
この間、八木座長は長野地検に出向き、招致委の会計帳簿類が保管されていないのは公文書毀棄(きき)罪にあたるとした市民グループの告発を不起訴処分としたことの関連資料を出しすように検事に依頼した。サマランチ会長に絵画を贈った小諸市在住の日本画家のアトリエも訪ね、経緯を聞いた。
調査後、民間ボランティアの二人は「委員側から何かを要求されたことはなかった。遠来のお客をもてなす時と同じに、常識の範囲内だった」と述べた。
八木座長は「絵画は日本文化を後世に残すための寄贈で、好意ということを確認できた。長野の人たちがボランティアでここまで熱意を持ってやっていたのかと感銘を受けた」と話した。
十二日はJOC事務局側がIOC委員が宿泊した北信地方のホテルを回って話を聞く予定だ。
(1999年3月12日 信濃毎日新聞掲載)
長野冬季五輪の招致疑惑について調査を実施している日本オリンピック委員会(JOC)の国際オリンピック委員会(IOC)問題プロジェクトは十一日、調査の過程で浮上してきた五輪開催都市の選定方法に関する問題点を指摘する意見書をIOCに提出する方針を決めた。
この日の長野市などでの調査では、JOCや当時の招致委員会がIOCの定めた招致活動に対するガイドラインについて関係者に周知徹底しなかった面もあった。
しかし、同プロジェクトは「善意で協力してくれた人を傷つけるより、(IOC委員が投票前に立候補都市を視察することを認めているなどの)選定方法に問題があるのではないかという声が出た」として意見書を出すことにした。(共同)
(1999年3月12日 信濃毎日新聞掲載)
日本オリンピック委員会(JOC)の「国際オリンピック委員会(IOC)問題プロジェクト」(座長・八木祐四郎専務理事)は十一日午前、長野五輪の招致活動について、来日したIOC委員に同行した元招致委員会職員らに話を聞く調査を行った。
午前九時ころから長野市内のホテルで行った調査は、来日したIOC委員や海外で招致活動をした元招致委事務総長代行の吉田総一郎氏に同行した職員などから、委員へのもてなしの様子などを聞いた。
県、長野市職員のほか、「大阪の招致活動に役立てたい」として、IOC委員の案内などを応援した民間ボランティアの協力も得て、午前中に合わせて四人から話を聞いた。八木座長らは長野地検にも立ち寄った。
午前の調査を終えた八木座長は「今のところ新しいものはないですね」と話した。
長野での調査は、招致委幹部から話を聞いた二月上旬に続き二度目。
(1999年3月11日 信濃毎日新聞掲載)
長野五輪の招致活動をめぐる問題で、日本オリンピック委員会(JOC)の「国際オリンピック委員会(IOC)問題プロジェクト」(座長・八木祐四郎JOC専務理事)は九日、招致委員会事務総長代行だった吉田総一郎氏から話を聞いた。同氏から話を聞いたのは、二月上旬に続き二度目。
八木座長によると、同座長ら六人が東京都内で四時間半にわたり、海外での招致活動の様子や同行した招致委職員の数や氏名、接待や贈り物の内容などを、吉田氏に聞いた。
吉田氏からは、同行した職員は一回の訪問について三―五人が中心で、多い時は二十二人の訪問団を組んだこともあった―といった説明があったという。同座長は「話を聞いた範囲では、公表するような目新しい事実はなかった」と話した。
吉田氏は「今回は時間があり、知っていることを十分に聞いてもらえた。内容は今後の調査もあるので、JOC側に聞いてほしい」と話している。
プロジェクトは一両日中にも、来日したIOC委員や吉田氏に同行した職員、民間関係者ら五、六人から話を聞く方針とみられる。
(1999年3月10日 信濃毎日新聞掲載)
県会総務委員会は八日、長野五輪の招致活動をめぐる問題を論議し、招致委員会会計帳簿類の焼却処分について、県側は招致委事務局幹部はいずれも了承していたとの見解を示した。その上で、「県民に不愉快な思いをさせたほか、道義的に申し訳ないことをした。日本オリンピック委員会(JOC)の調査に最大限に協力することで、姿勢を示したい」と陳謝した。
総務委員会は、九日の本会議の委員長報告で、県側の見解とともに、「JOCと国際オリンピック委員会(IOC)の調査で新たな問題が出てきた場合、県会としても調査究明する」との趣旨を盛り込むことを決めた。
県政会の石田治一郎団長、社会県民連合の中島昭一団長、森田恒雄氏(社県連)がただした。石田氏は「招致活動での接待が当時の許容範囲内だったことは納得できるが、会計帳簿類の行方については子供だましのような回答だ。知事、長野市長の答弁がちぐはぐで、県民が不信感をぬぐいきれないでいる」と指摘した。
これに対し、県オリンピック室の荒井室長は「文書で決めてはいなかったが、招致委は市村事務総長以下、事務局幹部は帳簿は焼却されるものだということで認識が一致していたようだ。事務的なことなので知事、市長に持ち上げることはしなかった」と説明。矢島総務部長も「そう考えるのが自然で、事務方にはそうした認識があった」と述べた。
さらに、中島氏が「県職員なら後日のことを想定して処理を考えるべきではなかったか」とただし、矢島総務部長は「一般論として、次に大きな仕事(大会準備)が控えており、それに頭がいってしまったのではないか。冷静な対応がとられていれば無用な誤解を生まなかったと思う。非常に残念だった」と述べた。
(1999年3月9日 信濃毎日新聞掲載)
日本オリンピック委員会(JOC)の「IOC問題プロジェクト」(座長・八木祐四郎専務理事)は五日、長野五輪招致活動に関する継続調査の内容を協議し、これまでの元招致委員会幹部に対する事実確認に続き、国際オリンピック委員会(IOC)委員への接遇に同行した招致委職員から話を聞くことを決めた。二十三日に四回目の会合を開き、最終報告をまとめる方針だ。
八木座長によると、継続調査の内容は▽会計帳簿類処分により関係証拠が得られなかったことをフォローするため、来日したIOC委員への接遇に同行した職員に事実確認する▽招致委事務総長代行だった吉田総一郎氏に対する再聴取をする▽サマランチ会長に絵画を贈った画伯に、経過を直接確認する―の三点。
同行職員には、もてなしの内容や程度などを聞く予定。対象となる職員や調査時期、場所、方法は県、市側と調整して決めるが、「IOC規定に抵触していた委員としてIOCに報告した九委員の関係が中心。可能ならば、民間ボランティアの人たちにも話を聞きたい」としている。
吉田氏への再聴取は、同氏の海外渡航状況などが主体。同行した職員にも聞く考えだ。会計帳簿類の処分に関しては、住民グループが起こした招致費返還訴訟の判決文などを確認したいとしている。
八木座長は、継続調査の目的について「長野の課題を明確にし、今後の健全な招致活動に向けた対応の参考になるようにする」と説明。報告書は、大阪五輪も含む将来の五輪招致活動のあり方を視野に入れた内容にするという。
継続調査に対し、吉村知事は「調査内容に従って積極的に協力していく」とのコメントを発表した。
(1999年3月6日 信濃毎日新聞掲載)
長野市の塚田佐市長は五日の市議会本会議で、長野五輪の招致委員会の会計帳簿類を処分したことについて、「法的には問題ないとはいえ、今回このような問題となり、反省している」とあらためて陳謝した。その上で、同市長は、国際オリンピック委員会(IOC)に対して「経費のかからない客観的な開催地決定システムとし、IOC委員の任期制なども検討してもらいたい」と述べた。
同日の代表質問で最大会派の新友会、社会・市民クラブ、共産党が招致活動について質問。塚田市長は、帳簿類の処分について「長野冬季五輪組識委員会(NAOC)になって、市役所から県婦人会館に引っ越す際、招致委関係者が帳簿類をすべて処分することとし、市のごみ集積場に出された。最終的には清掃センターで焼却処分されたと考えている」と、従来の説明を繰り返した。
また、第三者による調査機関の設置について、同市長は「JOCが引き続き行う調査にも誠心誠意応じるので、考えていない」と述べた。
(1999年3月6日 信濃毎日新聞掲載)
吉村知事は二十八日、長野冬季五輪組織委員会(NAOC)の組織委員会議に先立ち、都内で開いた実行委員会議で、招致活動段階で国際オリンピック委員会(IOC)の規定に反した委員の訪問などがあった問題に触れ、「実行委員のみなさんに心配をおかけしたことを心からおわびする」と陳謝した。
冒頭、吉村知事は、長野五輪の成功を振り返った上で、「招致活動に関してさまざまな指摘があり、IOCから日本オリンピック委員会(JOC)に調査の依頼があった」と説明。「招致委員会としては当時の状況をとりまとめて、JOCに提出した」と報告した。
実行委員会は、競技会場となった市町村、スポーツ団体や観光、報道関係者など約五十人で構成。知事は委員長を務め、この日は約四十人が出席した。
