谷垣自民総裁:消費増税の3党合意見直しなら不信任案提出も (1)
7月24日(ブルームバーグ):自民党の谷垣禎一総裁は、参院で審議中の消費税増税を柱とする社会保障と税の一体改革関連法案で民主党が自民、公明両党との3党合意を見直す再修正を提起した場合は野田佳彦首相に対する衆院での内閣不信任決議案や参院での問責決議案を提出する可能性を示した。
23日のブルームバーグ・ニュースのインタビューで語った。谷垣氏は法案の再修正について「中身によるとは言っているが、民主党内対策のためにやるとなると、オーケーというより、『それなら話は全部ちゃらだ』となる可能性が高い」と語った。その場合の衆院への内閣不信任決議案提出について「可能性もある」と指摘した。
民主、自民、公明の3党は一体改革関連法案について政府案を修正することで合意。法案は6月26日に衆院を通過したが、小沢一郎氏ら衆参で計50人以上の議員が相次いで民主党を離れ、野田首相の政権基盤は弱体化している。党内では衆院での法案採決に反対した鳩山由紀夫元首相らが消費税研究会を発足させ、なお3党合意の見直しを求めている。
谷垣氏は民主党からの離党の動きが相次いでいることについても「まだいろんな人が見切りをつけて出ていくような状況が噂され、野田首相は物事を推し進めようとしても進める力がなくなってくる。場合によっては3党合意も進められない可能性があり、その時にはいろいろなことを考えなければいけない」とも語った。
衆院解散テンプル大学(東京)のジェフ・キングストン教授は、「谷垣氏と自民党にとって、衆院解散を仕掛けるには絶好のタイミングだ」と分析。「鍵を握るのは自民党が不信任案に賛成するかではなく、他党からの賛同者を集められるかだ」とも指摘した。
衆院の定員は480人(欠員1人)だが、民主党と連立政権を組む国民新党の会派で合わせて254人を占める。参院では定員242人のうち、与党会派に所属する議員はすでに民主党に離党届を提出して新会派結成を表明している谷岡郁子議員ら3人を除くと91人にすぎない。一体改革関連法案成立には自民党の協力が不可欠だ。
一体改革関連法案は、消費税率(現行5%)を2014年4月に8%、15年10月に10%へと引き上げることが柱。野田首相は衆院解散の前提として赤字国債を発行するための公債発行特例法案の成立を挙げるが、谷垣氏は野田政権への協力は一体改革の「3党合意まで」と言い切る。
谷垣氏は公債特例法案への対応について「3党合意が国会をもし通ったならば、ただちに解散する。自民党がいろいろ支えていくというのは、どこかで信を問わない限り、ずるずる続けるというのはいけない」と述べ、衆院解散前の協力に否定的な見解を示した。具体的な解散時期に関しては「少なくとも8月中に解散をやっていかなければいけない。早ければ早いほどいい」と語った。
日銀法改正自民党は5月、次期衆院選に向けた政策集「日本再起のための政策」を公表し、経済政策では「デフレからの脱却を最優先」する方針を打ち出した。「物価目標2%」に向けた日銀法改正と思いきった金融緩和も明記している。
谷垣氏はこの政策集と衆院選公約との関係について「最終版ではなくて議論のたたき台」と説明。日銀法改正を最終的な公約に掲げるかどうかについては「もう少し慎重に議論を詰めていく必要がある。金融政策、財政政策の方向性、全体像がよく目に見えるには何をしたらいいのかという大きな枠組みの中で考えていく必要がある」と述べるにとどめた。
市場介入谷垣氏は67歳。2009年の衆院選後に自民党が下野した後に党総裁に就任した。小泉純一郎政権で財務相、福田康夫政権で党政調会長などを歴任し、政策通としても知られる。
急激な円高に対して政府・日銀が為替市場に単独でも円売り介入を行うことについては「ファンダメンタルズと違う動きがある時は介入する、そのスタンスを日本の金融政策として捨てることはない」と排除すべきではないとの認識を示した。ただ、「国際的な理解がある場合とない場合では効果が違う。国際的な理解をつくっていく努力をしないといけない」とも指摘した。
24日午前の東京外国為替市場では、ドル・円相場が1ドル=78円台前半で推移している。
9月の自民党総裁選への対応については「政権を野党党首が取り戻すという時に、『自分は途中で降りるよ』という選択肢はあるはずはない」と語った。ただ、「問題はそれまでにやるべきことをやるということだ」とも述べ、当面は野田政権を解散に追い込むことに全力を挙げる構えを示した。
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更新日時: 2012/07/24 14:08 JST