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 論説 :  山陰法科大学院/法曹養成の拠点を守れ
 新しい法曹養成を目指した法科大学院が曲がり角に差し掛かっている。入学者が定員に満たない大学院が全体の9割近くに達し、学生募集を停止するところも相次いでいる。

 山陰では唯一の法科大学院である島根大大学院法務研究科(山陰法科大学院)でも今春の入学者が過去最低の3人と定員20人を大きく下回り、このままでは存続が危ぶまれている。

 法科大学院を開設した後、期待されたほど法曹の仕事が増えず、弁護士が過剰となっているためである。多額の学費と勉学努力を重ねて法曹資格を取得しても、十分報われない現実が待ち構えているからだ。

 企業の法律実務などを担う法曹需要の増加を見込んでスタートした法科大学院だが、理念先行で現実がついてこない。その矛盾に集中的にさらされているのが島根大など地方の法科大学院である。

 入学者が大都市の有名大学に集中し、その一方でほとんどの地方大学に定員割れが広がっている。全国の法科大学院73校のうち今春入学者が定員を満たしたのは、一橋、京都、神戸大など国立大を中心に10校。島根大や新潟大など国立大では5校が定員の半数に満たなかった。

 これについて島根大大学院法務研究科の藤田達朗科長は「大都市の有名大学が大きな定員を抱え込む状況を変えない限り、根本的な解決は難しい」と定員格差の是正を訴える。

 270人の全国最大の定員を抱える早稲田、中央大法科大学院に対し、最小15人の鹿児島大などとの格差はあまりに大きい。法科大学院卒業者を対象にした司法試験の合格者も定員の多い有名大学で多く占められている。

 司法試験の合格実績に応じて学生が集まるのは自然であり、合格実績の格差が定員格差を生み出す格差スパイラル。それを食い止めるべきなのか、それとも受験者の選択による「淘汰(とうた)」にまかせるべきなのか。

 懸念されるのは、この状態を放置しておけば島根大の法科大学院が存廃の岐路に立たされかねないことである。山陰から法曹養成機関が消えかねない。

 その事態は何としても避けたい。島根大に法科大学院が開校したのは、多様な法曹人材を地方で育てるという理念に基づく。

 多様というのは、大学で法律を学んだ人だけでなく社会生活の経験を生かしたい人たちも受け入れる。そのことによって地域でリーガルマインド(法的思考)を育てるという意味である。

 きれいごとのようだが、島根大に法科大学院が開設されたことで島根県内の弁護士不足が解消された現実がある。

 2004年に開校以来、16人の司法試験合格者を出し、開校前の03年当時23人だった県内の弁護士は現在63人に増えている。県西部では弁護士がいない空白時代があったが、その弁護士過疎も解消された。

 その貢献は正当に評価されなければならない。しかし大都市の有名大学に入学者が集中する影響を強調するだけでは展望を切り開けない。

 法曹を目指す人たちにとって魅力のある学びの場をどう構築していくか。地域の弁護士による実践教育の協力を得ながら、法曹養成の拠点を守りたい。

('12/07/16 無断転載禁止)

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