生きられる社会へ:生活保護の今 「不正受給」取り締まっても 保護必要な人は減らない
毎日新聞 2012年07月23日 東京朝刊
「生活保護が信頼される制度であることは重要だ。だが、不正受給ばかり強調されれば、困窮していても、真面目な人ほど他人の目を気にして保護を申請できなくなってしまう」。CWの指導役「査察指導員」を務めたことがある都内の区職員(54)は懸念する。福祉事務所の前を何日も行ったり来たりした末、やっと申請に来る人は多い。
では、働く意欲がない人についてはどう考えればよいのか。
働く意欲がない人の背景には、心を萎えさせる厳しい就職活動の経験があったり、酒やパチンコに溺れる人は依存症など病気だったりする。「生活に困窮するなかで性格がゆがんでしまった人や、話が通じない人もいる。CWは大変だが、受給できなければ命にかかわる」
こうした人たちを自己責任論だけで片付けても、生活保護からの脱却にはつながらない。この職員は、受給者と一緒に生活に困窮した理由と向き合い、共感を示しながら今後の人生設計を考える対応を心掛けてきた。「信頼関係を築くことが不正防止につながる」という信念からだ。
「窓口に来る人を疑うような仕事は福祉の職員がやることじゃない。支援して保護から脱却できる仕組みを作ることの方が重要です」=随時掲載します