シアトルファン涙の別れ　イチメーター作成ファンに謝意も

　【シアトル秋野未知、ジョン・ヒッキー】マリナーズからヤンキースにトレード移籍したイチロー外野手（３８）が２３日（日本時間２４日）、シアトルのファンに別れを告げた。第１打席に入る際には本拠地セーフコフィールドに詰めかけた２万９９１１人のファンに頭を深々と下げて感謝の気持ちを伝えた。試合前には球場名物となっている手製の安打数ボード「イチメーター」を９年近く掲げ続けてきた熱烈な女性ファンにお礼の言葉をかける一幕もあった。

　２００安打を右翼席から見守り続けてきた女性ファンのもとにイチローが近寄った。移籍会見を終えた直後の試合前練習。安打数を示す手製のボード「イチメーター」を掲げてきたエイミー・フランツさんにこんな言葉をかけた。

　「エイミー。サンキュー・フォー・オール・イヤーズ・オブ・ユア・サポート（あなたが長年にわたって支えてくれたことを感謝します）」。安打ボードが登場したのは２６２安打のメジャー最多記録をマークした２００４年。

　エイミーさんに声を掛けるのはこれが初めてだった。デビューから１０年連続２００安打をマークしてきた男は続けることの難しさをよく理解している。来る日も来る日も応援を続けてくれた“糟糠（そうこう）”のファンへどうしてもねぎらいの言葉をかけたかった。

　エイミーさんも急な別れを告げられ、涙にくれた。今年３月に東京ドームで行われたアスレチックスとの開幕戦にも足を運んだほどの熱烈なファンで、今回のトレードもツイッターで知り、慌てて球場に駆けつけたという。

　イチローからはボードにサインをしてもらい、感激のあまりに号泣したものの、「ものすごくうれしかったし、これからも彼をずっと応援していくけど、今日は私にとってものすごく悲しい日」と肩を落とした。

　この日の試合でもイチメーターは掲げられ、新天地初安打を放った際にはしっかりと「１０６」に数字が切り替わった。マリナーズで１１年半。スタンドからは最後まで惜しみない拍手が送られた。