夫婦の離婚に際し、財産分与(離婚に伴う財産の移転)、養育費、慰謝料の額や未成年の子がいる場合の親権者、面接交渉等の条件に関して取り決めをする必要があります。
このうち、法律上離婚に際して必ず決めておかなければならないのは未成年の子の親権者についてのみですが、それ以外の事項についても、離婚成立前に決定しておき、離婚後に紛争が起きないようにすることが原則です。
もっとも、離婚するか否かを決めるだけでも悩ましいなか、種々の事項を話し合うのは、相応の労力が必要です。まとまらない交渉にしびれを切らし、不本意な条件で合意する方もいます。夫婦間の協議に弁護士を入れることに抵抗のある方もいるかもしれませんが、当事者の方の精神的負担を和らげるためには、弁護士の関与は有用です。
また、少しでも有利な条件で離婚を成立させ、妥当な解決を図るためにも、専門的知識と経験を有する弁護士に、お手伝いさせていただいたほうがスムーズです。
離婚前、離婚後のいずれのタイミングでも承りますが、慰謝料や財産分与には法律上の期間制限(離婚に伴う慰謝料は離婚から3年以内、財産分与は離婚から2年以内)があり、離婚後のご相談ですと、請求が間に合わない場合があります。特に、親権者は離婚時に取り決めておかなければならない事項ですので、離婚前にご相談をいただかないと有用なアドバイスをご提供することが困難となります(離婚後の親権者の変更も法律上は許容されていますが、当事者間の合意のみでは足りず、家庭裁判所の調停又は審判を経る必要があるため、相手方が反対する場合、変更は容易ではありません。)。
また、請求離婚に伴う生活の変化を踏まえたアドバイス、離婚の条件について有利に協議を進めるための準備をするには、できる限り早い段階でのご相談をお勧めします。離婚を迷っている段階でも結構です。
当事務所は、依頼者様のお話をじっくりお聞きし、関連書類を精査することで、その事案ごとに条件面の決定に影響を与える事情を判断します。そのうえで、調停、訴訟になった場合の有利不利を見据えて交渉方針を決定していきます。また、離婚後の紛争再発防止の観点を踏まえつつ、適正な離婚条件の取決めのほか、依頼者様の利益の確保のために最善を尽くします。
離婚及び離婚条件は、(1)当事者間の協議(弁護士が一方当事者を代理する場合を含む。)、(2)家庭裁判所での調停、(3)審判、(4)訴訟のいずれかで決定されます。
調停は、家庭裁判所において、話し合いで進められる手続きです。裁判所の1室で、2名の調停委員が当事者を交互に呼び、当事者から事情や意見を聞き、あっせんを図ります。なお、調停委員は中立の立場ですので、当事者の利益をはかるために助言をする立場にはありません。
訴訟では、当事者自身が出頭しなければならない場面は減り(無論、出頭を希望される場合は出頭できます。)、代理人の弁護士が事務的に手続きを進めることも可能となります。
協議の開始から最終的な解決までの期間は事案により異なります。当事務所は、できる限り迅速かつ適正な解決を図るための工夫も凝らします。たとえば、調停は当事者間の合意を探る場ですので、当事者の主張に乖離が大きい場合や多数の項目を調停事項にしている場合は、調停の回数が増え、調停の成立(あるいは不調となる)までに長期間かかってしまうことがあります。そのため、相手の交渉態度によっては、合意しやすい事項のみを調停で話し合い、通常の裁判手続を利用できる部分については訴訟に委ねるなどして、当事者の方の出頭の負担が大きくならないようにすることが考えられます(例:離婚自体と養育費の額にはあまり争いがないものの、相手方配偶者がその不貞行為に基づく慰謝料の支払いに合意しない場合に、あえて調停の段階で全ての条件を決定することを避け、離婚と養育費のみを調停で合意し、その後、元配偶者に対して通常の訴訟を提起して慰謝料を請求するといったことが考えられます)。
(1)財産分与
婚姻中に夫婦が協力して築いた財産を、夫婦間で分け合います。どちらか一方の配偶者の名義となっている財産であっても、実質的に他方の配偶者の協力を得て維持・形成されたものは、分配の対象となります。当該協力は金銭的なものに限られません。一方配偶者に金銭収入がない場合でも、他方配偶者の収入に対して家事労働による貢献があったとして、財産分与を求めることができます。
財産分与において考慮される財産、事由(主要なもの)
対象とならない財産
