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事件
【産経抄】7月26日
2012.7.26 03:18
首都直下地震に備えて陸上自衛隊が行った統合防災演習について、23日付小紙が報じた記事に、大きな誤りがあった。東京都の一部の区役所は、自衛隊員の庁舎への立ち入りを拒否したわけではなく、通信訓練を認めていた。
▼記事の尻馬に乗った翌日の小欄も、当然訂正しなければならない。各区役所は、抗議の電話の応対に追われたという。24時間体制で防災活動に当たる担当者をはじめ、ご迷惑をかけたすべての関係者に深くおわびする。
▼記者生活ウン十年、これまでも数多くのミスを重ねてきた。ミスの最大の原因は「思い込み」だ。今回の場合、迷彩服姿の自衛隊員が行う訓練に対して、一部に批判的なムードがあるのは事実だから、区役所の非協力もあり得ると、納得してしまった。
▼もうひとつの反省は、「疑う」という記者の基本を忘れたことだ。書籍や記事の内容、偉い人の演説、何でも「ほんまかいな」と、一度は首をかしげてみなければならない。「東日本大震災の救援活動で絶賛された自衛隊の防災訓練に、今時そんな対応する職員がいるのかな、と記事を読んで思ったんだ」。今回の経緯を説明した大先輩から返ってきた言葉だ。そこから確認作業に入っていたら、コラムの内容は違ったものになっていた。
▼きのうの小紙に載ったドイツ文学者、井上修一さんのインタビュー記事は身にしみた。子供の頃自宅で開いた正月の宴で、最後の客を玄関で送った後、笑っていると、父の靖さんから叱られたという。
▼「敷地を出るまで決して笑うな。客は自分のことを笑われたと思うから」。元名記者にして大作家から、言論に携わる者はあくまで周到であれと、こちらも叱られた気がする。
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