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2012年7月25日(水)付

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作業員の被曝―公的チームで監視を

これでは壊れた原発と闘えない。そんな事実が発覚した。福島第一原発であった被曝(ひばく)線量隠しだ。下請け会社の作業員たちが、放射線の数値が少なめに出るよう鉛の覆いを線量[記事全文]

脱法ハーブ―有害薬物から若者守れ

脱法ハーブという新手の薬物汚染が、若者を中心に広がっている。夏休みも始まった。危うい実態をつかみ、有効な規制の手段を急いで整えるべきだ。厚生労働省は麻薬や覚醒剤のほかに[記事全文]

作業員の被曝―公的チームで監視を

 これでは壊れた原発と闘えない。そんな事実が発覚した。

 福島第一原発であった被曝(ひばく)線量隠しだ。下請け会社の作業員たちが、放射線の数値が少なめに出るよう鉛の覆いを線量計にかぶせて現場に入った。

 最前線の人々の身の安全なくして、今後長くかかる廃炉は進められない。再発を防ぐ決め手は、その作業に対して、線量管理を監視する強力な公的チームをつくることではないか。

 原発の作業は、電力会社から別企業に発注され、それがまた下請けに出されることが多い。

 線量隠しは、下請け会社の役員が指示した。法令で定める限度を超えれば原発で働けなくなるという不安が、背後にあるようだ。幾重にも重なる雇用の底辺に「仕事を失いたくない」という心理がある。それを思うと胸が痛むが、偽装は絶対に許されない。

 放射線にさらされる職業人の線量限度は、ふつうの人の限度よりずっと高い水準に設定されている。しかも原発事故現場のような過酷な環境で働く人は、被曝の線量が限度すれすれになりうる。だから、線量を正しく測り、記録していくことは健康管理の生命線だ。

 厚生労働省は福島第一原発で事故処理にあたった人について被曝線量のデータベース化を始めたが、これもその考え方に沿っている。もし測定そのものがゆがめられたら、本人も企業も社会も、信頼できる健康管理の基本情報を失ってしまう。

 政府と東京電力は、福島第一原発1〜4号機を30〜40年かけて廃炉にする計画だ。この間にプールの核燃料や事故炉の溶融燃料を取り出さなくてはならない。作業員は被曝リスクと向き合うことを強いられる。

 東電は、4号機原子炉建屋のプールに保管された燃料を試験的に取り出した。将来を見すえて今こそ、線量管理の態勢を整えるべきときだ。

 線量管理の監視チームは、東電や関連企業から独立していることが求められる。なれ合いは禁物で、抜き打ちの立ち入り調査が欠かせない。雇い主には言いにくい作業員の訴えを受けられる中立のチームが要る。

 福島での廃炉は、日本社会がこれまでに経験したことのない大事業になる。監視チームをどの組織の下に置くのであれ、政府が最終責任者となるべきだ。

 脱原発の流れが強まる今後、国内ではほかの原発の廃炉も相次ぐことが予想される。

 最も危険な現場である福島第一原発で手本をつくる。それを時代が求めている。

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脱法ハーブ―有害薬物から若者守れ

 脱法ハーブという新手の薬物汚染が、若者を中心に広がっている。夏休みも始まった。危うい実態をつかみ、有効な規制の手段を急いで整えるべきだ。

 厚生労働省は麻薬や覚醒剤のほかにも、危ない薬物を指定し、輸入や製造、販売を禁じている。だが、指定が追いつかずに街に出まわっているものがある。興奮や幻覚をひきおこす物質を乾燥植物片に混ぜ込んだものが多い。

 それが脱法ハーブだ。

 軽い語感とは裏腹に、意識障害や呼吸困難などの深刻な症例が報告されている。命の危険が指摘されているものもある。

 ハーブを吸った者が車を暴走させ、通行人にけがをさせる事故もたびたび起きている。

 そんなものが、厚労省がつかんだだけで繁華街やネット上の389店で売られている。

 東京都内では今年1〜5月だけで94人が救急車で運ばれた。3分の2は10〜20代の若者だ。

 おもしろ半分に興奮や快楽を求めて手を出すのは危ない。学校と力をあわせ、若い世代にそう教えなければならない。

 被害の多さや深刻さを具体的なデータで示さないと、怖さは伝わらない。ところが、何がおきているか全国の実態調査はまだない。早く始めるべきだ。

 脱法ハーブの取り締まりにはいくつか難題がある。

 薬事法には医薬品の無許可販売を禁じる規定がある。が、業者は吸わせる目的でないように装って「アロマ」などの名目で売っていて、適用が難しい。

 厚労省は5年前から指定薬物の規制を始めた。毎年指定を増やし、対象は当初の31種から現在は77種に広がっている。

 すでに海外で出回っていて、これから日本に来そうな薬物も数十種あるといわれる。

 ひとつ指定すると、化学構造を少し変えた亜種がすぐに現れる。まるでもぐらたたきだ。

 そこで厚労省は、構造の似た物質をまとめて禁じる「包括指定」を検討している。

 医療目的の研究に支障が出ないか。刑罰を伴う規定があいまいでよいか。そんな慎重論もあるが、被害の防止を優先することに、異論はないだろう。制度の設計を工夫すればいい。

 いまの薬事法にも指定手続きを簡略にする「緊急指定」の制度がある。ただ、何が「緊急」かの判断が難しく、活用されていない。使える手立てを尽くして若者の体を守るべきだ。

 販売業者には、成分や原材料の表示を求めていく。そんな方法で汚染の広がりを防ぐことも考えよう。

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