一般的には、財産分与の割合は、2分の1(財産分与の対象となる財産を夫婦で均等に分ける)が原則的な基準であるものの、事案ごとに具体的な貢献の度合いが考慮されます。例えば、一方配偶者が非常に高い収入を得ている場合で、その収入の高さがその人の能力や長時間労働に支えられたものである場合、つまり、他方配偶者に同程度の寄与があるとは考えにくい場合には、寄与が5割を下回ると判断されやすくなります。共働きの夫婦で一方配偶者のみが家事労働に従事していた場合等は、家事を担当していた配偶者の寄与が高いと判断されると考えられます(後者の例で、妻側の寄与を6割と認めた裁判例があります)。
(2)離婚慰謝料
婚姻破たんによる精神的損害を慰謝するために支払われる金銭です。離婚原因を作った責任のある側から、もう一方の配偶者に対して支払われます。受取り側に落ち度があるときは、過失相殺されます。
夫婦双方に離婚原因がある場合には、慰謝料は生じないこともあります。単なる性格の不一致が離婚の原因でどちらにも落ち度がない場合には、慰謝料は請求できません。
慰謝料の相場を明示するのは困難ですが、東京家庭裁判所の統計によると、同家裁で審理された裁判(平成16年4月から平成19年3月までの3年間に終結したもの)で慰謝料の支払いが認められた額は、概ね300万円以下です(320件中、100万円以下が86件、100万円超200万円以下が81件、200万円超300万円以下が79件で、300万円以下で76%を占めます。)。
(3)養育費
子どもの扶養のために支払われる金銭です。養育費の額は、支払う側の経済水準のほか、受け取る側の生活水準なども考慮して定められます。
東京家庭裁判所と大阪家庭裁判所では、「養育費算定基準」が定められており、参考資料として利用されています(上記2カ所以外の家庭裁判所においても、一定の意義を有しています。)。これは、養育の必要な子の人数、年齢、夫婦の所得を考慮要素として、簡易に養育費を定めるための基準です。
当事者が協議、調停等で算定表とは異なる金額で合意することは自由ですが、裁判所が判断を示す場合(審判、訴訟)、特別の事情がない限りは、上記算定表に従った金額に決定されるのが通常ですので、算定表のとおりでは実情に反する場合は、積極的に主張立証する必要があります。
(4)親権
未成年の子がいる場合、離婚に際して夫婦のどちらが親権者になるかを決定します。
当事者間の協議で親権者が決まらない場合は、調停または審判の申し立てを行います。裁判上の離婚の場合は、裁判所が夫婦の一方を親権者と定めます。
近年、男性の育児に対する意識の高まりから、親権を希望する父親が増えています。もっとも、裁判実務上は、子どもが幼いほど母親が親権者(または監護者)に決定されやすいのが実情です。親権を希望する男性は、自らが親権者になることがお子さんの福祉にかなうことを積極的に示していかなければなりません。
(5)面接交渉
子どもを引き取らなかった親が、離婚後に子どもと会う機会を持つことです。事情によっては面接交渉が許可されない場合もあります。
婚姻中の家庭の生活費の負担が相手方配偶者に大きく偏っていた場合、離婚後の一方配偶者の生活が不安定化しやすいことは否めません。元の配偶者から財産分与や養育費が支払われるとしても、満足のいく水準に至らない場合や、養育費の支払いが滞ってしまう場合があります。
離婚を決める前に別居等を経て離婚後の生活設計を具体的に行うことも有用です。
配偶者暴力(ドメスティック・バイオレンス、DV)の問題は、年々深刻さを増す一方です。全国の女性センター(女性相談センター、婦人相談所など各地で呼称は異なります。)に対する相談件数も増加の一途です。
DVは、最も身近な配偶者から受ける被害であるために、なかなか明るみに出ない一方で、身体・生命に対する重大な侵害を招く可能性も高い危険な行為です。
DVでお悩みの場合は、すぐにお近くの女性センターや警察に相談して、シェルターに避難するなど、身の安全を図ることが第一です。
DV防止法によって、裁判所から加害者に対し、被害者やその親族への面会や電話等を禁じ、または共に居住する住居からの退去を命じる等の保護命令を発してもらうこともできます。保護命令の違反者はそれ自体で刑事罰の対象となることから、非常に効果が大きいといえます。もっとも、保護命令を得るまでに少なくとも数日(場合によって数週間)を要するので、緊急性の高い場合は、まず避難することを考えるべきです。
当事務所は、相手方配偶者に秘密の相談や、保護命令の申立てはもちろん、別居中の相手方配偶者に住所を知られないようにしながらの調停申立て、不払いの婚姻費用や養育費の支払いの請求及び執行の申立等、DVに苦しむ方へのサポートを行っています。