(1999年3月1日 信濃毎日新聞掲載)
長野五輪の招致活動について調査している日本オリンピック委員会(JOC)の八木祐四郎専務理事は二十八日、招致委員会の事務総長代行だった吉田総一郎氏に、同氏が行った活動を資料にまとめるよう要請していることを明らかにした。
八木専務理事は、同日東京都内で開いた長野冬季五輪組織委員会(NAOC)の組織委員会議の後、「招致活動については、国民のみなさんが十分に納得していない点があるので引き続き調査をする」と説明。吉田氏がいつ、どこに出かけ、どのIOC委員に会ったかなどを、二月末までにまとめてほしいとお願いしていると述べた。
資料は、これまでの調査と同じように、県オリンピック室も協力して整理した上で、近く、JOCに提出するものとみられる。
三月五日に予定している「国際オリンピック委員会(IOC)問題プロジェクト」の第三回会合は、それらの資料を基に吉田氏への再聴取など今後の調査方法を決める予定。同理事は「IOCの臨時総会の日程にこだわらず、三月中旬までに調査の結論を出したい」としている。
(1999年3月1日 信濃毎日新聞掲載)
日本オリンピック委員会(JOC)の八木祐四郎専務理事は二十四日開いたJOC理事会で、同氏が座長を務める「IOC(国際オリンピック委員会)問題プロジェクト」の第三回会合を三月五日に開き、長野五輪招致活動の今後の調査方針を具体的に決めることを明らかにした。
同プロジェクトは、招致委員会(当時)担当者からの事情聴取や提出された資料、招致委の活動報告書を基にまとめた報告書を十五日にIOCに送付した。しかし八木座長らプロジェクトのメンバーは、会計帳簿類の焼却処分などについて招致委側から納得いく説明が得られていない―として調査の継続を決めていた。
調査対象は帳簿問題のほか、招致委の吉田総一郎・元事務総長代行への再聴取などが中心になる見込み。招致委の活動に影響力を持っていたと指摘されている猪谷千春・IOC理事への聴き取りも二十四日までに八木座長によって済んでおり、会合ではこの内容も報告される見通しだ。
(1999年2月25日 信濃毎日新聞掲載)
長野五輪の招致活動をめぐる県会論議は、二十三日の一般質問で共産党の石坂千穂氏(長野市)と公明党の佐野功武氏(長野市)が取り上げ、十八、十九、二十二日に代表質問をした県政会、社会県民連合、新風クラブと合わせて五会派の質疑が一巡した。吉村知事の答弁に、県会側は「招致委の会計帳簿類処分の経緯が説明不足」「調査委員会を設けないのはおかしい」との不満足感が漂う。一方で、「本質的にはIOCがどう浄化するかという問題だ」との声も出てきている。さらにどう対応すべきかをめぐり、一般質問終了後に各派交渉会で話し合う案も浮上している。
この四日間、取り上げた議員はいずれも、招致にかかわる問題と、ボランティアの頑張りなど大会の成功を誇りに思うことを、切り離して考えるよう強調した。その上で、そろって追及したのが、招致委員会の会計帳簿類が、なぜ、どのような経過で処分されたかという点だ。
二十三日は石坂氏が、宇留賀行雄氏(共産党、松本市)が以前に質問した時に、県側が「引っ越しの過程でなくなった」(九四年知事)、「招致委解散時に処分した」(九五年副知事)と答弁し、ずれがあることを指摘。「(知事は)県民に真実を説明してこなかった」と迫った。
各派はスイスの広告代理店との契約内容についても質問。ほかに、県政会の金子松樹氏(諏訪市)は、国際オリンピック委員会(IOC)の規定を超えたIOC委員の訪問があったことへの受け止めをただし、社県連の三上孝一郎氏(長野市)、新風クの大和代八氏(松本市)、公明党の佐野氏は、県としての調査委員会の設置を、共産党の石坂氏は第三者による調査機関の設置を求めた。
吉村知事は代表質問初日の十八日、日本オリンピック委員会(JOC)の調査内容を説明した上で、「IOCの判断を厳粛に受け止め、反省すべきは反省する。これからは同じことを繰り返さないようにしていきたい」と述べた。
一方で、接待については「過剰な接待はなかった。報道の方が過熱している」(二十二日)と答弁。会計帳簿類の処分については、置き場所がないため市の関係者が廃棄処分した―と繰り返した。
調査機関の設置も「JOCの調査でほぼすべてを解明できたと考えており、IOCの対応を待ちたい」(二十二日)「県としては最大限の努力をして調査してきた」(二十三日)として、設置しない姿勢を崩さなかった。
県側のこうした姿勢に対する各派の受け止めは複雑だ。知事与党の最大会派、県政会の石田治一郎団長は「接待については、調査機関を設置して解明するような(悪質な)問題はなく、調査委は必要ない」と知事に同調する。ただ、「答弁は予想していた範囲内。会計帳簿の処分は、だれがどんな形で指示したのかを答えていない」と、追及する構えを見せる。
他会派では、「このままだと国際的にも笑われてしまう」(社県連の浜万亀彦副団長)、「IOCの体質改善が五輪を成功させた長野関係者の使命なのに、今は守っているという感じが強い」(公明党の佐野幹事長)と、引き続き調査機関の設置を求める声が強い。
新風クの小田切行雄会長は「調査委をつくるというのが満点の対応だが…。県が(帳簿問題などについて)もう一歩進んで説明しないと、問題の終結宣言は出せない」。唯一の野党の共産党は「まだほとんどの県民がすっきりしないのではないか。県が(IOCを変える)先頭に立ってほしい」(石坂氏)としている。
一方で、追及する先はIOCやJOCではないか―とする議員も少なくない。「普通のもてなしまでおかしいと言われ続け、県民が萎縮している」という声がある。二十三日の昼休みには、社県連の控え室で、数人の議員が「攻めるならIOCの体質の方なんだよ」と口々に言い合った。
本会議を終えた同日夕。県政会の若手議員の一人がこう漏らした。「まだ県民の疑問に十分にはこたえていない。一番の問題は帳簿。処分はだれが、どう指示したのか、一つひとつ詰めていく必要があるのだが…」。県会の五輪招致論議は後半戦に入る。(畑谷広治記者)
(1999年2月24日 信濃毎日新聞掲載)
長野五輪招致疑惑問題で、県民オンブズマン会議、県労連などの「長野五輪招致疑惑をただす県民会議準備会」(松村文夫会長)は十九日、吉村知事や塚田長野市長らに公開質問状を提出した。
質問は▽招致活動の財政の全容▽帳簿類の処分経過▽真相究明に向けて第三者の調査機関を設置すべきだ―など十項目。「ソルトレークシティーやシドニーは徹底調査しており、長野の調査は不十分で県民は納得しない」とし、三月十日までの文書回答を求めた。
県オリンピック室は「招致活動はみなオープンでやってきたつもりだ。文書で回答する」と答えた。長野市も回答を約束した。
また、「オリンピックいらない人たちネットワーク」(江沢正雄代表)は同日、県会に、招致活動の実態を調べる調査委員会を設置するよう陳情した。
(1999年2月20日 信濃毎日新聞掲載)
長野五輪の招致活動にかかわる問題について、吉村知事は十八日の県会代表質問で「今後の国際オリンピック委員会(IOC)の判断を厳粛に受け止めて、反省すべきは反省する」と述べ、十二日の開会冒頭の陳謝に続き、反省の意を表した。さらに、「これからのいろいろな問題についても、同じことを繰り返さないようにしていきたい」と述べた。
県政会の金子松樹氏(諏訪市)が「長野五輪の成功は県民の永遠の誇りだが、招致疑惑で憶測と思われるようなことまでが伝えられ、県民に不安が広がった」と指摘。IOC規定を超えた招致活動があったかどうか、招致委の会計帳簿類が処分された経過などをただした。
知事は会計帳簿類について、招致委事務局があった長野市役所に置いていたが、長野冬季五輪組織委員会(NAOC)になり、事務局が県庁近くの婦人会館に移転したことを説明。「招致委資料は不要なので置いていく」としたNAOC側に対し、市側は置き場所がないことを理由に、移転先へ移すよう要請し、そうした中で当時の関係者が廃棄した―とした。
知事は「疑惑を隠すために廃棄したと考えている人もいるようだが、物理的に置く場所がないので市の方で廃棄した。信用してもらうしかない」と述べた。
IOC委員の複数回の長野訪問など、規定に反した活動については、「判断はIOCに任せる」と答えた。また、過度なもてなしや海外のエージェントを通じた不正行為はあらためて否定した。
(1999年2月19日 信濃毎日新聞掲載)
日本オリンピック委員会(JOC)は十五日、長野冬季五輪の招致段階で九人の国際オリンピック委員会(IOC)委員に招致規定に抵触する行為があったことなどを記したIOCへの回答書をIOCにファクスで提出した。
回答書は、IOC問題プロジェクト(座長・八木祐四郎専務理事)が十二日の会議でまとめた調査結果を基に作成され、英文で五ページ程度。九人のIOC委員の名前とその抵触理由のほか、長野側による帳簿類焼却の経緯、スイスの広告代理店とのコンサルタント契約の内容などを説明している。(共同)
