<2012年4月=東スポ携帯サイトより>
いつからか我々は、音楽を勝手にジャンル分けしてしまう癖がついてはいまいか?
それがリズムやコード進行など音楽理論上の区分なら構わないが、どちらかと言えば「空気を読む」なんて嫌な言葉と一緒な感じ。ラジオから流れる音楽、いやDJの語り口一つとっても、FM局でAM局で、なぜかハッキリと違いがある。
そんなことを考えていたら「音楽ジャンル」なんて言葉が、安っぽくもチンケにしか聞こえないほど懐が深く、どんな音楽ですらも、柔らかく包み込んでしまう最強のラジオ番組を発見した。
それは戦後間もない昭和27年にスタート。今年で放送開始60年を迎えるNHKの老舗ラジオ番組「ひるのいこい」(月~金曜=午後12時20分~、土曜=午後12時15分、NHKラジオ第1、NHK―FM)だ。
放送時間はわずかに10分。反射的に日本の牧歌的農村風景を思い出させてくれるテーマ音楽とBGMは巨匠・古関裕而の作品。放送開始以来まったく変わっていないそうな…。
農家の方々が、農作業の合間にほんの一服、いこいの時間を感じるための番組(前身の番組が「農家のいこい」だったことからの名残)というスタイルも変わらず。深夜の高聴取率番組「ラジオ深夜便」と同様、年配者向けというイメージを持つ人も多いだろうが、それは大間違いだ。
放送の10分間、トークと音楽はまったく途切れない。流される音楽は1曲目が邦楽系、2曲目がインスト曲(15分編成の土曜のみ、邦楽が2曲にインスト1曲)いう構成。それでいて全国の「ふるさと通信員」から届く、農業、漁業のタイムリーな話題、リスナーから寄せられた俳句や川柳までをも放送。この10分間、音楽と静かな口調を変えぬ喋り手が奇跡の融合を果たしている。
とにかく選曲が「お見事!」の一言。イメージ的に年配者向けの古い歌謡曲や演歌、いや浪曲や詩吟のほうが似合いそうなモノだが、さにあらず。季節に合ったあらゆる音楽が「音楽のジャンル分けなど愚の骨頂」とばかりに、牧歌的な古関裕而作曲のテーマ曲、BGMと見事な融合を果たす。
一見、ミスマッチとも思える音楽もかかるが、NHKのベテランアナウンサー(月~金曜が佐塚元章アナ、土曜が鎌田正幸アナ)による円熟の語り口によって、すべての音楽を〝ひるのいこいワールド〟へと内包してしまう。これぞ「最強のDJテク」ではなかろうか? かの名作「空手バカ一代」において、最強最大の強敵だったのが、筋肉ムキムキの巨漢プロレスラーやプロボクサー
ではなく、枯れ木の如く物静かで小柄な陳老人(太極拳)だったかのように…。
参考までに4月16日(月曜)から4月21日(土曜)までにかけられた邦楽を羅列してみると「風に吹かれて行こう」(やまがたすみこ)、「風は南から」(長渕剛)、「私のハートはストップモーション」(桑江知子)、「東京の灯よいつまでも」(新川二朗)、「ラストシーン」(西城秀樹)、「花嫁」(はしだのりひことクライマックス)、「加茂の流れに」(かぐや姫)といった選曲。4月10日には安岡力也さん追悼で「ついておいで」(シャープ・ホークス)もかけられていた。
時代や流行に流されない老舗番組には、ジャイアント馬場さんの名言「すべてを含んだモノがプロレスである」に通ずる懐の深さがある。「ひるのいこい」はすごいぞ!
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