官邸現場介入は不適切と批判7月23日 23時11分
東京電力福島第一原子力発電所の事故を巡って、政府の事故調査・検証委員会の最終報告では、総理大臣官邸の現場介入について「政府や官邸が陣頭指揮を執るような形で現場の対応に介入することは適切ではない」と批判しています。
このうち、事故翌日に菅前総理大臣が福島第一原発を視察したことについては「総理大臣が長時間にわたって官邸を離れ、危険が伴う現地視察を行い、緊急対応に追われていた現地を訪れたことについては、ほかの代わりになる人物を派遣して状況を確認するなど、より問題の少ない方法によるべきではなかったのか」と疑問を呈しています。
また、水素爆発を起こした1号機への海水注入を巡っては、海水を入れた場合に再臨界が起こる可能性を原子力安全委員会の班目委員長が否定しなかったため、菅前総理大臣が再臨界の可能性があると受け止め、海水注入の是非を検討させたと指摘してます。
この直後に、官邸に居た東京電力の幹部が、当時の吉田所長に電話し、海水注入を待つように要請しますが、最終報告では、「海水注入のような事柄は、現場の状況を最も把握し専門的知識がある事業者の責任で判断するべきもので、政府や官邸が陣頭指揮を執るような形で現場の対応に介入することは適切ではない」と批判しています。
一方、東京電力の撤退問題については、本店と現地の免震重要棟を結んだテレビ会議システムの録画を分析した結果などから「外部電源の復旧や消防車の手配など、事故対応を継続することが前提となる発言が繰り返されていて、全員の撤退を考えていたと認めることはできない」という見方を示しています。
そのうえで「当時の清水社長の説明のしかたが原因で、海江田経済産業大臣や枝野官房長官との間で認識のそごが生まれた可能性は否定できないが、具体的にどのような説明をしたのかや、なぜ認識の違いが生じたのかは十分、解明するに至らなかった」としています。
また、政府の情報提供の在り方については、総理大臣官邸が、原子力安全・保安院や東京電力に対し、記者発表の事前了解を求めたことから、発表が遅れたり、説明内容が変わったりすることにつながったとしています。
そのうえで、最終報告では「政府や東京電力が何か隠しているのではないかと国民の疑惑や不信を招き、非常災害時のリスクコミュニケーションの在り方として適切なものではなかった」と指摘しています。
菅前首相“真摯(しんし)に受け止め反省”
民主党の菅前総理大臣は、「政府の事故対応について、多くの問題点が指摘されているが、当時、原子力災害対策本部長を務め、事故対応の最高責任を負う立場にあった者として、真摯に受け止め、反省すべきものと考える。今回の原発事故において、最も深刻だった3月15日未明からの『東電撤退』を巡る動きに関して、その経緯を詳細に分析するとともに、政府と東電の統合本部の設置により情報収集が大きく改善されたと指摘している点は、事実関係を適切に認識しているものと受け止めている」というコメントを出しました。
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