2008-07-13
「現実異性の代用品」を超えはじめた、二次元美少女達
そういえば私も、「二次元の異性は好きだけれど、三次元の女性を気持ち悪がる男性」と何度か出会ったことがある。「二次元の世界には飛び込みたいと思うけど」「三次元の女の子にはちっとも魅力を感じない」という男性達。私の知っていた何人かは、実際、アダルトビデオをかなり嫌悪していた。性欲を刺激されるどころか「気持ち悪さを感じる」という彼らのAV評は、大野さんが聞いた話に相通ずるものがあると思う。
二次元も三次元もいけるという私の目からみても、“どれだけ理想の異性を想像のなかで楽しめるのか”に関する限り、三次元の女性達は最近の二次元の美少女キャラクターに敵わない、と思う。特にここ数年の、十分に洗練された美少女キャラクター達は、“魅力の塊”“魅力以外の情報を極力絞った属性塊”として構成されており、「萌え」の文法への親和性をクリアしている限りにおいては、混じりっけの無い、理想の異性と(コンテンツ越しとはいえ)対峙することができる。
これが、1990年代の美少女キャラクター達となると、キャラクターにはまだかなりのノイズが混じっていたし、どういう属性でキャラクターを構成すれば、混じりっけのない美少女を脳内補完出来るのかが、試行錯誤されている段階だったと思う。1990年代の美少女キャラクターを通して混じりっけのない美少女を脳内補完しきるには、キャラクターに含まれているノイズを除去し、そこを脳内補完するだけの“たくましい想像力”が必要だった。
ところが、2000年ごろまでには「萌え属性」もあらかた出揃い、“ノイズを混ぜない美少女の造形”が大体整うようになるとと、美少女キャラクターに含まれるノイズは非常に少なくなり、それほどたくましくない想像力の持ち主でも、混じりっけのない美少女脳内補完が容易になった。理想少女を夢見る際、不要なノイズを取り除くプロセスは求められなくなったし、キャラクターを脳内でモディファイするまでもなく、最初から純度の高い美少女キャラクターを受け取ることが可能になった。消費者のニーズという淘汰の波を耐え抜いた美少女キャラクター達は、どこまでも完璧な、まさに理想のアイコンへと進化したと思う。
一方、三次元の女の子達はというと、“消費者のニーズ”に合わせて変化しなかった。少なくとも、「萌えキャラクター」の消費者達のニーズに合わせては変化しなかった。もちろん三次元の女の子達も、ファッションや化粧やダイエットなどを駆使して自分なりに審美性を追求してはいるが、萌える美少女キャラクター達ほどの急激な理想化を遂げることは無かったし、追求される審美性のベクトルの向きも「萌え」とは微妙に異なっているようにもみえる。斯くして、男の子にとっての理想(特に美少女キャラ萌えな男の子にとっての理想)、という意味では、三次元の女の子達と、二次元の美少女キャラクターとのギャップは拡大する一方だったのではないかと思う。
なので、ここ最近の“ノイズの少なすぎる”萌えキャラクターに馴染みすぎた人にとって、三次元の異性は、あまりにもノイズや剰余の多すぎる、まさに気持ち悪いものに感じられても不思議ではないと思う。特に、思春期に入るか入らないかの頃、初恋の相手をみつけるよりも早く美少女キャラクターを消費することを知ってしまった人達にとっては、「なんでこんな気持ち悪いものを視なきゃならないのか」ということになっても不思議ではない。西暦2000年に12歳だった人も今では20歳、異性とのファーストコンタクトが三次元ではなく二次元という人や、初恋の相手が現実の異性よりも“遙かに理想的な”美少女キャラクター、という人は、現にいると思う。いや、想像力の豊かな人の場合はもっと年上のオタク男性のなかにもいると思う。というか、私はそういう人を現に何人も知っている。その手の人達にとっては、二次元の異性は三次元の異性の代用品ではあり得ない。二次元の異性こそが彼らにとっての理想少女であって、三次元の異性は、ノイズにまみれた、気持ち悪い存在でしかない。
一個人のなかで、二次元が三次元に優越しはじめた
一時期の私は、「二次元キャラクターを現実の異性の代用品にしているオタクが沢山いる」と思っていた。だが最近は、その正反対の事態も起こっていると考え始めている。即ち、物心ついた頃から二次元キャラクターを理想少女としていた人達にとっては、まず二次元美少女ありき、であって、三次元の異性は、二次元の異性の代用品にすらならない、という事例が起こりえるということだ。この手の人達においては“萌えオタは、現実の異性に手が届かないから、酸っぱい葡萄をしているんだ”という指摘は成立しにくい*1。アダルトビデオを見せたら気持ち悪がるような男性や、女性のヌードの直視が困難な男性にとっては、二次元美少女こそが異性そのものであって、代用品というわけではないのではないか。コスプレなどで身を固めた三次元女性であれば、かろうじて彼らのニーズに適うのかもしれないが、その場合も、コスプレ女性こそがせいぜい“美少女キャラクターの代用品”に留まってしまうのではないか。
こうした境地は、「萌え」の黎明期においては、“想像力の抜群な”、ある種選ばれたエリートオタクにしかたどり着けないものだったと思う。だが、最近は案外そうでもないんじゃないか。思春期に入るか入らないかの頃から、男の子達は高品質の萌えキャラクターと幾らでも出会うことが出来る。そして物言わぬ二次元美少女キャラクターは、消費者達の理想と願望を、果てしなく引き受けてくれる。「現実異性の代用品」を超えはじめた二次元美少女達と、その消費者達は、いったいどこに向かっているのだろうか。
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*1:もし、彼らの三次元嫌悪に何らかの防衛機制の関与があるとしても、“酸っぱい葡萄”という、合理化の機制一本だけで説明を通すことはいまや難しいのではないか、と私は推定している。
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