(1999年2月16日 信濃毎日新聞掲載)
国際オリンピック委員会(IOC)の猪谷千春理事は十五日、IOC委員への接待など長野冬季五輪招致委員会の活動に同理事が強い影響力を持っていた―との元招致委幹部の指摘や報道があることについて、東京都内で記者団に対し「助言はしたが指導的立場にはなかった」と反論した。
同理事によると、IOC委員を長野に招いた際の料理の選択、長野開催を決めた英バーミンガムIOC総会(九一年)のプレゼンテーションの原稿内容などについて一部助言したが、「実際には招致委幹部らは助言を無視した」と強調。同総会で、長野側が政治家の元私邸でIOC委員らを接待したことについても「私は何の相談も受けていない。行き過ぎの接待だった」と批判した。
日本オリンピック委員会(JOC)のIOC問題プロジェクトが継続調査の中で同理事に事情を聴取する―との報道に対しても「聴取という言葉にいたく自尊心を傷つけられた」と不快感を表明した。
(1999年2月16日 信濃毎日新聞掲載)
長野五輪招致に絡む問題を追及しようと、「長野五輪招致疑惑をただす緊急市民集会」が十三日、長野市の県勤労者福祉センターで開かれた。
長野県民オンブズマン会議や県労連の有志らが呼び掛け、約六十人が参加した。
同会議のメンバーらが「過剰接待や会計帳簿問題ばかりでなく、ゼネコンから寄付を集めて癒着した招致運動の全体像を問題にする必要がある。どのくらい金がかかったのかも明確でない。この問題には長野の県民不在の政治も現れている」などと問題提起した。
会場からは「IOCや日本オリンピック委員会(JOC)の総退陣、五輪憲章の改正を求めたい」「事実を県民の前に明らかにしてこそ、五輪を本来の姿に戻せる」「市民が招致の在り方について具体的な提言をしていくべきだ」などの意見が出た。
集会では「招致委会長の吉村知事、副会長の塚田長野市長や関係者が、JOCも含め自らの責任を明らかにするとともに、第三者による調査究明機関の設置を求める」などとするアピールを採択。今後、IOCや招致関係者に公開質問状や要望書を送り、活動を続けることを決めた。
(1999年2月14日 信濃毎日新聞掲載)
国際オリンピック委員会(IOC)の要請で長野五輪の招致活動を調べていた日本オリンピック委員会(JOC)の「IOC問題プロジェクト」(座長・八木祐四郎専務理事)は十二日、都内で開き、長野側から説明を受けたIOC委員十三人のうち、IOC規定に抵触していた委員として九人を報告することを決めた。ただ、招致委の会計帳簿類の処分などについて納得のいく説明がない―とし、十五日にIOCへ報告した後も調査を継続する。
八木座長らによると、IOCへの報告事項は▽IOC委員に金品、医療費などの利益供与をした事実は確認できなかった▽IOC規定に抵触していたのは、複数回訪問した一人、多数で訪問した四人、家族らだけで訪問した四人の計九人―など。九委員の氏名は「IOCが違う見解を出した場合、国際的な問題になる」との理由で、公表しなかった。
このほか、日本画や日本刀を、日本画家や刀匠の好意でサマランチ会長に贈ったことや、スイスの広告代理店と九〇年八月に契約、開催地が長野に決定した後、追加報酬を払ったことも報告する。
招致委員会の会計帳簿類の焼却処分については、「国内法上問題がないとの決着をみているが、書類の廃棄処分によって確固たる証拠を得られなかったことを誠に遺憾に思っている」と述べ、その点も報告する考えを示した。
長野に対する継続調査の内容では、「帳簿類の処分についてどう国民的な納得を得るか」と強調したほか、IOC側が日本刀は贈られていないとしていることに対する説明資料、九一年英バーミング総会でのもてなしなどを挙げている。
調査方法は未定だが、聞き取り調査の範囲を広げ、善意で贈り物をした人に会う意向もある。「調査は三月前半までかかる」との見通しを示し、その上で「反省すべき点は反省していく」とした。
ただ、バーミンガム総会も含めてJOCも招致委に加わり、活動していた点に関しては「活動にかかわった理事はいるが、調査対象にはなっていない」と説明。第三者による調査やJOC役員から事情を聴くことは否定した。
<規定に抵触したとみられる9委員>
▽複数回訪問
リマ・ベロ委員 (ポルトガル)
▽多人数での訪問
アベランジェ委員 (ブラジル)
パディーリャ元委員(ブラジル)
ベンジェルン元委員(モロッコ)
キム・ユスン元委員(北朝鮮)
▽親族、友人だけの訪問
ゼルギニ委員 (アルジェリア)
バスケス元委員 (メキシコ)
アローヨ委員 (エクアドル)
ヘルミック元理事 (米 国)
(1999年2月13日 信濃毎日新聞掲載)
日本オリンピック委員会(JOC)のプロジェクトが、国際オリンピック委員会(IOC)の九委員がIOC規定に抵触するとの報告をまとめた十二日、招致委会長だった吉村知事、副会長だった塚田長野市長はそれぞれ記者会見し、「反省」の言葉を繰り返した。「反省して、ほっとしている」(吉村知事)と、一区切りをつけたい本音も。ただ、JOCは会計帳簿の処分経過など継続調査する方針を示し、県会でも各派が質問を予定している。
<元幹部らに戸惑いも>
規定抵触の九人はほとんどが、家族だけの訪問や規定人数以上の同行者を伴った委員。知事は「なるべく多数の外国の人に見てもらおうという姿勢だった」と説明し、「IOCの指導通りでない基準オーバーは研究不足だった。すべての面できちんと対応することが必要だと、今回の事件で実感した」と話した。
塚田市長も「当時はIOCの指導に基づき活動してきたと考えていた」「結果的にルール違反とされたことは残念。反省すべきは反省する」とした。
JOCの継続調査には「実態をありのまま申し上げたが、さらに調査依頼があればこたえていく」(吉村知事)と、今後も協力する基本姿勢を示している。
ただ、関係者には戸惑いも。市村勲元事務総長は「招致に協力してもらった多くの人たちに心配をかけて申し訳ない。調査に協力はするが、今後何を聞いてくるのか…」。会計帳簿が処分された時の事務責任者だった山口純一元事務次長は「帳簿については知っていることをすべて話した。今後何を調べたいというのかよく分からない」と話した。
<JOC、抵触委員公表せず>
「最終判断はIOC(国際オリンピック委員会)の裁量だ」。長野冬季五輪招致疑惑を調査した日本オリンピック委員会(JOC)プロジェクトチームが十二日午後開いた記者会見で、八木祐四郎座長は具体的な調査結果を明らかにせず、判断をIOC任せにする発言に終始した。会見は三十五分間で打ち切られ、JOCの疑惑解明に消極的な姿勢を印象づけた。
記者会見で八木座長は、顔を紅潮させながら「調査結果」を報告。家族、友人だけで長野を訪問するなど、IOCのガイドラインに抵触した委員を九人と公表した。
しかし、氏名や具体的な事例は明らかにせず、質疑でも「(調査結果の判断は)IOCの裁量」を繰り返し「経過、事実関係の報告にとどめた」「名前を公表した場合、国際的、人権的問題になる」と、疑惑解明には後ろ向きの発言が続いた。
「JOCは招致委にメンバーを出しており、身内で調査しているということにならないか」という質問には「違う角度で考えているので、身内とは違う」と、ここでも苦しい説明。
八木座長は調査にかける時間の余裕がなかったことを強調しながら、会計帳簿焼却などの調査を継続して「国民が納得できる説明をしたい」と述べたが、「本当にできるのか」といった疑問が残る結果となった。
<県会代表質問で論議へ>
県会交渉会派の県政会、社会県民連合、新風クラブは、十八日から始まる二月定例県会代表質問で、長野五輪招致に絡む問題をそれぞれ取り上げる。公明党、共産党も一般質問で取り上げる姿勢を示しており、二月定例県会は、同問題がポイントの一つになる。
県政会は十二日の団会議で、招致問題を質問することを決めた。「さわやかな感動を与えた長野五輪を汚したくない。詰めて質問すべきは質問し、県民が納得する説明を引き出したい」(石田治一郎団長)としている。
帳簿を焼却した点が最大の問題とする社県連は「県民がもやもやとした気持ちを持っているのは事実で、けじめを付けなければいけない」(中島昭一団長)との立場だ。新風クラブは「JOCの調査への長野側の回答はあまりにも事務的で形式的に過ぎる。帳簿問題も遺憾だ」(小田切行雄会長)と話している。
公明党県議団も「県民の関心も高く、取り上げないわけにはいかない問題だ」、共産党県議団も「内容は検討中だが、質問の柱の一つとして取り上げる予定」としている。
(1999年2月13日 信濃毎日新聞掲載)
