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SH-60KはSH-60J哨戒ヘリに代わり、対潜水艦能力、多用途性の向上が図られた次期哨戒ヘリコプターで、SH-60Jをベースに胴体や機種形状の変更などの機体改修と搭載機器の更新による能力向上が為されている。伝えられる特徴は以下のとおりである。
- 高性能化メイン・ロータ・システムへの換装
- 機体を延長してキャビン容積を拡大し、搭載可能乗員数を12名までとした。(SH-60Jは8名)
- 新型低周波アクティブ・ソナーの装備
- 僚機間データリンク機能
- 自動飛行制御装置の能力向上
- 着艦誘導支援装置の装備
- 逆合成開口レーダー(ISAR)等の装備による哨戒能力の向上
- FLIR(赤外線探知装置)の装備
- ミサイル・機銃等の装備によるASuW(対水上戦)能力の強化
- 自機防御システムの装備
SH-60Kを主に装備面から解説してみると、新規装備の目玉としてAGM-114Mヘルファイア2対艦ミサイルが挙げられる。このミサイルは新たに増設された延長パイロンに取り付けられたM299ミサイル・ランチャに搭載される。M299ミサイル・ランチャにはミサイルを最大4発まで搭載可能だが、グランド・クリアランスの関係上、SH-60Kに搭載されるのは2発形態のみである。
搭載ミサイルの候補としては、ノルウェーのペンギンや英国のシースクウェア等も候補となったらしいが、ペンギンでは大き過ぎ、シースクウェアはH-60系に搭載した実績が無いことからヘルファイア2が選定されている。AGM-114Mはヘルファイア2のファミリーに属し、弾頭がタンデム成形炸薬弾頭から爆風破片効果弾頭に変更されている。なお誘導方式はセミアクティブ・レーザー方式で射程は0.5〜9kmで弾頭重量は12.52Kg(27.6lb)程度あり、信管は着発遅延式で炸薬はPBX(Plastic Bonded Explosive)系炸薬が用いられている。破壊力としては50トン程度の小型艇を一発で撃沈でき、フリゲイト等の小型艦艇の戦闘力を奪うのには十分な威力を持っているとされ、地上目標においても軽装甲車両及びソフトスキン・ターゲット、建物等の固定目標の撃破にも使用できる。またAGM-114は以下のような特徴を持つ。
- セミアクティブ・レーザー誘導のため最大有効射程付近にて、目標・非目標間の距離が近い状況でも正確に目標を攻撃できる。
- 各種対艦ミサイルの中で最も低価格・低ライフサイクル・コスト
- 対悪天候性及びEOCCM(対光学妨害排除機能)
- 整備性、拡張性に優れる。
発射シーケンスはまずFLIRのAN/AAS-44-N1(米国レイセオン社製、富士通によりライセンス国産)で目標を発見する。(なおこのFLIRは自動目標追尾機能を持つ)FLIR画像はデータバスによりAHCDS(先進ヘリコプター戦闘指揮装置)を介してMFD(多機能ディスプレイ)に表示され、HFCCA(ヘルファイア・ミサイル管制装置)で射撃計算が為され、ウエポン・バスを通じてM299ランチャへ発射指示が為されると共にデジクネーターからレーザー・パルスを照射する。各ミサイルごとのレーザーパルスは異なっており、一つのデジクネーターで複数のミサイルを誘導できる。なおレーザーのパルス・コードはIFF(敵味方識別装置)のコードと共に緊急時には乗員の操作によるゼロ化(プログラムの全消去)が行えるようになっている。
新たに搭載される機銃は7.62ミリ口径のNATO弾を使用する74式車載機銃で、発射速度は毎分1,000発と700発の切り替えが可能、搭載弾数は普通弾なら200発程度である。機銃の搭載位置はキャビンドア入り口の補助座席の取り付け位置に一丁装備され、クイックリリースが可能。銃座は機内収納方式であり、射撃位置及び収納位置を固定できる。なお銃座を取り付ける際にはソナー巻き上げ機や補助座席などを取り外さなければならないが、SH-60Kに搭載されるソナーとソノブイ・シューターは専用支援機材により30分以内に取り外しが可能であり、柔軟な運用が可能となっている。ただ7.62ミリ口径では威嚇用位にしか使えないのではという懸念もあるようであり、関係者の間からはどうせ威嚇用だから全てえい光弾を積もうといった冗談も聞かれた。
搭載される逆合成開口レーダー(ISAR)ついての情報は少ないが、
米国テレフォニクス社のAN/APS-147が搭載されると思われる。国産のHPS-105Bが塔載されていることが判明しました。(三菱電機製で16年度契約単価は2億1,620万円)逆合成開口レーダー(ISAR)は別名イメージング・レーダーと呼ばれ、動揺による目標艦船のドップラー・シグネチャーを積み上げて映像化することが可能で、目標の類別・識別に効果を発揮することから、潜望鏡等の小目標の発見に威力を発揮する他に、目標情報を母艦へデータ・リンクすることによって母艦の長距離艦対艦ミサイルの運用を支援することができる。またSH-60Kでは生存性の向上の為、コクピットに防弾板が装備されるとともに、自機防御システムとしてミサイル警報装置(MMS)とチャフ・フレア発射装置(CMD)が新たに搭載される。MMSはEADS社製のAN/AAR-60が搭載されている。AN/AAR-60は紫外線による光学パッシブ型のミサイル警報装置で、高い角度精度、完全パッシブ、早期探知、低誤報確率、CMDとの連動可能と言った特徴を持っている。CMDはF-2と同じく、英国BAE社製のAN/ALE-47が搭載されている。CMDはテールコーン部に左右で合計3基取り付けられており、フレアが装填されたものは2基が左弦前部・右弦後部の前方下向きに、チャフが装填されたものは左舷前部に後方上向きに搭載されている。これはローターのダウンウォシュによってチャフが拡散することを意図しているからである。
SH-60Kの開発では納期の遅延など大幅にスケジュールが遅れたが、原因としては官民の調整不足による開発スケジュールの見通しの甘さと主契約会社の三菱重工業の人的リソース不足、H-60系ヘリコプターの開発会社である米国シコルスキー社の支援が金銭的な問題で受けられなかったことなどが背景にあるようである。