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前立腺がんの早期発見のために
連載 ８７
2009/04/01
前立腺がんの早期発見のために
以前は、前立腺がんは日本ではあまり多くみられなかったのですが、近年、最も増加しているがんの一つとして注目されています。
１９７５年の発症数は２千人程度だったものが、２０００年には約２万３千人に増え、来たる２０２０年には７万８千人にのぼると予測され、男性では肺がんに次いで多くなるだろうと言われています。
このような急激の増加の原因としては、まず、「日本人の高齢化」が挙げられます。
前立腺がんは主に60歳以上に多くみられ、特に80歳以上の男性では、半数以上に潜在性の前立腺がんがあると推定されています。
つまり、日本人の高齢化に伴い、前立腺がんが増えてきたと言えるのです。
また、「食生活の欧米化」の影響も大きく、穀類や野菜・魚介類が食生活の中心だった頃の日本には、前立腺がんはほとんどみられませんでした。しかし近年、動物性脂肪をたくさん摂るようになったことが、前立腺がん発症に影響を及ぼしていると考えられています。
特筆すべきは、「ＰＳＡ検査（前立腺特異抗原検査）の普及」です。ＰＳＡというのは前立腺に特異的なタンパク質のことで、健康なときにも血液中に存在していますが、前立腺がんが発生すると、大量のＰＳＡが血液中に流れ出します。血液検査によりＰＳＡ値が正常の値よりも高ければがんが疑われ、ＰＳＡ値が高くなるにつれてがんの確率も高くなっていくということになります。
このＰＳＡ検査のおかげで、それまでは発見することが難しかった、症状が現れない早期がんを発見できるようになったのです。
ちなみに基準値は50〜64歳が３ �帖伸性醗焚爾如�65〜69歳では３・５ �帖伸性醗焚次�70歳以上は４ �帖伸性醗焚爾箸気譴討い泙后�
４〜10 �帖伸性箸�いわゆるグレーゾーンで、25〜30％にがんが発見され、10 �帖伸性箸鯆兇┐襪�50〜80％にがんが見つかると言われます。この検査が普及したために前立腺がんの発見率が高くなり、早期に見つかるケースが多くなって、患者数が増えたとも言えるのです。
このＰＳＡ検査に保険が承認されたのは、私が和光市長の時代で、日本で初めて市民健診の中にこの検査を取り入れたことから、当時、ずいぶん話題になったものです。
その結果、驚いたことに大変多くの早期がんが見つかり、多くの患者さんの命を救えたことは望外の喜びでした。
ＰＳＡ検査は、現在も自治体や企業の健康診断に広く用いられていますが、臨床の現場でも前立腺がんの可能性がある人を見つける「スクリーニング検査」の主流になっています。
これによってがんが疑われた場合は、次に直腸診や超音波検査、ＣＴスキャンなどにより、がんの「確定診断」を行います。
ここでがんが確定されると「病期診断」を行い、がんの進行度（広がり）を確認し、それに即した治療が行われることになります。
また、最近、前立腺がんの患者から集めた尿、血清などから分離した、がんの指標になる物質を調査したところ、サルコシンというアミノ酸代謝物の一種が転移性のがんに多く見られるという研究報告がありました。
サルコシンは良性の組織にはほとんど見られず、局所がんの42％、転移性がんの79％に見つかったそうです。
ＰＳＡは、がんではないちょっとした異常や前立腺肥大の症例にも反応する難点がありますので、いずれは血液中のＰＳＡと尿中のサルコシンの両方を検査することで、より確実に前立腺がんの診断ができるようになることでしょう。
しかし、現段階ではサルコシン検査は研究段階で、早期の前立腺がんには自覚症状が現れないことを考えると、50歳以上の男性は、ＰＳＡ検査を実施している健康診断を、ぜひ定期的に受けて欲しいものです。
なお、朝霞厚生病院に難病外来を開設しております。治療が困難な病気でお悩みの方は当研究所が窓口になっていますのでご相談ください。（TEL０４８―４６１―２００９・担当金子まで）
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