吉村知事は十二日、長野五輪の招致活動で「反省すべき点」の一つとして、招致委会計帳簿類の焼却処分を挙げた。日本オリンピック委員会(JOC)の「IOC問題プロジェクト」の八木祐四郎座長が同日の記者会見で、帳簿類の処分を「遺憾」としたのに対し、知事は「謙虚に受け止めたい」と述べた。
プロジェクト会合の終了後、県庁で記者会見した知事は「帳簿がないものだから、いろいろ言われても反論できない」と話し、帳簿類焼却を「反省すべき点」とした。帳簿類の処分について、知事が反省の意を表したのは初めて。ただ、知事は「物理的な理由で処分したのであり、隠すというような判断でなかった点は理解してほしい」と、これまでの主張も繰り返した。
また、長野市の塚田市長も十二日夜の記者会見で、「こういう問題になるのであれば、(帳簿類を)残しておけば良かったと反省している」と述べた。
(1999年2月13日 信濃毎日新聞掲載)
日本オリンピック委員会(JOC)の国際オリンピック委員会(IOC)問題プロジェクトの座長を務めた八木祐四郎JOC専務理事は記者会見で次のように語った。
―IOCへの報告内容は。
「IOCのガイドラインに抵触する長野訪問として複数回が一人、三人以上の多人数によるのが四人、家族や友人などが四人の計九人(の委員)について確認できた」
―具体的な名前は。
「あと(処分)はIOCの裁量。国際問題になる可能性もあり、(各委員の)基本的な人権もあるので氏名は公表できない」
―今後の活動は。
「JOCとしては聞き取りも含め、引き続き関係各方面での調査を続け、新事実が分かればIOCに報告する。報告書にもそう書き加えた。長野について反省すべきはし、(夏季五輪招致を目指す)大阪も含めて今後の参考になるような提言を出したい」
―ソルトレークシティーの倫理調査委員会が出した結論に比べて甘いが。
「われわれは与えられたものの中でできるだけのことをした。資料が全部そろっていたソルトレークとは違う」
―招致委の会計帳簿類が焼却処分された点は。
「国内法に照らして問題がないとはいえ、重要な証拠が得られずに遺憾だ。他の問題も含め、もう少し国民が納得する説明ができるようにしていきたい」
―継続調査にあたって第三者期間を設けることや、招致活動にかかわっていたJOC役員から事情を聴く考えは。
「第三者機関の設置は現時点では考えていない。(招致活動に)直接タッチしていた理事は現在もいるが、今回の調査対象の中に入っておらず、事情を聴く考えはない」
(1999年2月13日 信濃毎日新聞掲載)
長野五輪の招致活動をめぐり違法行為があったとして、北佐久郡軽井沢町の元町議岩田薫さん(46)は十二日、北島敬介検事総長あてに、招致委員会関係者の捜査を求める捜査依頼状を最高検察庁に提出した。依頼状は▽国際オリンピック委員会(IOC)委員への過剰接待などは贈収賄に該当しないか▽県会計を経由した企業から招致委への寄付は脱税行為とみなせないか▽招致費を私的に流用した招致委幹部がいるとの疑惑がある―などとした。
(1999年2月13日 信濃毎日新聞掲載)
長野五輪の招致活動に関する日本オリンピック委員会(JOC)の調査に対応して、県が整理した「事実関係」の内容が十一日分かった。国際オリンピック委員会(IOC)のサマランチ会長が来県した際の専用列車チャーター、IOC委員に対する接待、土産など、批判が出ていた項目について、具体的な費用の数字を挙げて説明している。
県オリンピック室が、招致報告書と県や市、元招致委幹部らの記憶を基にまとめた。JOCには提出していない内部資料で、九日に吉村知事と塚田長野市長が公表したJOCへの「調査資料」の補足材料となる。
九一年五月のサマランチ会長の長野訪問の際に走らせた千葉・舞浜―長野―松本間の専用臨時列車については、三両編成(定員百三十三人)で、チャーター料は九十万円と説明。経費面で特急借り上げと差がなく、一般客への迷惑や警備上の観点から専用列車にしたとしている。
IOC委員の招待費用は、欧州往復の航空運賃が一人百二十万円程度。宿泊・食事の旅館名や料亭名を挙げ、夕食は一万五千―二万五千円程度など。ファーストクラス利用や長野側の費用負担はIOCからの指示だったとしている。贈り物は、はとぐるま、ネクタイなどで最高一万円。
海外のIOC委員を訪問した経過も整理した。加賀美秀夫特別顧問、吉田総一郎事務総長代行、猪谷千春IOC理事ら六人が、延べ七十五カ国・地域の八十二委員(一部重複)を訪ねたとしている。
招致委の会計帳簿類の焼却処分は「五年間保存の条件は暫定的なもので、招致委が解散した時点で保存義務も消滅している」との見解を示した。
一方、調査資料で報告された二人以上の同伴者がいた委員四人は、アベランジェ委員(ブラジル)のほか、パディーリャ委員(同)、ベンジェルン委員(モロッコ)、金兪順委員(朝鮮民主主義人民共和国)だったことが分かった。ベンジェルン委員夫人は介助が必要で、パディーリャ委員は車いすを使っていたと、理解を求めている。
<「事実関係」の要旨>
県がまとめた「事実関係」の要旨は次の通り。
【会計帳簿の焼却】
県が交付金を交付する時点で「五年間保存」の条件を付したが、これは招致実現に不確定要素があることから補助金の例に準じて暫定的に付したもので、招致が実現し解散した時点で保存義務も消滅している。
【委員への贈り物】
はとぐるま(三千円)、オルゴール付きキーホルダー(二千円)、ネクタイ(五千円)、スカーフ(五千円)、ネクタイピン(二千円)、腕時計(一万円)、双眼鏡(一万円)―など。秋葉原なども案内したが、買い物は委員本人が支払った。
【金雲竜理事の娘が長野で開いたコンサート】
九一年五月に、文化団体などが行う文化芸術プログラムの一環として開かれた。有料で招致委は経費を負担していない。
【サマランチ会長の専用列車】
九一年五月七、八日に舞浜―長野―松本間の団体専用臨時列車(三両編成、定員百三十三人)を手配。理由は▽停車駅での市民の歓迎などで一般客に迷惑を与える▽直通なら便利▽長野の概要説明に移動列車内の活用が効果的▽同行者が多数で団体臨時列車の方が経済的▽国際儀礼上、相応の警備を要する―の五点。
チャーター料は九十万円。車両(グリーン車両一両、普通車両一両)を確保するより四万円余安い。会長の要請でなく、招致委が計画した。
【委員の訪問経費】
IOCの指示で、旅費、宿泊費は長野側で負担することになっていた。訪問した委員は六十二人(招待者四十二人、東京総会時十八人、調査団二人)。
▽欧州の往復航空運賃は一人百二十万円程度▽昼食は長野市内のレストランなどで一人一万円程度▽夕食は市内の料亭などで一人一万五千円―二万五千円程度▽夕食・宿泊料金は北信の温泉地やホテルで、一泊二食一人二万円―三万円程度▽宿泊のみの料金は県内一泊一万五千円程度、東京一泊二万円―三万円程度▽ヘリコプター(民間)一時間一回三十万円程度
【IOC英バーミンガム総会での接待】
日本文化を紹介するために行った。IOCから注意を受けなかった。施設(ハイベリーハウス)はバーミンガム市が所有する一般的な貸し出し施設で、あっせんしたのは英オリンピック委員会が中心となったIOC総会組織委員会。
【IOC東京総会での接待】
三菱開東閣を借り、オープンな形で日本文化を紹介するためにパーティーを二日間開いた。IOCから注意を受けなかった。
【芸者を呼んだ接待】
原則として芸者を入れたことはなかった。入れたとしてもごく限られた回数で、日本文化の紹介の面で行ったと思う。
【東京総会時の委員や家族らの京都見物】
東京から長野までの旅費と長野の滞在費は招致委が負担した。京都方面に回る委員もいたが、丸抱えということはなかった。
【海外の委員の訪問回数】
▽加賀美特別顧問 四十四カ国・地域の四十六委員▽吉田総一郎事務総長代行
十六カ国・地域の二十委員▽塚田長野市長 五カ国・地域の五委員▽猪谷IOC理事 五カ国・地域の五委員▽清川IOC名誉委員
三カ国・地域の四委員▽吉村知事 二カ国・地域の二委員
合計 延べ七十五カ国・地域の八十二委員
(1999年2月12日 信濃毎日新聞掲載)
県は十日夜、長野五輪招致委員会の会計帳簿をめぐる経緯などを記した資料を、日本オリンピック委員会(JOC)にファクスで送った。JOCは十二日に「IOC問題プロジェクト」を開き、国際オリンピック委員会(IOC)へ提出する調査結果をまとめる。
資料はA4判三枚。一枚は、八五年の招致委発足から、市民グループによる県交付金返還訴訟が最高裁判決で上告棄却となる九八年六月までの出来事を年表で説明している。
しかし、帳簿の焼却については、処分したとされる長野冬季五輪組織委員会(NAOC)の引っ越し作業の日付を、九二年三月三十―三十一日と記しているだけだ。いつ、だれの指示で焼却したかなど、具体的な経緯は何も説明していない。
県オリンピック室は「処分の状況は調査の時に口頭で報告してある。JOCからは、帳簿焼却の前後の経過が分からないのでそれを補足する資料を、ということだった」としている。
