ヤコブ・リビングが「デンマーク児童性愛愛好者協会」に潜入したのは、いまから10年まえの、1999年のことだ。かれは、デンマークのジャーナリストで、それはノルデック・フィルム&テレビ(デンマーク大手の映画テレビ番組制作会社)が企画した、ペドフェリアの実態をさぐろうという、テレビ番組のための取材だった。「デンマーク児童性愛愛好者協会」は、世界で唯一の児童性愛愛好者の協会(合法)で、ヤコブはなんとか潜入に成功し、そこではじめてしたしくなったのが、ベント、そうモニカの写真を所持していた男。数百枚におよぶ写真と8ミリフィルム、おびただしい数の児童ポルノをかれは保管していた。にもかかわらず、おなじ協会員だからか、かれはほとんど警戒心をみせず、おしげもなくそれらをみせてくれた。そんなベントの、8ミリフィルム上映会にまねかれるうち、ヤコブはついに400枚のネガを手にいれる。写っているのは「モニカ」とよばれるおさない少女。それから「アグネス」と「マリン」そしてだれともしれない中年の男女だ。
かれらはいったいどこの、だれなのか_____場所の特定ができそうな写真はたった数枚しかない。それでもヤコブはその数枚を手がかりにして、モニカの所在を突きとめようとする。持ち主のベントによれば、モニカはスウェーデンにすんでいるという。ベントは彼女とかつて文通をしていた。モニカが12歳のころからおよそ3年間、それはつづいたらしい。その間に膨大な量の写真とフィルムを、彼女からおくられたそうだ。きっかけはオランダの「ロリータ」というポルノ雑誌。顔出しをして文通相手を求めていたモニカに、ベントが手紙をだしたのがそのなれそめだ。わずか12歳の女の子がポルノ雑誌で文通相手を募集するなど、不自然きわまりないはなしである。が、ベントはまったく意に介していない。少女との3年間は、とてもすばらしかった、とうっとりする。いわく「モニカははだかをみせるのがすきなんだ」やりとりされたネガのほとんどは、あられもない彼女のポルノグラフィー。ときおりほかの少女もまざっていて、それがアグネスとマリンだった。
そこにはいろいろな年代のモニカがいる。いちばんわかくて5歳。まだ就学まえの彼女が、40代とおもわれる女に性器をなめられている。モニカだけが被写体になっているものも、そうでないものもある。虐待している中年の男女は夫婦のようにみえた。これらを撮影したのは叔父だという。ベントは叔父とも交流があったようで、本人がそういっていたとのこと。叔父は手紙で、どういうコスチュームを着せたらいいかなど、かれにこのみをきいてきたりもしたそうだ。しかし、というかなんというか、ヤコブが筆跡を確認したところ、叔父のそれとモニカのそれは、おどろくほど似ていたらしい。って、そりゃそうだろう。ほんとうの文通相手はどうかんがえてもこの叔父だ。うさんくさいこの叔父のはなしをしんじるならば、モニカは17歳のとき、白血病でなくなったはずだった。が、もちろんヤコブはしんじない。彼女を懸命にさがしつづける。やがてかれはたどりつく。それはスウェーデン北部のメェスタというところ。モニカがうまれ、そだち、いまも住む町だ。
彼女はいきていた。とうに成人して、母親になっていた。マリンとアグネスも存命で、いまは妙齢の女性だ。モニカとおなじ町にふたりも暮らしている。連絡をとると、当然ながらみんなとまどった。あれはだれにとってもいまわしい、できればわすれてしまいたい過去なのだ。けれどわすれられない過去でもあった。それにペドファイルたちにとっては現在だ。彼女たちのポルノグラフィーは、ヨーロッパ全域に流出している可能性がある。はじめこそまよっていたものの、マリンとアグネスは最終的に、モザイク入りでインタービューに応じることを承諾した。搾取されつづけることに、いかりをかんじていたからだ。モニカはしかし、取材を拒否する。彼女はおおくのなやみをかかえていた。ふかい絶望と怒りに支配され、そのためにうまく息子をあいせない。ヤコブはモニカ自身がかたる、彼女の不遇な生活、身の毛もよだつ過去の出来事にうちのめされる。わたしの人生は破壊された、もうもとにもどることは決してない、あのことは一生、じぶんにつきまとう_____
撮影者は叔父ではなかった。幼年のモニカを玩具にしていたのは、それよりもっと近しい人間だった。だが、悲劇はこれでおわらない。後々、もっとおそろしく、けがらわしい事実が判明する。ヤコブが家をたずねたとき、モニカは一緒に住む母親をかばい、彼女をこんなことに巻き込むなといった。その母親がむかしじぶんになにをしたのか、彼女はもうおぼえていない。しかし、写真がのこっていた。ヤコブはその後、したしくなった協会員たちを導き役として、世界各国へとぶ。かれは各地で、虐待される10歳にもみたない、ちいさなこどもたちに出会う。檻に入れられ、足かせをはめられ、売られる少年少女。ペドファイルの幾人かは、実際に手をだしていた。タイやムンバイでこどもを買い、身近な児童にも性行為を強要する。かれらは積極的に情報交換をし、欲望をみたすため日々奔走していた。ペドファイルはうそぶく。こどもにも欲望はあり、それをのぞむ児童もいると。非対称性には目を瞑りながら、悪びれもせず、こどもとの性愛の権利を主張する。
