「中国新聞趣聞〜チャイナ・ゴシップス」

尖閣諸島の実効支配を強化するなら今しかない

軍の存在感増す中国次期政権

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2012年7月25日(水)

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 台湾統一がまず前提として必要という話ではあるが、台湾の現政権が、中華意識が強く、過去に釣魚島防衛運動にもかかわっていた馬英九政権であることを考えれば、釣魚島防衛で中台軍事協力というのもできない話ではないし、解放軍が本気でそんなことを考えていることは知っておいた方がいいだろう。

内政の不満をそらすための対外軍事行動に要注意

 秋に登場する習近平政権の対日政策がどのようなものになるかは、蓋をあけてみなければわからない。もし、政権中枢に軍人が入れば、外交に軍部の意見が反映されやすくなるかもしれない。軍のトップとして胡錦濤氏が影響力を強化するにしても、習近平・国家主席が権力基盤を強化するにしても、軍の意向が今まで以上に表にでてくる可能性があることは予想しておいた方がいい。

 ただ、制服軍人というのは当事者として自国の軍事力をわりにきちんと把握しているもので、負ける戦はふつう、やりたがらない。日本の軍事力が中国より勝っていると感じているうちは、口でいくら勇ましいことを言っても、本気で衝突覚悟でしかけてくることはない、と私は思う。もっとも、その状態も今後何年続くかわからない。ある防衛関係者から、今は日本が短期戦においては圧倒的にまさっているが、5年後に同じことが言えるか自信はない、とのことだった。

 気になるのは、前述の元上海閥官僚学者の言葉である。

 「胡錦濤は(西側メディアでは隠れ改革派とみなされているが)実は江沢民よりずっと強硬な保守派で、実際江沢民時代より多くの政治犯を投獄している。対外政策も融和派ではない。習近平氏は好人物だが庸才だ。そういう人物が軍のトップと政治のトップを担う政権が国内の経済や就職や社会保障の問題で行き詰れば、対外的軍事行動で国内の不満をそらそうとする可能性はある」

 冷静に軍事力分析ができない文民政治家が内政不満そらしのために、やってはならない対外軍事行動をやってしまう例が過去の歴史にも散見されるが、中国にはそういう懸念もあることを頭の片隅においておく必要があるだろう。

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福島 香織(ふくしま・かおり)
ジャーナリスト

福島 香織 大阪大学文学部卒業後産経新聞に入社。上海・復旦大学で語学留学を経て2001年に香港、2002〜08年に北京で産経新聞特派員として取材活動に従事。2009年に産経新聞を退社後フリーに。おもに中国の政治経済社会をテーマに取材。著書に『潜入ルポ 中国の女―エイズ売春婦から大富豪まで』(文藝春秋)、『中国のマスゴミ―ジャーナリズムの挫折と目覚め』(扶桑社新書)、『危ない中国 点撃!』(産経新聞出版刊)、『中国のマスゴミ』(扶桑社新書)など。

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