残り二枚は、帳簿が保管してあった長野市役所の倉庫や、古紙置き場の見取り図。JOCは六、七日の調査の際、帳簿焼却について「国民の納得を得るという面で問題がある。経緯が分かる文書の提出を求め、引き続き調査したい」としていた。
(1999年2月11日 信濃毎日新聞掲載)
会計検査院の増田裕夫第四局長は十日の衆院法務委員会で、特殊法人の日本体育・学校健康センターが九二―九七年度に、長野五輪組織委員会(NAOC)に交付した総額二億円の助成金について、使途などを確認する方針を示した。
同局長は「組織委員会そのものは検査対象とはならないが、日本体育・学校健康センターがスポーツ振興基金助成金を交付している。センターの検査の際に助成金の趣旨や使途をセンターがどう把握しているか検査したい」と述べた。
坂上富男氏(民主)の質問に答えた。
会計検査院によると、九一年十月に解散した長野冬季五輪招致委員会については、国からの補助金は投入されておらず検査の対象にならないと考えている。
ただ、招致疑惑が浮上したことから第四局は、文部省の九八年度予算に対する通常検査の中で、一般に五輪の招致活動費に国費が流入しうる余地があるかどうか確認するとしている。
(1999年2月11日 信濃毎日新聞掲載)
長野五輪招致の際の国際オリンピック委員会(IOC)委員と招致委員会側に不正行為があったかどうかを調べている日本オリンピック委員会(JOC)がIOC委員と元理事計三人に明確な規定違反の事例が認められるとの報告をまとめていることが、九日までに明らかになった。
三人はモハメド・ゼルギニ(アルジェリア)、アウグスティン・アローヨ(エクアドル)の現職委員二人と別件の疑惑で既に一九九一年に辞任しているロバート・ヘルミック元理事(米国)。
JOCのIOC問題プロジェクトは十二日の会合で最終的な報告をまとめ、IOCに提出する。
関係者によると、ゼルギニ委員は息子夫妻が長野市を訪れ、スポーツ医学の研修に協力を求めた疑いがあるという。規定では招致都市訪問はIOC委員と付き添い一人は認められている。ゼルギニ委員はソルトレークシティー五輪招致疑惑では名前が挙がっていなかった。
医療サービスの提供は過去の幾つかの五輪招致委の集票活動の一環として、特にアフリカの委員に対して実施されていた疑いが持たれている。
アローヨ委員はソルトレークシティー五輪招致委関係者から多額の金銭を受け取っていたとされ、三月のIOC臨時総会で追放になる見通し。九〇年IOC東京総会の際は夫人が友人と長野を訪れ、行き過ぎた便宜を図られた疑いがある。
ヘルミック元理事は米国での民間スポーツ事業のコンサルタントを務めていたことが発覚し、長野五輪開催決定後に米国オリンピック委員会の会長とIOC理事を辞任。九〇年五月に息子夫婦が長野を訪問した記録が残っている。
JOC側は先に八人の委員に対し、規定に抵触する可能性があると発表していたが、このうち国際競技連盟(IF)やIOCの委員会活動などで訪問が複数回になったケースなどについては違反に当たらないとの見解を添えて、IOCに報告するという。(共同)
(1999年2月9日 信濃毎日新聞掲載)
吉村知事は九日、長野五輪の招致活動について日本オリンピック委員会(JOC)の「IOC問題プロジェクト」が六、七日に行った調査で提出した資料の概要を公表した。JOC側が一部委員に規定違反があるとみていることに対し「当時は正しいと思って活動した」としたうえで、「今になってオーバーだとの判断が出れば、それを受け止める。いろいろな問題を今後の対応として考えていかねばならない」とJOC側の結論を受け入れる考えを示した。
公表は知事のほか、塚田・長野市長も別に行った。提出した資料の概要によると、数回にわたる訪問や二人以上を同伴した国際オリンピック委員会(IOC)委員は九人、親族だけの訪問が四件あった―としている。
複数回の訪問については「招致運動の前だったり、別の視察に合わせて来た人もいる。(一部の委員は)過度な訪問に当たらないという意見も(JOCに)あるようだ」と説明。二人以上の同伴は「車いすで介護が必要だったり、夫人が病弱で介添えが必要な人もいた。そういう状況ならやむを得ないと判断した」とし、親族だけの訪問は「それぞれの用事で来日し、長野に寄った人が大部分。本人が来られなければ、親族に長野を理解してもらうのもいいということで、国内旅費は負担した」とした。
招致委の招致報告書によると、複数回の訪問はヘーシンク委員(オランダ)、ベロ委員(ポルトガル)、金雲竜理事(韓国)、ホドラー理事(スイス)、ヘイ元委員(メキシコ)の五人、二人以上の同伴者はアベランジェ委員(ブラジル)一人、親族だけの訪問はラミレス・バスケス委員(メキシコ)、ヘルミック元理事(米国)、アローヨ委員(エクアドル)、ゼルギニ委員(アルジェリア)の四件が記載されている。
知事は「東京でのIOC総会に来た委員に長野まで足を延ばしてもらったケースが多く、親族だけの訪問には渡航費は出していない」と総括的に述べた。
また、接待については「芸者を一、二回は呼んだのではないかという反省もあるが、原則として呼ばないという強い方針だった」とした。英バーミンガム総会での招致活動については「委員を招いた施設はバーミンガム市の貸し館。IOC総会事務局が各招致都市に使用を推薦したので使った」(塚田市長)「結婚式にも使う施設。(二億円余というような)ばく大な費用で接待したわけでない」(吉村知事)と述べ、理解を求めた。
(1999年2月10日 信濃毎日新聞掲載)
吉村知事は九日の記者会見で、長野五輪招致委員会の会計帳簿類が焼却処分されたことについて「今になって考えれば残しておけば良かったと思う。(帳簿が)ないから疑われる」と、現時点で振り返ると帳簿の焼却に問題は残るとの認識を初めて示した。
知事は焼却処分について「事務局の責任者の段階で決めたこと。それを機関決定と言えるかどうか…。私は焼却を事前に聞いていなかった。招致委の総会などでも焼却するとの説明は事務局からはなかったと思う」と説明。「あくまで長野市の倉庫が狭くて置けないという状況の中、事務的に整理した。担当者に悪意はなく、やむを得なかった」と述べた。
長野市の塚田市長も会見で、焼却処分の機関決定は「なかったと思っている」と述べ、日本オリンピック委員会(JOC)の帳簿問題への調査について「どのような判断をするか注目している。方針を受けて対応したい」とした。
(1999年2月10日 信濃毎日新聞掲載)
長野冬季五輪招致をめぐる国際オリンピック委員会(IOC)の調査で、日本オリンピック委員会(JOC)の設置したIOC問題プロジェクト(座長・八木祐四郎JOC専務理事)に対し、IOCが法的にも根拠のある証拠の提出が必要との見解姿勢を伝えていることが八日、明らかになった。
同プロジェクトは六日に長野市内で当時の招致委員会幹部を事情聴取する直前、来日中のシュミットIOC副会長(ハンガリー)と会談した。プロジェクト側がIOCの質問書への回答内容に関して尋ねたところ、同副会長は「IOCは法的根拠のある証拠しか取り上げるつもりはない」と述べた。これは裁判に持ち込まれた場合に、十分対応できるだけの裏付けが必要なためとみられる。
IOC委員の追放処分勧告まで発展したソルトレークシティー冬季五輪の招致疑惑では詳細な証拠が残されているもようだが、長野は招致活動に関する帳簿類が焼却されているため問題の真相究明が困難な状況となっている。シュミット副会長は「それなりの回答をしてほしい」と語り、調査役を務めるJOCの苦しい立場を理解したという。
JOCは十二日に開く同プロジェクトの第二回会議で、少しでも当時の招致活動の状況を解明し、IOCへの報告をまとめることにしている。(共同)
(1999年2月9日 信濃毎日新聞掲載)
日本ライフル射撃協会の菊地陞(のぼる)会長は八日、都内で記者会見し、長野五輪開催決定直前の九一年五―六月に、アフリカ四カ国と英国を訪れ、国際オリンピック委員会(IOC)委員らに招致活動を行ったことを説明、「(買収工作のような活動は)まったくない」と述べた。
同協会の活動については、長野の招致活動をめぐって不正行為がなかったかを調べている日本オリンピック委員会(JOC)の「IOC問題プロジェクト」の八木祐四郎座長が七日の記者会見で、調査する意向を示している。
菊地氏は、当時の協会長だった故安斎実氏の指示で、約四十日間訪問したと説明。「競技団体として、長野五輪を実現し、バイアスロン競技の国内普及を考えるのは当然」と述べ、長野の招致委員会とは別に、活動したことを強調した。
また、同氏は、この際の活動費用は約九百九十八万円だった―とし、「理事会の決議を経て、協会の資金を充てることで承認されてもいる。資金は借入金で賄い返済した」と説明。IOC委員に対する金品の贈与はなかったと語った。
