生きられる社会へ:生活保護の今 「不正受給」取り締まっても 保護必要な人は減らない
毎日新聞 2012年07月23日 東京朝刊
この条項に基づく「不正受給」の件数は、10年度で2万5355件。06年度から5年間で1・7倍になった。ただ、受給者の数自体も増えているため、不正の発生率は1・36%から1・80%と、微増にとどまっている。不正額は増えているが、支給額全体に占める不正の割合は、06〜10年度を通して0・3%台と、ほぼ横ばい状態だ。
生活保護の受給者は、給与や年金、保険金などの収入があれば、自治体に報告する義務がある。収入の一部を控除して、相当額が保護費から減額されるのだ。
不正受給の過半数は、この義務に違反し、働いて得た収入を申告していない(10年度43・5%)か、少なく申告した(同8・1%)ケース。これに続くのが各種年金の無申告(同27・7%)で、高齢化に伴い増えている。
不正のほとんどは、課税証明書と収入の自己申告書との突き合わせで判明する。源泉徴収された収入や年金は、受給者が申告しなくても、課税証明書に明記されるためだ。
もっとも、これらの不正には、受給者の息子や娘による「小遣い稼ぎ」のアルバイト収入を、親が把握していないなどのケースも含まれる。保護を申請した時にもらっていなかった企業年金を申告しそびれるなど、悪意がない事例も少なくない。