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連載６９

2007/10/01

乳がんのホルモン療法も以外に副作用が強い

　先月は、乳がんの早期発見にはマンモグラフィー検診が不可欠という話をしましたが、今回はそれに関連して、乳がんのホルモン療法について一言触れたいと思います。
　
　乳がんの発病には女性ホルモンの分泌期間が長いことが大きく影響するといわれ、初潮が早い、閉経が遅い、初産年齢が遅い、または高齢で出産経験がないなどが、乳がんにかかりやすい条件としてあげられます。
また、高脂肪食、肥満などの関与も知られています。
　
　欧米に多い乳がんが日本で増えているのは、女性の社会進出など、ライフスタイルの変化や、食生活の欧米化の影響によるものと考えられます。
また、家族や親戚に乳がんにかかった人がいる場合も要注意といわれています。
しかし遺伝性の乳がん(乳がんにかかりやすい特定の遺伝子が親から子へ引き継がれる)はごくわずかで、体質や食生活など、環境要因の影響の方が大きいようです。
　
　乳がんの細胞は、本来乳腺から発生してきたもので、女性ホルモンの刺激を受けて「がん化」します。
ホルモン療法は、その乳がんの細胞に対する女性ホルモンの刺激を絶つことで、がんを押さえ込み、女性ホルモンが乳がんを増殖させる流れを食い止める方法です。　
　この療法は、切除したがんを調べ、ホルモン受容体をもつがん(女性ホルモンの影響を受けやすいがん)かどうかを検査し、受容体がプラス（+）の人の場合に適応となります。
　
　ホルモン剤には目的別にノルバデックス、トレミフェンや、ゾラデックス、リュープリン、アフェマ、アリミデックスなど、多くの種類が次々に開発されています。
　
　これらは主に女性ホルモン（エストロゲン）によってがん化が促進されないように働きますが、ほかにも、閉経前の女性で乳がんにかかった人には、卵巣からの女性ホルモンの分泌を止めて一時的に閉経後の状態にするタイプの薬や、閉経後の女性の場合は、脂肪組織内でエストロゲンを作る酵素があるので、その働きを止める作用の薬などがあります。
　
　平成13年２月に新しく発売されたアリミデックスは、アロマターゼ阻害剤という新しい作用を持つホルモン療法剤です。
このアリミデックスとノルバデックスとの大規模比較試験が行われ、アリミデックスは、ノルバデックスよりも無病率が優れているという結果が出ました。
　
　さらに、患部とは反対側の乳がんの発生率をノルバデックスは約50％抑える働きを持っていますが、アリミデックスはさらに50％抑制する効果が証明されました。ホルモン剤を飲まない人と比べると、約75％抑制することになります。
この事実から、閉経後に発病した乳がんの方々にはアリミデックスが多く使われるようになりました。
　
　副作用に関しては、一般的に抗がん剤よりは穏やかであるといわれています。
しかし、主に更年期障害と同じような症状が出ることが多く、更年期の女性にみられるように、その症状の出方は人によってさまざまで、私が受けている電話相談では「大変辛くて耐えがたい」という声も、ずいぶん多く聞かれます。
８月に開催された「かながわ乳がん市民フォーラム」で行われたアンケートでも、ホルモン療法が辛いという声が多く、症状には、ほてり、のぼせ、むくみ、関節のこわばり、関節痛、うつ状態などが上げられています。症状が悪化してホルモン療法を中断した人は全体の16％にのぼりました。
他に、夫婦生活に影響が出たり、男性医師には相談しにくいなどの悩みも寄せられています。
　
　ホルモン剤は５年間の服用が必要になります。
長期の投与によって副作用に苦しむ人がいることを、家族も医療従事者も理解して頂きたいと思います。
乳がんの再発率を抑えるために無くてはならない療法ですが、どうしても副作用が強く、ホルモン療法に耐えられない場合は、何らかの抗がん剤の投与が必要になるでしょう。
各患者さんの状態に合わせた、きめ細かい対応が求められます。
　
　ＥＭ―Ｘ防医学研究所では健康全般に関するさまざまなご意見ご要望をお待ちしています。（℡０４８―４６１―２００９）

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