(1999年2月9日 信濃毎日新聞掲載)
長野五輪の招致活動での国際オリンピック委員会(IOC)委員の不正行為の有無を調査する日本オリンピック委員会(JOC)の「IOC問題プロジェクト」(座長・八木祐四郎専務理事)は七日、二日間の長野現地調査を終えた。八木座長は記者会見で、IOC委員の複数回の訪問など(招致活動の)一部に必要以上の対応があった―と指摘。招致委の会計帳簿類が焼却処分されたことについて、経過をきちんと文書で提出するよう求めたことも明らかにした。
八木座長は「おおむね適切な招致活動が行われた印象だが、複数回の訪問、招致に関する目的以外の訪問など、一部には必要以上の対応があった」と総括。これらに関し名前の挙がった委員は「八人いる」と述べた。
この中には、IOCから注意処分を受けたヘーシンク委員(オランダ)、継続調査中の金雲竜理事(韓国)が含まれているとの見方もある。
九一年の英バーミンガム総会で、長野側が政治家私邸だった屋敷を借りてIOC委員を招いたことについても「他の立候補都市も行っていたが、あれだけのお金をかける必要があったかどうか。やや適切ではなかった」との見解を示した。
招致活動を会計上裏付ける帳簿類の焼却については「国民の納得を得るという点で残された問題がある。それは資料(帳簿)が廃棄処分されたことだ」と強調。「手続きは間違いなかったということだが、引き続き調査する」とした。
一方で、「IOC委員に現金類や毛皮のコートが渡されたといったことは確認できなかった」と否定。サマランチ会長に日本画や日本刀が贈られたことも、長野側の説明で確認したが、個人的な善意の行動との認識を示した。
調査の内容は、IOC委員に対する(1)現金、慣習の域を超える贈答品(2)研修費、医療費などの利便供与(3)もてなしの内容や程度、数次にわたる訪問―の三点が中心。八木座長らメンバー五人が、元招致委の事務総長市村勲氏、事務総長代行の吉田総一郎氏、事務局長の吉田和民氏、事務次長の山口純一氏、総務部長の増田修二氏、総務課長の稲玉三雄氏―の六人から個別に事情を聞いた。
JOC側は十二日、今回の事実確認を基に調査結果をまとめ、十五日までにIOCに報告する。
<話を聞いていただいた>
吉村知事の話 調査結果は正式に報告を受けていないので分からないが、(JOC側には)よく話を聞いていただいた。
<必要ならさらに協力>
塚田佐・長野市長の話 長野側としては、JOCの調査に誠心誠意対応して事実をお話しした。今後の調査で相対的に問題ないことが明らかになればありがたい。さらに調査が必要な点があれば協力する。
(1999年2月8日 信濃毎日新聞掲載)
【解説】日本オリンピック委員会(JOC)の「IOC問題プロジェクト」は七日、長野の招致活動について、「おおむね適切だった」と総括した。しかし、一部に必要以上の対応があったことを初めて公式に指摘したほか、調査項目にはない招致委の会計帳簿類の焼却について、繰り返し不快感を表明し、詳細な資料の提出を求めた。
帳簿問題は法的な“けじめ”がついているとはいえ、「国民の納得を得る」(八木祐四郎座長)という要請にどうこたえるか、長野側に残された大きな課題だ。
「事情を聴いた六人(の招致委幹部)については多少資料不足という点は否めない。大きな問題は資料(会計帳簿類)の廃棄処分にある」。八木座長は会見でこう述べた。
長野側は今回の調査の中で、約六十枚の資料を提出、調査への協力姿勢を示した。しかし内容は「招致報告書からの抜粋が中心」(八木座長)で、渉外活動費の内訳を示したり、会計帳簿類を処分した理由や経過には触れていなかったという。同プロジェクトのメンバーは「結果的には、そうした点が事実関係の証明をあいまいにしている」と指摘する。
JOC側は、会計帳簿の処分について招致委幹部に個々に質問。会見で「(口頭による説明の中で)機関決定したと言っている。招致委の総会で議決したという記録はない。稟議をあげて決定したんだろうと思うが…」(上田宗良理事)と明らかにした。吉村知事ら招致委幹部は、これまで「帳簿の処分は機関決定だった」とは公式には説明しておらず、どのような手続きを踏んだ機関決定なのか、より詳しい説明が求められる。
一方、招致活動について、現金や研修費名目の利便供与など悪質な買収行為の事実関係は否定。IOC委員の複数回の長野訪問や、長野開催を決めた九一年英バーミング総会での接待については「不適切だった」との認識を示した。
JOCが公式に招致活動の問題点を指摘した意味は重い。しかし、JOCも招致委の中心メンバーで、活動の方法について「日本のIOC委員やJOCから教わり、その通りに実行した」と、ある招致委幹部は話す。それだけに今回の調査にはもともと限界がある、と不十分さを指摘する意見のほか、「JOC自身の在り方も調査すべきではないか」との声もある。
(1999年2月8日 信濃毎日新聞掲載)
七日の日本オリンピック委員会(JOC)の会見要旨は次の通り。
八木祐四郎専務理事(座長) 今回の長野訪問は国際オリンピック委員会(IOC)から、IOC委員の不適切な行為を報告するよう依頼があったためだ。吉村知事、塚田長野市長に協力を依頼した上で、元招致委員会関係者六人から個別に聞いた。
長野の招致活動はおおむね適切な印象だが、複数回の訪問、招致に関する目的以外の訪問など一部に必要以上の対応があった。
―スイス・ローザンヌの五輪博物館の建設費の半分は日本からの寄付と聞いているが、これは招致運動の一部か。
八木氏 一部報道で混同されているが、招致とは別個の判断で、堤(義明・JOC名誉)会長が日本の財界に呼び掛け提供した。招致問題とは全く関連はない。
―複数回や目的外の訪問をした委員名は。
八木氏 まだ調査未了でもあり、ここでは発表しない。
―日本ライフル射撃協会の協会報の中で、事前にアフリカへの招致活動を行ったという内容がある。
八木氏 六人のうち四人に確認したが「話は聞いているが、直接招致委との関係はない」との判断だ。JOC内部の問題でもあるので、今後協会と接点を持って調査したい。
―現金や慣習以上の贈答品、研修費などはなかったのか。
八木氏 現時点ではなかったという判断だ。
―会計帳簿類が存在しない中で、調査は満足いく内容だったのか。
八木氏 資料不足の点は否めないが、核心についての確認を何度もした結果では問題ないという判断に立っている。
―IOCへの報告後も調査は継続するのか。
八木氏 国民の納得を得るには残された問題がある。JOCで引き続き取り上げていきたい。大きな問題は資料(会計帳簿類)の廃棄処分。「手続きに間違いはなかった」ということだが、裏付けをきちんとしていかないと納得できないと思う。
―サマランチ会長に日本刀を贈ったとされる点は。名義人が吉田総一郎氏になっているが。
八木氏 刀匠の善意で提供されたという判断だ。名義の問題は、使用されている印鑑が吉田氏のものとは全く違っており、確認が難しい。
―絵画や毛皮のコートをサマランチ会長やIOC委員に贈ったとされる点は。
八木氏 絵画は作者の希望で贈ったものだ。コートについては事実は全然確認できなかった。
―(スイスの)エージェントの問題は。
八木氏 スタジオ6に対する支払いを確認した。当初の約束は三千万円だったが、長野開催が決定した場合はさらに千五百万円を支払う契約で、結果として四千五百万円が渡った。
―成功報酬ということか。
八木氏 各国の動向など情報提供が目的で、集票のためではない。
川廷栄一理事 成功報酬という言葉は契約書にはなかった。
―会計帳簿の焼却に、機関決定はあったのか。
上田宗良理事 それぞれの回答では、機関決定はしたと言っている。しかし招致委の総会で議決したという記録はない。稟議書を上げて決定はしたのだろうが、その記録は残っていないということだ。
―英国・バーミンガムのIOC総会時に長野招致委が二億円もかけたというが、行き過ぎではないか。
八木氏 (IOC委員を招いた)ハイベリーハウスは、地元のあっせんで借りたもので、他国も同様だったようだ。しかしあれだけ(経費を)かけるべきだったか、というと必ずしも適切だったとは考えられない。やや適切ではなかった。
(1999年2月8日 信濃毎日新聞掲載)
日本オリンピック委員会(JOC)のIOC問題プロジェクト(座長・八木祐四郎専務理事)の調査が終わった七日、事情を聴かれた元招致委幹部からは、招致実現に奔走せざるをえなかった自分たちの立場を釈明、「これで一息つけるかなあ」と本音が漏れる一方で、「招致活動の根幹はJOCから指導してもらったのに」と割り切れない思いを口にする人もいた。
約二億円をかけたとされる九一年IOCバーミンガム総会での招致活動。ハイベリーハウスを使った接待は「適切でなかった」とされた。事務次長だった山口純一さん(63)は「他の候補都市と同様に総会組織委員会が選んだ中から決めたのだが…」と、割り切れなさを口にした。
