社説:視点・鳩山元首相 「約束の人」なら引退を=人羅格
毎日新聞 2012年07月25日 02時30分
鳩山由紀夫元首相が予測不能な言動から「宇宙人」と呼ばれて久しい。1999年の民主党代表選の際、対立候補がすでに「宇宙人的」と評している。
このニックネームは実はありがたかったはずだ。普通はあり得ないはずの行動も「宇宙人だから……」といったノリで大目に見られがちだったためだ。
その鳩山氏の言動がまた注目を浴びている。増税方針に「政権公約と真逆のことをした」と異を唱え法案採決で造反し、野田佳彦首相を行革を妨げる「シロアリになってしまった」と批判している。先週末は官邸前の反原発デモにも参加した。
鳩山氏ら増税批判派の会には20人規模の衆院議員が参加した。衆院に内閣不信任決議案が提出された場合、民主議員15人程度が賛成に回れば可決されるとみられる。鳩山氏の影響力と別に、増税問題以外でも政権運営への不満はたまっている。予断を許さぬ際どさだと思う。
今回の消費増税が事実上衆院選の公約違反というのは鳩山氏の指摘通りだろう。マニフェストに書かれずとも「4年凍結」の反増税路線で選挙を戦った。だからこそ首相は「なぜ増税か」を国民に情理を尽くして説明する責任がある。
だが、よりによって鳩山氏が平然と「約束の重み」を説くことが許されるものだろうか。
首相当時、普天間飛行場の移設問題で迷走の末にまとめた日米合意は「最低でも県外」の約束とまさに「真逆」だった。