第12-05-241号
掲載日:2012年 3月 5日
独立行政法人情報処理推進機構
技術本部 セキュリティセンター
IPA (独立行政法人情報処理推進機構、理事長:藤江 一正)は、2012年2月のコンピュータウイルス・不正アクセスの届出状況をまとめました。
(届出状況の詳細PDF資料はこちら)
1. 今月の呼びかけ
「 今なお続く、偽の警告を出すウイルスの被害! 」
2012年に入り、"ウイルスに感染している"、"ハードディスク内にエラーが見つかりました"といった偽の警告画面を表示し、それらを解決するためとして有償版製品の購入を迫る、「偽セキュリティ対策ソフト」型ウイルスの相談・届出が多く寄せられており、2月は特に、感染被害に遭った利用者からの相談(相談数24件の内、20件が感染被害の相談)・届出が目立ちました(図1-1)。
こうした相談や届出の事例として、「そのようなソフトウェアをインストールしていないのに、画面が出てきて勝手にパソコン内を調べ始めた。」という旨の内容が多く見られました。これらの事例では、「偽セキュリティ対策ソフト」型ウイルスを感染させる手口として、脆弱(ぜいじゃく)性を解消していないパソコンに対してウェブサイト閲覧時にウイルスを感染させる、ドライブ・バイ・ダウンロード攻撃が行われていました。
また、偽の警告画面に表示される製品名称は、正規のウイルス対策ソフト名に似せたものの他に、"System Check"、"RegClean Pro"など、パソコン内を診断するツールを連想させる名称となっており、利用者が元々使用しているソフトウェアとの判別がつきにくくなっていると考えられます。
以下では、2011年12月から2012年2月に届け出られた感染被害についての分析とウイルスの特徴を元に、被害に遭わないための対策を説明します。
図1-1:「偽セキュリティ対策ソフト」型ウイルス 感染被害届出件数
2011年12月から2012年2月に届け出られた感染被害12件について、ウイルス対策ソフトの使用有無を確認したところ、以下の結果となりました。
使用 |
11件 |
未使用 |
0件 |
不明 |
1件 |
図1-2:「偽セキュリティ対策ソフト」型ウイルスの検出数推移(2008年9月〜2012年2月)
図1-3:パソコン内をチェック中の画面
図1-4:問題解決を促す画面
図1-5:有償版製品の購入を迫る画面
万が一ウイルスに感染してしまった場合、一番の対処方法としてパソコンの初期化をお勧めしています。これは、"ドライブ・バイ・ダウンロード"攻撃などから感染被害に遭った場合、複数のウイルスに感染している可能性があるためです。(2)の例で示した"System Check"についても、何らかのプログラムをダウンロードしようとしていることがわかっています。
たとえ感染の症状が改善されたとしても、少しでもおかしいと感じることがあれば、データのバックアップを先に行ってからパソコンの初期化を行うことをお勧めします。
簡単に初期化ができない場合もあると思われます。その際は以下の対処で復旧を試みてください。
2月のウイルスの検出数※1は、15,804個と、1月の28,459個から44.5%の減少となりました。また、2月の届出件数※2は、833件となり、1月の941件から11.5%の減少となりました。
※1 検出数 : 届出にあたり届出者から寄せられたウイルスの発見数(個数)
※2 届出件数: 同じ届出者から寄せられた届出の内、同一発見日で同一種類のウイルスの検出が複数ある場合は、1日何個検出されても届出1件としてカウントしたもの。
・2月は、寄せられたウイルス検出数15,804個を集約した結果、833件の届出件数となっています。
図2-1:ウイルス検出数
図2-2:ウイルス届出件数
2月は、パソコン内に裏口を仕掛けるBACKDOORと、オンラインバンキングのID/パスワードを詐取するBANCOSという不正プログラムが、他の不正プログラムよりも多く検知されました(図2-3参照)。
※ ここでいう「不正プログラムの検知状況」とは、IPAに届出られたものの中から「コンピュータウイルス対策基準」におけるウイルスの定義に当てはまらない不正なプログラムについて集計したものです。
※ コンピュータウイルス対策基準:平成12年12月28日(通商産業省告示 第952号)(最終改定)(平成13年1月6日より、通商産業省は経済産業省に移行しました。)
「コンピュータウイルス対策基準」(経済産業省)
http://www.meti.go.jp/policy/netsecurity/CvirusCMG.htm
図2-3:不正プログラムの検知件数推移
ウイルスの中には、お使いのパソコンに感染した後、パソコン自身のDNS設定や、家庭内に設置したルーターのDNS設定を勝手に変更するものがあります。
