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2012年7月26日(木)付

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シリア化学兵器―無法を許さぬ連携を

化学兵器を持っていると公言するシリアに対し、国連安全保障理事会は新たな厳しい態度でのぞまなければならない。シリアでは、政府軍が民間人への攻撃を続けている。そんな情勢のな[記事全文]

原子力規制委―候補者の所信聞きたい

新しくできる原子力規制委員会の人事案をめぐり、脱原発派の人たちから、差し替えを求める声が上がっている。福島事故を教訓に、原子力規制を抜本的に転換することができる人材なの[記事全文]

シリア化学兵器―無法を許さぬ連携を

 化学兵器を持っていると公言するシリアに対し、国連安全保障理事会は新たな厳しい態度でのぞまなければならない。

 シリアでは、政府軍が民間人への攻撃を続けている。そんな情勢のなかで政府報道官が「適切に管理している」「使うのは外敵に対してだけ」と述べた。

 使用する可能性すら示唆したことは重大である。国連や米国が非難し、シリア政権よりのロシアさえ「国際的義務の順守を求める」と声明したことは、問題の深刻さを物語る。

 安保理はこれまで、シリア政府への制裁決議を求める欧米と拒否するロシア、中国の間で分裂してきた。しかし、化学兵器の存在まで持ち出して、国際社会の介入を邪魔しようとする政権を座視してよいはずがない。

 化学兵器禁止条約にシリアは署名していない。だが、大量破壊兵器の所在を監視し、使用を禁じて拡散を防ぐことは、イランや北朝鮮などもふくめて国際的な問題である。

 もはや一刻の猶予も許されない。政府軍から離脱した自由シリア軍が急速に武力攻勢を強めている。混乱のなかで化学兵器が使われたり、テロ組織に流れたりせぬように、安保理は一致した対応をとるべきだ。

 この国の情勢の危うさは、反体制派の武力攻勢が、政治的な統制がないままに進んでいることにある。

 内戦で体制が倒れたリビアの場合は、反体制派の主力だった国民評議会が早い段階で「リビアの代表」として国際的な認知を受け、武力闘争も評議会と連携して行われた。その結果、体制崩壊後の民主化も国民評議会主導で進んだ。

 それに対して、シリア国民評議会に対する国際社会の認知は進んでいない。国外で活動する国民評議会が国内の反体制運動とのつながりが弱かったことが理由でもあるが、国際社会も直接にシリア国内の反体制派と連携できるわけでもない。

 首都が陥落してアサド体制が倒れても、それで反体制派の勝利とならない可能性が強い。

 現体制の中核である少数派のイスラム教アラウィ派が、北西部ラタキア県などを抵抗の拠点にし、化学兵器もそのまま同派の武器となるシナリオもありうる。同じく少数派で体制を支えたキリスト教徒の問題もある。

 化学兵器の脅威が浮上したいま、欧米や日本は、あらためてシリア国民評議会との連携を通して、国内反体制派への関与を強める道を探るべきだ。「アサド後」をにらみ政治的に対応できる受け皿作りが求められる。

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原子力規制委―候補者の所信聞きたい

 新しくできる原子力規制委員会の人事案をめぐり、脱原発派の人たちから、差し替えを求める声が上がっている。

 福島事故を教訓に、原子力規制を抜本的に転換することができる人材なのか。判断の軸はそこにある。

 候補者本人から考え方を聞かなければならない。人事の決定は、国会の同意を必要とする。与野党は一刻も早く人事案の審議に入り、候補者の所信をただすべきだ。

 政府が候補としているのは、前原子力委員長代理の田中俊一氏ら5人。過去3年間に、原子力関連業界から年50万円以上の報酬を受けていないことなどを基準に人選した。

 これに対し、「原子力ムラと関係の深い人物が多い」との声が上がっている。特に委員長に想定されている田中氏は旧日本原子力研究所の出身で、原子力学会の会長も務めた経歴から、「原子力ムラの中心」と批判を浴びている。

 たしかに、経歴を見れば原発の推進側にいたことは間違いない。一方で、原子力規制を担う委員会に、高度な専門知識が必要なことも事実だ。

 肝心なのは、脱原発依存にかじを切ろうとしている現状を深く認識し、厳しく規制にのぞむ姿勢をもちあわせているかどうかである。

 田中氏は事故直後、「原子力利用を先頭に立って進めてきた者として、深く陳謝する」とする緊急提言をまとめた専門家16人の中心人物で、老朽化した原発にも厳しい目を向けているとされる。評価は分かれる。

 国会同意人事のうち特に重要な案件は、衆参両院の議院運営委員会で候補者の所信を聞き、質疑応答をすることになっている。日銀総裁・副総裁や会計検査院の検査官、公正取引委員会の委員長などが該当する。

 原子力規制委も、このルールの対象とすべきだ。

 候補者のこれまでの活動や原子力事業者との関係について情報公開を徹底させるのは当然として、候補者当人から新しい原子力規制や再稼働問題に対する識見、姿勢を表明してもらい、国民に広く伝わる形で検討するのが国会の責務だろう。

 問題は、人事がまたもや政局に利用されていることだ。事前に読売新聞に情報が漏れたとして自民党が態度を硬化させ、人事案の国会への提出自体が遅れている。

 新たな原子力規制は、待ったなしである。本質と関係のないところで時間を浪費する愚は、いい加減やめるべきだ。

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