訟などの紛争が起きたときに、弁護士が過去に締結された契約書や合意書を拝見すると、本来規定しておくべきことが規定されていない、あるいは規定があっても文言が不明確で内容が不明である等、多くの問題に気づくことがあります。契約書等に不備があると、契約締結時には主張できると考えていた権利が認められなかったり、本来は紛争解決基準となるべき契約書がその機能を果たさなかったりという、問題が事後に生じる可能性が生じます。
そのような契約書が作成されている原因としては、これまで日本社会では長期的な信頼関係が重視され、いざ問題が起きたときでも話合いでの解決がはかられてきたため、必ずしも契約書通りに問題が処理されてこなかったことが考えられます。
しかしながら、常に話合いで紛争を解決できるとは限りません。むしろ近時の訴訟の増加傾向を見ると、話合いでは解決できない紛争が増えているものと思われます。特に、グローバル化の進展とともに今後も国内企業と海外企業との取引が増えていくものと思われますが、欧米企業に対して日本企業と同じような紛争解決プロセスは決して望めません。仮に話合いで解決するとしても、契約書上の権利関係が明確になっていれば、交渉の道筋も自ずと明らかになります。
いざ訴訟になったときも、裁判所が現実に最も重視する証拠は書面であり、特に企業が当事者として締結された契約に関する紛争の場合、裁判所は当事者が十分検討の上契約を締結したものと考えて、契約書記載の文言を重視する例が少なくありません。従って、契約書を作成するときは、十分に文言を検討する必要があります。
また、契約を締結する際は取引が順調に進むことを想定し、失敗した場合のことをあまり考えないことが世の常ですが、新たな取引を行う時こそ、冷静にリスクの所在を分析し、当事者であるお客様がどのようにそのリスクを負担することになるのかを検討する必要があります。当事務所では、お客様のビジネスの内容をよくお聞きして理解したうえで、どのようなリスクがあるのかを洗い出し、これを契約書に反映させるように努めます。