とがめを受けて解任されても、その後の職探しの妨げにならない米ハイテク企業のトップはいるようだ。
今年5月に学歴詐称疑惑で米インターネットサービス大手ヤフーの最高経営責任者(CEO)を辞任したスコット・トンプソン氏(54)が23日、フィイラデルフィアに本拠を置くオンラインショッピング新興企業ショップランナー(ShopRunner)のCEOに指名された。
同氏はヤフー辞任後わずか数カ月で、古巣とも言えるオンライン取引業界に復帰する。同氏は、ヤフー入社前はオンライン競売大手イーベイの決済子会社ペイパルの社長だった。また今年1月にヤフーCEOに抜擢されるまで、ショップランナーの社外取締役だった。
関係筋によれば、トンプソン氏はヤフー辞任前、同社取締役会に対し、甲状腺がんと診断されて治療を受けていると述べていた。しかし同氏と話をした2人の関係者によると、同氏は数週間ほど前に完全健康証明を受け取ったという。
ショップランナーの広報担当者は、トンプソン氏はCEO指名について記者団に話すつもりはないと述べた。またトンプソン氏自身もコメントの求めに応じなかった。しかし同氏は声明で「ショップランナーに入社することは、同社が既に確立している強固な基盤に立って活動できる絶好の機会だ」と述べた。
著名なシリコンバレーの企業トップでネガティブな話題の的になって失脚したあと、急速に復権した人物はトンプソン氏だけではない。例えばマーク・ハード氏は2010年半ば、女性契約社員との個人的関係の発覚でコンピューター大手ヒューレット・パッカードのCEOを辞任したが、その直後に企業向けソフト大手オラクルの共同社長に抜擢された。
トンプソン氏の場合は、学歴詐称について全く知らなかったとの同氏自身の主張と矛盾する証拠をヤフー取締役会が入手したため、辞任に追い込まれた。
ショップランナーのマイケル・ゴールデン社長はインタビューで、同社は過去数カ月間、入社問題でトンプソン氏と話し合っていたと述べ、CEO指名について同社の小売パートナー各社と相談したと語った。これらパートナーは同氏のCEO就任案に「総じて興奮していた」という。ゴールデン社長は「(学歴詐称問題の)真相がなんであれ、スコット(トンプソン氏)はわが社のCEOにふさわしい」と語った。
ショップランナー株を約70%保有しているキネティック社のマイケル・ルービンCEOも、「スコットは常にわたしの選択ナンバー1だった」と述べ、「彼を大いに信頼している」と語った。またヤフーで失脚したことは「懸念要因ではない」とし、長くショップランナーで働いてくれると期待していると語った。
ショップランナーの顧客は年間79ドル、あるいは月間8.95ドルの入会費で、玩具大手トイザラスやカジュアル系ファッションブランドのアメリカン・イーグル・アウトフィッターズなど小売業者60社以上から2日以内の無制限商品配達(および無料返還)のサービスを受けられる。このサービスは2年近く前に始まったもので、同じく年間79ドルで商品を2日以内で配達するとしているアマゾンの「プライム」プログラムに対抗している。
ショップランナーは、同社会員が昨年、小売パートナー各社から購入した商品は総額1億ドル以上に達したと述べている。
トンプソン氏は以前、イーベイの代表としてショップランナーの社外取締役を務めていた。キネィックのルービンCEOによると、イーベイはショップランナーに約30%出資している。