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2012年7月23日(月)付

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著作権法―利用者の声を、もっと

文化を豊かにするためには、その利用者の声も大切だ。少し大げさに言えば、今の日本に暮らしていれば、著作権という言葉を聞かない日はない。本も映画も、音[記事全文]

返還15年―香港らしさを大切に

英国の植民地だった香港が、中国に返還されて今月で15年が経った。中国は、自由や活気といった「香港らしさ」をこれからも大切にしてほしい。それは香港の発展、ひいては中国の発展にもつながるはずだ。[記事全文]

著作権法―利用者の声を、もっと

 文化を豊かにするためには、その利用者の声も大切だ。

 少し大げさに言えば、今の日本に暮らしていれば、著作権という言葉を聞かない日はない。

 本も映画も、音楽も絵画もテレビドラマも、ほとんどが著作権法で言うところの著作物にあたる。子供からお年寄りまでが利用者になっている。

 その著作権がさらに注目を集めている。背景には、急速なデジタル化やネットの広がりがある。デジタル化された表現は、電子書籍のように扱いが簡単だし、劣化することなく瞬時に複製を作ることができる。大きな魅力である一方、海賊版が広がるなどの問題が生じている。

 1970年に定められた著作権法も改正されてきた。今の国会では、自民党や公明党の議員立法によって、海賊版をダウンロードした場合に罰則が科されることになった。

 これまでの改正は、組織力も資金力もある音楽や映画、出版などの業界や著作権団体が、政治家や行政に働きかけた例が多い。今も電子書籍化に対応し、出版社のための権利を新たに設けようとする動きがある。

 著作権法について話しあう文化審議会の分科会も、利用者代表は30人中で数人にとどまる。

 著作者やその継承者の権利を強める動きに、利用者の立場が十分に反映されているとは言いがたい。無法な複製は許されないが、あまりに制限されていると感じられるのも、息苦しい。

 今回の法改正で、著作物を利用しやすくする新規定が盛り込まれたが、わずかにとどまる。パロディーを法的にどう扱うかの議論も始まったばかりだ。

 著作権をめぐるビジネスは国際化し、環太平洋経済連携協定(TPP)でも取りあげられる可能性がある。著作者が亡くなってから何年間権利を守るのかという保護期間を、現在の50年から米国並みの70年に延ばすべきだといった議論がある。

 絵画の模写や、和歌の本歌取りなど、文化は「まね」を通じて継承、発展してきた。広く利用者の声を吸い上げる仕組みをつくることが欠かせない。

 著作物に誰もが日常的に接するのが現状なのだから、開かれた国民会議のような場で話しあってはどうか。その結果を、政治家や行政にきちんと届け、文化を育てるようにしたい。

 著作権法は、その目的を「公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与する」と掲げる。表現者たちの創造力とともに利用者を大切にしてこそ、発展がある。

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返還15年―香港らしさを大切に

 英国の植民地だった香港が、中国に返還されて今月で15年が経った。中国は、自由や活気といった「香港らしさ」をこれからも大切にしてほしい。それは香港の発展、ひいては中国の発展にもつながるはずだ。

 社会主義の中国のもと、香港に50年間、高度な自治や言論の自由、市場経済を認める。「一国二制度」という、返還の大原則だ。

 1997年の返還前には、自由が奪われて重苦しい社会になる、といった見通しがしばしば語られた。89年の天安門事件の記憶も強く残っていた。

 幸いにして、そうした予想は裏切られ、劇的な社会の変化は起こらなかった。中国政府はおおむね慎重に、一国二制度を進めてきたと言える。中国経済は急成長を遂げ、香港は大きな恩恵も受けた。

 ところが、ここに来て、香港らしさが失われてしまうのでは、という不安が市民の間で強まっている。

 記念日の1日には、民主化を求める大規模なデモがあり、主催者発表で約40万人(香港大学の推計では約10万〜11万人)が参加した。人口約710万人の香港では大きな数字だ。

 背景にあるのは、中国の影響力が強まっている、という実感だ。3月にあった香港政府のトップ、行政長官の選挙では、中国政府が票のとりまとめに動き、親中派の実業家、梁振英氏(57)を当選させた。

 梁氏は中国政府と近すぎるとの見方も多く、支持率は5割ほど。香港より中国を優先させるのでは、と疑う人もいる。

 任期5年で、香港がどこに進むのか。試金石になりそうなのが、2017年の次期行政長官選の仕組み作りだ。

 これまでの長官選は、職域代表らで作る選挙委員会による間接選挙だった。委員は親中派が多く、中国政府のお墨付きがなければ当選できなかった。

 中国は、次の選挙は直接選挙に変更しても良いとしている。あらかじめ「指名委員会」が指名した複数の候補に対し、有権者が票を投じる。制度の細部は決まっていないが、多様な意見の人たちが立候補できる仕組みにすることが不可欠だ。

 香港はアジアの金融センターとして、中国の金融改革を引っ張る役割も果たしてきた。社会体制や政治面でも、中国が香港から学べることは多い。

 民主化デモには、中国本土からの参加者もいた。本土からは昨年、2810万人が香港を訪れた。香港での自由の体感が、中国の発展に役立てば良い。

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