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【社説】

オスプレイ搬入 米政府になぜ物言わぬ

 垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが米海兵隊岩国基地に陸揚げされた。延期や中止を求める声を押し切っての搬入は十月運用開始ありきだ。言いなりではなく、なぜ米側に物が言えないのか。

 この国の政府は一体、日本国民と米政府のどちらを向いて仕事をしているのか。米政府が十月から米海兵隊普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)での運用を計画しているオスプレイ十二機が、一時駐機のため岩国基地(山口県岩国市)に陸揚げされた。

 開発段階だけでなく実戦配備後も事故が相次ぐオスプレイについて、米側は一貫して機体に問題はないとしているが、安全性が確立されたとはとても言い難い。

 沖縄県や山口県、岩国市をはじめ、低空飛行訓練のルートとなる全国から搬入延期や中止を求める意見が相次ぐのも当然だ。

 そうした国民の「声」も、野田佳彦首相には官邸周辺での「反原発」デモ同様、ただの「音」にしか聞こえていないようである。

 政府は、オスプレイ配備を認める理由に日米安全保障条約を挙げている。老朽化が進むCH46中型輸送ヘリコプターからオスプレイへの転換は、事前協議の対象としている「装備の重要な変更」に当たらないという理屈だ。

 とはいえ、日本国民が安全性に不安を覚える航空機の配備を強行すれば、米政府や米軍に対する不満や不信感が高まり、条約上の義務である基地提供に支障が出る可能性があるのではないのか。

 前原誠司民主党政調会長ら日米同盟重視派からも搬入延期を求める意見が出たのも、同盟関係が傷つきかねないとの懸念からだ。

 野田内閣は専門家を近く米国に派遣し、米側からの聞き取り調査をして独自に安全性を検証する。米政府は日本側が安全性を確認するまで飛行を自粛するという。

 しかし、日本側でどんな調査結果が出ても、十月の運用開始方針は変わらないのだという。これでは米側の方針をうのみにしているだけではないのか。唯々諾々と従うだけが同盟関係ではない。

 首相がなすべきは、オスプレイ配備を中止させ、沖縄駐留が抑止力となっているか疑わしい海兵隊は国外・県外に移転させる。普天間飛行場の早期返還で沖縄の過重な基地負担を軽減することだ。

 今、問われているのはオスプレイの安全性だけでなく、米政府に追随し、物を言おうとしない日本政府のふがいなさである。

 

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