事務局長だった吉田和民さん(67)は「正式見解を聞いておらず、コメントを言える段階ではない」と慎重に言葉を選んだ。だが、長野への来訪回数や同伴者数がIOCルールから逸したとして、委員八人の名前が上がったことには「それぞれ特殊な事情があったと思う」。車いす利用の委員がいるなどやむを得ない事情があった、と指摘した。
ある幹部は「活動当初、長野側はIOC委員を知らず、競技団体やJOCの知恵を借りて活動した。手足の部分だけ調べてそれで終わりで済まされるのか」と、漏らす。
多数のIOC委員と接してきた元事務総長代行の吉田総一郎さん(53)は「私的な組織(IOC)が巨大な五輪の開催地を決めるという現システムを変えない限り、本質的な解決にはつながらない」と、特権体質そのものの壁を指摘した。
(1999年2月8日 信濃毎日新聞掲載)
長野五輪一周年の記念行事に出席するため長野市を訪れた国際オリンピック委員会(IOC)のシュミット副会長(ハンガリー)は七日、記者会見した。長野五輪招致について調べている日本オリンピック委員会(JOC)のプロジェクトからは「話を聞く立場にない」と、今月十五日締め切りの正式報告まで待つ考えを示した。
シュミット副会長は六日にプロジェクトメンバーと短時間会ったとした上で「調査すべきこと、そうでないことなど、方法論について助言しただけだ」とした。
また、代理人・代理店と招致都市側の契約について「票の買収を約束するようなことでなければ問題はない」とした。
(1999年2月8日 信濃毎日新聞掲載)
「オリンピックいらない人たちネットワーク」(江沢正雄代表)などでつくる実行委員会は七日、長野五輪の招致活動にかかわる疑惑や環境破壊などの問題点を考える「長野オリンピック一周年シンポジウム」を長野市内で開いた。
県内外から約六十人が参加した。江沢代表は「五輪施設は今後の利用方法がほとんど決まっていない。ばく大な借金の返済方法も示されていない」と、批判。労働団体関係者や環境問題の研究者が「高速交通網の整備でビジネス客らの宿泊が激減した」「関連道路建設で動植物の生息範囲は制限された。何を基準に『自然との共存』と言うのか、具体的な数値を挙げて説明してほしい」などと指摘した。
日本オリンピック委員会(JOC)のプロジェクトによる調査には「今後もきちんと調査を継続するよう求める」との声が出た。
(1999年2月8日 信濃毎日新聞掲載)
国際オリンピック委員会(IOC)から長野五輪の招致活動でIOC委員の不正行為があったかどうか調査を依頼された日本オリンピック委員会(JOC)の「IOC問題プロジェクト」(座長・八木祐四郎専務理事)は六日夜、長野市で当時の招致委員会事務局幹部二人から事情を聴いた。聞き取りは七日までの二日間で六人。同日午後に記者会見を開く。
来県したメンバーは八木座長ら五人。六日午後六時から、長野市内のホテルで招致委会長、副会長だった吉村知事、塚田・長野市長と会談し、調査項目などを説明した後、同八時から招致委の事務総長だった市村勲氏と事務局長だった吉田和民氏から順次、活動内容を聴いた。
JOC側は調査に入る前、IOC側が参考に示した五つの質問項目を基に個別に話を聞く―と明らかにしており、質問項目にある▽IOC委員が金品を要求したか▽行き過ぎた接待を受けたか―などを尋ねたとみられる。
午後十時すぎ、この日の調査を終えた八木座長は「(招致委側から)こちらの質問に答える約六十枚の資料を出してもらった。二人の話の中では不正なものはなかった」と話した。
招致委側は、九一年十月の招致委解散時に作成した招致報告書を基に、幹部らが事前に個別に会うなどして事実関係について整理しており、「招致活動には、問題になるような不正行為はなかった」としている。
同プロジェクトは長野での聞き取りを終えた後、十二日にIOCへの回答をまとめる会合を開く。
(1999年2月7日 信濃毎日新聞掲載)
長野冬季五輪招致で不正行為がなかったかどうかを調べる日本オリンピック委員会(JOC)の「IOC問題プロジェクト」の調査が六日、始まった。「五輪一周年」のさまざまなイベントが繰り広げられている中での調査。当時の招致委員会事務局幹部は、硬い表情で調査に臨んだ。事情を聴かれた幹部だけでなく、一周年記念パーティー出席者の間にも複雑な思いが表れていた。
<幹部次々「問題ない」>
【動き慌ただしく】
JOCのプロジェクトのメンバーと、招致委会長、副会長だった吉村知事、塚田・長野市長の会談は午後六時すぎ、長野市内のホテルで始まった。JOC側は八木祐四郎座長(JOC専務理事)ら五人が出席。報道陣が写真を撮る間、全員がじっと押し黙ったまま。カメラマンをかきわけて、徹底調査や結果の公表などを求める要請文をJOCに手渡す人も現れた。
二十分後、知事らは同じホテルで開かれた一周年記念パーティーへ。招待された約三百人の中には、JOC調査を取材する報道陣の多さに驚き、「じっくり祝いたかったが、落ち着かないから」と会場を後にする人もいた。
パーティーを終えて午後八時すぎに帰宅した塚田市長は「会談は顔合わせだけだった。JOC側に『フェアな招致活動をしてきた。調査にはしっかり応じ、誤解を解いていきたい』と答えた」とやや疲れた様子。「(招致活動は)多少の勇み足はあったかもしれないが、それは許容される範囲内。何ら問題がないところだが、この際しっかり調査してもらいたい」
同じころ近くのホテルでは、招致委事務局幹部からの調査が始まった。事務総長だった市村勲氏は午後九時すぎに終了。「一時間くらい聞かれたことに答えた。内容はノーコメント。資料は招致報告書を持参しただけだが、(招致活動は)変なことをしたわけではないから」。同十時すぎに終わった事務局長だった吉田和民氏は「内容はJOCがまとめるので、その前には話せない」と言い、ホテルを去った。
<事実関係を整理し備える>
【調査内容は】
JOCの調査に備え、当時の招致委幹部と県、市側は個別に会いながら、事実関係を整理してきた。招致委幹部の一人は「IOC規定違反は何もない」と強調する。
JOCが依頼された国際オリンピック委員会(IOC)の調査は五項目。「IOC委員かその代理人が何らかの援助を要求したか」との項目では、スイスの広告代理店とコンサルタント契約を結んだ事実がある。契約金は四十五万スイスフラン。このうち十五万スイスフランは「契約段階で決まっていた通り、長野が決まってから追加払いした」と、長野側は説明している。
「IOC委員や親族が行き過ぎた接待を受けたか。複数回の訪問、二人以上の帯同者を伴った訪問は」との項目では、二回来県した委員がヘーシンク委員(オランダ)、金雲竜理事(韓国)ら数人が該当する。長野側は「招致委が航空運賃も含め経費をすべて負担したのはいずれも一回だけ」と説明する。
アベランジェ委員(ブラジル)らは来県した際、子どもら二人以上の帯同者がいた。「車いすで介護者が必要だった委員もおり理解してほしい」
サマランチ会長への贈り物の日本画家の絵画や刀匠の短刀は、知事が「いずれも個人的な善意の贈り物で、日本の文化を理解してもらいたいとの思いだった」と話している。
<焼却「愉快ではなかった」>
【会計帳簿類は】
「招致活動の渉外活動費内容は、大きな項目の金額を九一年十月の招致委解散総会で説明し、了承を得ている」と招致委幹部。だが、今回の調査で接待などの明細を示すことができないのは、招致委が会計帳簿類を焼却処分したからだ。
会計帳簿類の処分は、長野地検が公文書毀棄(きき)罪にあたるとした市民グループの告発を受けて捜査。九五年三月に廃棄状況を明らかにした上で、不起訴処分とし、法的な“けじめ”はついている。
地検の調べだと、会計帳簿類は九二年三月まで、市役所八階の倉庫内で、段ボール箱の中に入っていた。同年四月一日に、長野冬季五輪組織委員会(NAOC)が長野市南県町の県婦人会館に移転した際に、庶務担当がごみとして廃棄、長野市清掃工場で処分された。招致委が解散した一カ月後には、招致委側が明細書を順次焼却する方針も明らかにしている。
同地検は「招致委は県、市、民間で組織する任意団体で、会計帳簿も公文書に該当しない」としている。
だが、県民の間には疑問が根強く残る。この日、一周年記念イベントが行われていたJR長野駅東口を訪れた市民からも「すっきりしない気分」(二十八歳の男性会社員)といった声が出た。JOCのプロジェクトの八木座長も、三日の記者会見で、「手続き上問題はなかったが、国民が受ける感じとしては愉快ではなかった」と話した。
(1999年2月7日 信濃毎日新聞掲載)