DNS設定には、ウェブ閲覧などの際に参照するDNSサーバーのIPアドレスが記載されています。このDNS設定のIPアドレスを不正なDNSサーバーを指し示すものに変えることで、攻撃者はパソコン利用者の通信を不正なサイトへ誘導することが可能になります。
現在、欧米ではこのような悪さをする「DNS Changer」と呼ばれるウイルスが猛威を振るっているとの情報があります。実際の被害として、アドレスを正しく打ち込んだとしても実際には本来のものとは異なる別のウェブページが表示されたり、ウェブページ内に埋め込まれている広告バナーが悪意あるサイトへのリンクを含む広告バナーに勝手に入れ替わっていたりする事例が確認されています。
「DNS Changer」ウイルスに感染したまま放置した場合、もしくはウイルスは駆除したが、勝手に変更されたDNS設定を元に戻していない場合、上記のような予期せぬサイトへの接続などだけでなく、不正なDNSサーバーが停止させられたりすることで、ウェブ閲覧がすべてできなくなる恐れがあります。
日本では、現状では特に感染が起こっているとの報告はありませんが、今後は注意が必要です。
上記の症状が出ているなど、不安な点がありましたら、「情報セキュリティ安心相談窓口」までお問い合わせください。
9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 1月 | 2月 | ||
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届出(a) 計 | 7 | 15 | 7 | 7 | 8 | 13 | |
被害あり(b) | 5 | 8 | 5 | 7 | 7 | 9 | |
被害なし(c) | 2 | 7 | 2 | 0 | 1 | 4 | |
相談(d) 計 | 31 | 46 | 69 | 42 | 35 | 37 | |
被害あり(e) | 8 | 7 | 14 | 13 | 9 | 14 | |
被害なし(f) | 23 | 39 | 55 | 29 | 26 | 23 | |
合計(a+d) | 38 | 61 | 76 | 49 | 43 | 50 | |
被害あり(b+e) | 13 | 15 | 19 | 20 | 16 | 23 | |
被害なし(c+f) | 25 | 46 | 57 | 29 | 27 | 27 |
2月の届出件数は13件であり、そのうち何らかの被害のあったものは9件でした。
不正アクセスに関連した相談件数は37件であり、そのうち何らかの被害のあった件数は14件でした。
被害届出の内訳は、侵入7件、なりすまし2件でした。
「侵入」の被害は、ウェブページが改ざんされていたものが5件(内、フィッシングに悪用するためのコンテンツ設置1件)、侵入後にDoS攻撃の踏み台に悪用されていたものが2件でした。侵入の原因は、脆弱なパスワード設定が2件、phpMyAdminのバージョンが古かったものが1件、サーバーの設定不備が1件でした(他は原因不明)。
「なりすまし」の被害は、オンラインゲームに本人になりすまして何者かにログインされ、サービスを勝手に利用されていたものが1件、掲示板に管理者権限でログインされて勝手に内容を変更されたものが1件でした。
事 例 |
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解 説 ・ 対 策 |
被害届けの提出は、ゲーム運営業者側で行うことになりますので、まずはゲーム運営業者に問い合わせをしてください。場合によっては、警察に被害状況を申告するようにゲーム運営業者から指示されることもありますので、その際には最寄りの警察署に対処方法について相談してください。なお、ゲーム運営業者に問い合わせても、あまり良い対応を行ってもらえない場合は、最寄りの消費生活センターに相談することをお勧めします。 (ご参考)
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事 例 |
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解 説 ・ 対 策 |
インターネットにサーバーを公開する場合、悪意ある者に狙われて悪用されるかもしれない、ということを念頭に置いた対策が必要です。特に今回のようにウェブサーバーとして公開していなくても、一旦侵入を許すと悪意あるウェブサイトとして公開されてしまうケースもあります。 フィッシングサイトへの改ざんは外部からの指摘により初めて気が付くことが多く、発見の遅れが被害の拡大につながる恐れがあります。システム管理者は以下の対策を実施するよう心がけてください。 ・適切なパスワード設定と管理を行う ・脆弱性を解消する(OSだけではなく、ウェブアプリケーションなども忘れずに) ・外部からのアクセス制限やセキュリティ設定を適切に行う (不要なサービスは停止する) ・こまめなログの確認 ・可能であれば、ファイル改ざん検知システムの導入 (ご参考)
