【コラム】韓国の患者と米国の患者

 病院に長期間入院するのを制限する方法もない。患者が支払う大部屋の入院費や食事代を合わせると、1日に1万ウォン(約700円)ほどだ。外来患者の医療費はタクシー代よりも安い。民間の医療保険の加入者は入院手当も受け取れるため、患者が早く退院する理由はない。米国では、医師が退院を決定した後、保険が適用されなくなる。高齢者は患者1人当たりの最長入院期間が決められており、この基準を超えた場合、入院費の負担が大幅に増える。

 だが韓国では、質の良い医療を受けるための選択には盲点が多い。手術を受ける病院を決める際にも、医師の手術の実績を知ることができないため、苦労して探し回るか、評判に頼らざるを得ない。多くの患者が訪れる大きな病院の医師でも、皆が優秀で素晴らしい医師というわけではない。医師にわいせつ行為の前歴があるか、医療をめぐる訴訟が起こされているか、不当な治療で免許を停止されたことがあるかといったことについて、情報が公開されていないため、選択に当たっては常に不安を感じている。

 診察時間も患者が選ぶことはできない。自分の生命に直結することなら、診療費をより多く負担してでも、医師と十分に話し合いたいところだが、それも不可能だ。タクシーの料金は距離に応じて加算されるが、このような制度が医療機関にはない。白内障の手術を受ける患者は、人工レンズを選択することができない。自動車のタイヤを選ぶことはできても、自分の目に一生装着することになる水晶体は選べないというわけだ。

 医学は科学だが、医療は文化だ。医療をめぐる過剰消費は結局、健康保険の財政悪化につながり、全ての患者たちに損害を与えることになる。量的過剰に対する適切な規制と、質的な面での選択権の拡大は、韓国の医療文化が抱えている宿題といえる。

金哲中(キム・チョルジュン)医学専門記者(医師)
前のページ 1 | 2 次のページ
<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c) The Chosun Ilbo & Chosunonline.com>
関連フォト
関連ニュース