長野五輪一周年記念行事出席のため長野市を訪れた国際オリンピック委員会(IOC)のマーク・ホドラー理事(スイス)は六日、市内のホテルで信濃毎日新聞のインタビューに答え、長野五輪招致での不正行為の有無をめぐる日本オリンピック委員会(JOC)の調査について「すべての事実を明らかにすることを願う」と、強力な調査を行うよう求めた。一問一答は次の通り。
―あなたは昨年末、五輪招致活動で不正行為があると指摘した。その経緯は。
「ソルトレークシティーからIOC委員の具体名や金品のやり取りの証拠が出てきたからだ。書類では、ある委員に少なくとも一万ドルの奨学金が支払われていた。この機会にすべての事実を明らかにし、買収や贈賄などとは無縁の五輪にしなければいけないと感じた」
―長野五輪招致でも、ソルトレークシティーと同じような悪質な活動があったと思うか。
「証拠はないが、長年にわたり、少数のIOC委員が(立候補都市から)過剰接待を受け入れてきた。同様の問題があったと想像できる。JOCの詳しい調査を期待したい」
―過去の五輪招致活動での不正行為を以前から認識していたということか。
「十三、四年前から招致活動の行き過ぎを憂慮していた。立候補都市が高額で、必要のないイベントやパーティーなどを開いてきた。開催地が決まるたびに、落選した都市から、不正があったとのうわさは聞いていたが、これまで確たる証拠はなかった」
―招致疑惑の各国への広がりをどう受け止めているか。
「特に若者におわびしたい。信頼回復はサマランチ会長やわれわれの最大の目標。『IOCは倫理、公平、平等をモットーとする団体』と言えるよう、内部を完全にクリーンにしたい」
(1999年2月7日 信濃毎日新聞掲載)
国際オリンピック委員会(IOC)から、長野冬季五輪招致に関連する不正行為の有無調査を依頼された日本オリンピック委員会(JOC)のIOC問題プロジェクト(座長・八木祐四郎専務理事)が六日、長野入りし、五輪一周年を迎える七日まで二日間調査する。長野側は同日までに県オリンピック室が中心になり当時の招致委員会幹部らの話を聞いた。
八木座長ら五人のJOC理事が長野を訪れ調査。六日夕には招致委会長だった吉村知事、副会長だった塚田長野市長と会談する。調査に対し、吉村知事は「県と長野市で連絡を取り合いながら準備する」との考えを示している。
一日、長野市内で当時の招致委の市村勲事務総長、吉田総一郎事務総長代行らが集まったほか、当時の幹部らは今月に入って個別に会い、それぞれの記憶をもとに情報を確認しあったという。県オリンピック室がこうした情報を整理し、質問に対する回答の資料づくりを進めてきた。
一連の作業で▽招致段階で契約したスイスのコンサルタント会社への成功報酬については、招致が成功すれば追加支払いをする、との事前の契約項目に沿って支払った▽二度以上長野を訪れているIOC委員については、渡航費を含めすべての経費を長野側で負担したのは一回だけで、IOCの規定には違反しない―などを確認。JOCの質問に対してこうした点を説明するものとみられる。
(1999年2月6日 信濃毎日新聞掲載)
【ローザンヌ(スイス)4日共同】長野市で七日に開催される長野冬季五輪一周年記念式典に国際オリンピック委員会(IOC)の代表として出席するパル・シュミット第一副会長が、四日までの共同通信とのインタビューで、九一年の長野五輪開催決定前に、同市訪問の機会に複数の家族の同伴や、訪問が二度以上のIOC委員に対して注意処分を検討すると述べた。
シュミット副会長は、ソルトレークシティー(米ユタ州)五輪招致をめぐる不正行為の解明を続けている調査部会のメンバー。
新設する倫理委員会の活動が始まるまで、九六年五輪以降の各招致都市の集票活動についても、物的な証拠があれば、疑惑調査を進めることになっている。
(1999年2月5日 信濃毎日新聞掲載)
【ローザンヌ(スイス)3日共同】長野冬季五輪招致委員会(当時)が当地の広告代理店「スタジオ6」とコンサルタント契約を結び、支払額の約三分の一が成功報酬だったことに関連して、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ理事は三日、五輪招致のロビー活動として悪質な性格が強いとの考えを示した。
IOC調査部会のメンバーでもある同理事は「われわれがソルトレークシティー冬季五輪招致の疑惑調査報告書で明示した通り、成功報酬は(調査上)特記されるべき事項だ」と述べた。
<「あくまで情報収集」招致委元事務総長>
招致委員会(当時)で事務総長を務めた市村勲氏は「成功報酬とはいえ、追加払いという性格が強かった。外国の情報を得るには必要だとのアドバイスを受けて契約したもので、悪質とされる集票活動が目的ではない。あくまで情報収集のためだったと堂々と言える。当初示された契約額でなく、交渉によって最低限の額にした」と話している。
(1999年2月4日 信濃毎日新聞掲載)
長野五輪招致活動での不正行為の有無を調査する日本オリンピック委員会(JOC)の「IOC問題プロジェクト」(座長・八木祐四郎専務理事)は三日、初会合を東京都内で開いた。八木座長らが、大会一周年記念イベントが行われる六、七日に長野に出向いて当時の招致委員会担当者から事情を聴き、十二日に開く二回目の会合で、国際オリンピック委員会(IOC)に提出する報告書をまとめる方針を決めた。
会合後記者会見した八木座長によると、IOCからは、委員の不適切な行為に関連する事実や委員の氏名、可能な証拠を添えて報告するよう求められている。質問項目は、IOC臨時理事会に提出された調査部会報告書の内容と同様で、▽IOC委員からの(金品などの)要求▽委員の親族に対する利益供与▽委員に対する行き過ぎた接待―など。八木座長は「委員が来日した時の経済的なことを具体的に調査する」と述べた。
調査方法は、接待に直接関係した招致委の総務、財務部門の担当者三―五人に対し、資料をまとめるよう個別に要請。八木座長らが長野でこの資料と突き合わせながら事情を聴く予定だ。
八木座長は、招致活動に対し、「きちんとしていたと考えていたが、見聞する中で、接遇で行き過ぎがないこともなかったのではと思っている」との見解を示し、具体的には二百ドル以内とのIOC規定を超えたIOC委員への贈り物があったのではないかとの疑問を挙げた。
会計帳簿類の焼却については「手続き上問題はなかったが、国民が受ける感じとしては愉快なことではなかったと思う」とし、調査に向けて「スポーツの存在価値を壊すのは避けるべきで、わびるものはわびるという形をとっていきたい」との姿勢を強調した。
<IOCの質問内容>
(1)IOC委員が直接、間接に(金品などを)要求したか
(2)IOC委員が立候補都市側から金銭、物品、サービス、一般的な習慣の枠を出るような贈り物、緊急を要しない治療の便宜を受け入れたか
(3)IOC委員が家族や親族に対する奨学金や雇用などの利益を受け入れたか
(4)IOC委員が第三者への利益を受け入れたか
(5)IOC委員が行き過ぎた接待を受けたか、特に複数回の立候補都市訪問、2人以上の帯同者を伴って立候補都市を訪問したか
(1999年2月4日 信濃毎日新聞掲載)
日本オリンピック委員会(JOC)が行う長野冬季五輪招致活動の調査について、有馬文相は一日の衆院予算委員会総括質疑で、「長野市と県の対応を見守るが、必要があればJOCに指導する」と述べ、不十分な場合は同省も対応する考えを示した。
旭道山和泰氏(公明・改革クラブ)の質問に答えた。有馬文相は「招致活動に関して、さまざまな報道があることはまことに残念」とした上、「五輪の招致や開催は都市が主体的に行うため、基本的には長野市と県で対応すべき問題。市長や知事もJOCの調査に協力する意向を示している」と答えた。
また、旭道山氏は「サマランチIOC会長は責任を取って辞任すべきだ」と主張したが、小渕首相は「IOCが多くの功績を残したことも確かで、私の立場で(会長の進退について)申すべきことではない」と述べた。
(1999年2月2日 信濃毎日新聞掲載)
国際オリンピック委員会(IOC)が五輪招致をめぐる不正行為の有無を調査するため日本オリンピック委員会(JOC)へ送った質問書で、立候補都市側にIOC委員から直接、間接に金品などの要求があったのかなどを尋ねていることが一日、明らかになった。
質問はこのほか、立候補都市側からの金銭、物品とサービス、一般的な習慣の枠を出るような贈り物があったのかなど、計五項目にわたっている。全体的な内容は一月下旬にIOCが発表した原案とほとんど変わっていない。
IOCは一九九六年から二〇〇四年までの夏季、冬季五輪招致に関して調査を進める方針で、九八年長野冬季五輪も対象となっている。しかし、招致委員会が既に解散しているため質問書は一日、JOCに届いた。
サマランチIOC会長は質問書のあいさつの中で、五輪招致で不正な行為があれば「関連する名前や可能な限りの証拠を報告してほしい」と要請している。(共同)
(1999年2月2日 信濃毎日新聞掲載)