「P2P観測システム」ってなんだ?!
「P2P」とは?
P2Pとはピア・トゥ・ピア(Peer to Peer)の略で、ネットワーク上の各ユーザが、特別なサーバなどを介さずに、おのおの直接通信するネットワークのアーキテクチャである。ファイル交換用のShareやWinnyといったソフトウェアが存在し、それぞれ独自のプロトコルを使って、各ソフトウェアのノード(末端)が協調的に動作することで、巨大なネットワークを構成し、多数のユーザの保有ファイル情報を交換しつつ、任意のファイルを探して、ダウンロードすることが可能となっている。
P2P自体は、ファイル交換のためのネットワークに過ぎなく、その利用自体は違法でないが、その性質上、著作物の無断アップロード&ダウンロードの温床となっている。MP3などの音楽ファイルから、DVDのリッピングデータ、有料のソフトウェアパッケージまで、幅広い著作権に守られたコンテンツが、P2Pで違法に流通していることから、これまでに複数の逮捕者が出ている。
2004年には、Winnyの開発者である元・東京大学大学院情報理工学系研究科助手の金子勇氏が著作権侵害行為幇助の疑いで逮捕されたが、氏の行為の違法性については未だ議論が続いており、裁判も継続中。2009年10月8日、大阪高等裁判所は一審判決を破棄し、無罪を言い渡し、同年10月21日、大阪高検は判決を不服として最高裁判所に上告している。
P2Pの通信を観測する方法
P2Pの通信は、各ノードが隣接するノードと「キー情報」と呼ばれる「ファイルの情報とそれを持つノードの情報」をやり取りして行われる。
P2Pのネットワークは、クライアントサーバ方式ではないため、最終的なデータ通信は、通信する相手のIPアドレスやTCPポート番号などを特定して、直接接続して行う必要がある。キー情報自体がどれほど暗号化されていても、通信時にはデコードするため、P2Pファイル交換ソフトウェアの通信方式を解析するなどすれば、キー情報に含まれるIPアドレスとアップロードしようとしているファイル名などの情報を紐付けて、明らかにすることができるのだ。
こうしたネットワークを、P2Pファイル交換ソフトウェアと同じ通信方法を実装した一種のロボットで巡回していくことで、ネットワークの観察を行うことができる。こうしたデータ収集プログラムのことを「クローラ」と呼ぶ。
株式会社クロスワープの開発した「P2PFINDER」というシステムでは、複数のクローラを並列で実行することで、WinnyやShareといった主要なP2Pネットワークのノードおよび保持ファイルを短時間に高い確率で検出し、観察することに成功している。
同社のシステムは、あくまで著作者の依頼に基づいた観測と報告だけを目的としているため、違法なアップロードを観測したとしても、これを通報するものではない。
しかしながら警察庁では、2010年1月1日からP2P観測システムの運用を正式に開始したという。そのシステムの仕組みが今回紹介したものと同じとは限らないが、各ネットワークのノード及びキー情報は現在進行形で蓄積され、解析が行われている可能性がある。
P2Pネットワークでは一次配布者(最初に該当ファイルをアップロードした人)の特定が難しいとされてきたが、連続的に十分大規模な観測と記録が行われれば、ネットワーク内に存在するファイルがコピーされ増殖する過程をさかのぼることで、一次配布者を特定することは可能なのだ。利用すること自体に違法性はなくとも、合法非合法を問わずほとんど全てのアクセスが、さして複雑でない方法で、観測可能であり、記録されている可能性が高いことは知っておいた方がよいだろう。
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