放映がきっかけで、ふたりの協会員が逮捕され、協会は自主的に解散したらしい。翌年の2000年、ヤコブは「セイブ・ザ・チルドレン」からこども人権賞を贈られる。また番組「デンマークの児童性愛者たち」は、その年のテレビ・オスカー候補にもなった。「公共の建物内で行われている、違法行為の扇動は妥当か否か」番組はそう視聴者に問いかける。わたしはしばしばわからなくなる。自由とか権利とか尊重とか保障とかそこらへんのことが。にくむべきはチャイルド・マレスターであり、ペドファイルではない。違法行為の扇動は妥当でないが、だからといって、こうした組織をつくること(かれらがつどうこと)自体を、禁じていいものでもないはずだ(いやどうなのでもそうよな)ではかれらがこのような組織をつくったとき、あるいは逮捕者がでて尚、組織の存続を希望した場合、どういう態度をとればいいのだろう。日本のロリコン漫画雑誌「COMIC LO」には文通欄がないという。なぜならロリコンは、あつまるとろくなことをしないからだそうだ。
しかし、あつまりたいとつよくねがう者もいるかもしれない。さてかれらが「日本児童性愛愛好者協会」をつくりたいといったら_____
また「かれらは声をひそめている。よってそれはどこへもとどかない。その人生をだれもしりえない」と冒頭で記したが、最近ではKylie Freemanという米国の少女がウェブ上で自らの体験をつづっている。彼女は父親のKenneth John Freemanに10歳のころから性的虐待を受け、それをビデオに撮られたうえ、インターネットにながされていた。ビデオのダウンロード数は記録的だったらしい。わたしも児童ポルノ売買サイトでそれが売られているのをみたことがある。ビデオは有名な児童ポルノシリーズだった。父親は2年まえに捕まったが、それはいまだ売られつづけている。Kylie Freemanは、テレビ番組「America’s Most Wanted(アメリカの重要指名手配犯)」にも出演し、事件についてかたった。将来は被害者を支援する仕事に就きたいという。一般に児童ポルノとよばれている、児童性虐待写真、および動画の単純所持を禁止とする法律は、必要だとおもう。
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祖父が危篤で一族が本家に集まったとき、おんなたちが嫁入り話をしていて、
「東んちのばあちゃんは十六でお嫁に来たんだよ」
「○○んちのばあちゃんは十五だがね」
と話しているのを聴いた記憶がある。昔の人は数え年だから今の十四、十三に当たる。
光源氏が紫の上を見初めたのは彼女が八歳のときで、第一婦人としてむかえたのは十二歳のときだ。江戸時代なら十二で嫁入はあたりまえだったというし、赤とんぼの歌の三番は十五でねえやは嫁に行きと歌っているが、これも数え年だから今の十三歳に当たる。初潮と精通を迎えた男女が「自己の性的好奇心を満たす目的で」性生活を始めるのは本来人類の当たり前のすがたのはずだ。日本でそれが崩れたのは西欧化が強制されたごく最近のことで、人類のDNAが変わったわけではない。潜在的か顕在しているかの差はあれど、ほとんどすべての男性(女性)は十二歳の女性(男性)に欲情することができる遺伝子を持っているはずだし、十二歳の女性(男性)のポルノ写真に性的好奇心を刺激されることがありうる。西欧化された世界はキリスト教の性抑圧によって健全な性意識を失ってしまった。彼らは今それに苦しんでいる。光がロリコンならロリコンのほうが当たり前の性意識なのだ。現今の児童ポルノ禁止法に危惧を感じるのはそのごく普通のDNAを持つ健全な男女が犯罪者もしくは犯罪者予備軍にされてしまうということだ。場合によってはほとんどすべての男女が警察の恣意によって取調べを受けることになりかねない。ことは「小児性愛者」だけの問題ではない。そのうち源氏物語も禁止されるのだろうか。誰かが日本を壊そうとしている。
shn | URL | 2010-01-10(Sun)10:14 [編集]
8歳はもちろん13、14歳だってまだ人によっちゃあ初潮もきてないつうの。初潮がきたところでからだもこころも未熟です。安全に出産できません。平安、江戸時代の平均寿命は20歳~30歳くらいだそうです。結婚が早かったのもだからでしょう。出産で命を落とす十代の娘もおおかったのだろうとおもいます。
F | URL | 2010-01-12(Tue)12:53 [編集]
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[児童ポルノ法]児童性虐待写真、および動画の単純所持を禁止とする法的権限は、警察に与えるべきではない
http://francesco3.blog115.fc2.com/blog-entry-133.htmlのフランチェス子さんの記述は真摯であり、その結論に心情的に納得するところはある。 しかしながら、日本の「児童ポルノ法」、とくに財団法人日本ユニセフ協会(主導しているのは警察関係者)の主張は、 1;被害者
カルトvsオタクのハルマゲドン/カマヤンの虚業日記 2010-01-03 (Sun) 00:09
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