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2月のウイルス・不正アクセス関連相談総件数は1,073件でした。そのうち『ワンクリック請求』に関する相談が218件(1月:338件)、『偽セキュリティソフト』に関する相談が24件(1月:18件)、Winny に関連する相談が25件(1月:11件)、「情報詐取を目的として特定の組織に送られる不審なメール」に関する相談が2件(1月:4件)、などでした。
9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 1月 | 2月 | ||
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合計 | 1,551 | 1,496 | 1,420 | 1,312 | 1,302 | 1,073 | |
自動応答システム | 936 | 865 | 746 | 790 | 760 | 645 | |
電話 | 554 | 564 | 561 | 451 | 485 | 362 | |
電子メール | 52 | 55 | 102 | 65 | 49 | 62 | |
その他 | 9 | 12 | 11 | 6 | 8 | 4 |
(備考)
IPA では、「情報セキュリティ安心相談窓口」を開設し、コンピュータウイルス・不正アクセス、Winny 関連、その他情報セキュリティ全般についての相談を受け付けています。
メール | (これらのメールアドレスに特定電子メールを送信しないでください) |
電話番号 | 03-5978-7509 (24時間自動応答、ただし IPA セキュリティセンター員による相談受付は休日を除く月〜金、10:00〜12:00、13:30〜17:00のみ) |
FAX | 03-5978-7518 (24時間受付) |
「自動応答システム」 : 電話の自動音声による応対件数
「電話」 : IPA セキュリティセンター員による応対件数
合計件数には、「不正アクセスの届出および相談の受付状況」における『相談(d) 計』件数を内数として含みます。
図4-1:ワンクリック請求相談件数の推移
相談 | Windowsパソコンをシャットダウンしようとすると、「ほかの人がこのコンピュータにログオンしています」というメッセージが出てくる。何者かがパソコンに不正アクセスしているのではないか? |
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回答 | そのメッセージは、誰かがパソコン内の共有フォルダにアクセスしている場合や、別のユーザーから「ユーザーの切り替え」でログオンした場合に出てくるメッセージですが、それ以外に、自分一人だけ使用していても出てくる場合があります。簡単にいえば、自分を含め、ログオンしたままのユーザーがいるにも関わらずシャットダウンしようとした際に出るメッセージです。
例えば、パソコンの前から長時間離席してロック画面になり、そのままシャットダウンしようとすると、上記メッセージが出ることがあります。 |
相談 | 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)を差出人とした注意喚起メールを受け取った。 |
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回答 | あなたが受け取ったメールは、IPAからの注意喚起メールではありません。基本的に、IPAから不特定多数の方々へ注意喚起メールを送ることはしませんし、メールニュース登録者へファイルを添付したメールを送ることはしないというルールで運用しているからです。 (ご参考)
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一般社団法人JPCERTコーディネーションセンター:http://www.jpcert.or.jp/
@police:http://www.cyberpolice.go.jp/
フィッシング対策協議会:http://www.antiphishing.jp/
株式会社シマンテック:http://www.symantec.com/ja/jp/
トレンドマイクロ株式会社:http://jp.trendmicro.com/jp/home/
マカフィー株式会社:http://www.mcafee.com/japan/
株式会社カスペルスキー:http://www.viruslistjp.com/analysis/
独立行政法人 情報処理推進機構 技術本部 セキュリティセンター
TEL:03-5978-7591 FAX:03-5978-7518
E-mail:
(このメールアドレスに特定電子メールを送信しないでください)
URL:http://www.ipa.go.jp/security/