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連載 63

2007/03/01

インフルエンザとタミフルを考える

連　載６３　　　インフルエンザとタミフルを考える
　このところ、インフルエンザの治療薬「タミフル」を服用後の死亡事故が相次いで、とくに中学生以下のお子さんを持つ保護者の間に不安が広がっています。
　
　厚生労働省の発表によると、タミフルが２００１年２月に発売されてから06年までの服用後の死亡例は54人で、そのうち、突然走り出すなどの異常行動による交通事故や転落死は５名でした。
　
　ただインフルエンザの場合、タミフルを飲まなくても高熱から脳症が起こって、うわごとを言ったり、暴れるなどの異常行動を起こすことがあります。
　
　そのため、厚労省は「インフルエンザによる脳症なのかタミフルの副作用なのか区別がつきにくい」として、死亡事故とタミフルとの因果関係には今のところ否定的です。
　
　しかし今年の２月、タミフルを飲んだ中学生が、マンションの手摺りを飛び越えて転落死するという痛ましい事故が２件続けて起こったことから、
今後は１万人規模の調査を行い、秋までに結論を出すという方針を打ち出しました。
　
　さて、風邪とインフルエンザとの違いについてよく聞かれますが、風邪の原因となる主なウイルスはライノウイルス、コロナウイルス、アデノウイルスなどで、
いずれも感染力が弱く、症状も軽く、熱が出てもすぐに収まります。
もちろん「風邪は万病の元」ですから、治療もせず休養もとらずに無理をすれば重症化し、肺炎や腎盂炎などを起こすこともあります。
風邪は過労や体調不良を知らせる信号と思い、十分に静養しましょう。
　
　一方、インフルエンザはＡ型、Ｂ型、Ｃ型があり、大流行したり死者を多く出すのは感染力が強いＡ型で、感染の２日後に増殖のピークを迎えます。

　症状としては急激に高熱を出し、関節痛が起こり、脱力感が出て、腸炎や腎障害を起こす例もあります。一度かかったら抗体ができて２度目はかかりにくいのですが、このウイルスは突然変異を起こしやすく、少しずつ形や性質が変わるので、同じ人が毎年かかることもあるのです。
最近はインフルエンザかどうかを判定する試薬が開発され、のどや鼻の粘膜を採取して、10分後には診断がつくようになりました。
　
　現段階ではインフルエンザウイルスの増殖を抑える薬は「タミフル」と「リレンザ」に限られています。
「リレンザ」は口から吸入するタイプの薬でイギリスからの輸入薬です。
経口薬の「タミフル」はスイスの製薬会社から輸入されていて、飲みやすいために日本国内だけで、なんと世界中の消費量の７～８割を占めています。
日本人の薬好きには医者の私でも驚かされますが、このような情報が過大に伝わったのか、保護者の方々の間では、インフルエンザはこわい病気で、タミフルを飲まなければ治らないという誤解がずいぶんあるようです。
　
　では、タミフルが現れる以前は、インフルエンザによる死亡率は高かったのかといえば、そういうことはなく、現在とほとんど差がありません。インフルエンザによる死亡例は、昔も今も抵抗力の低い乳幼児やお年寄り、病弱な人々に多いのです。
　
　一般的には、日ごろから栄養、睡眠、運動、休養のバランスの整った生活習慣を心がけていれば、病気に対する抵抗力、免疫力を養うことができます。
インフルエンザにかかっても、温かくしてゆっくり休み、水分を十分に補給し、消化機能の回復を待って徐々に食事をとっていけば体力は回復していきます。
　
　タミフル使用の判断は医師それぞれに異なり、死亡事故が続いてからは、医師から保護者の方々に、薬の効用と副作用を十分に伝えて「処方しますか。どうしますか」と聞く例が増えているそうです。
私としましては、使用には慎重を期すべきと考えています。
　
　中学生までのお子さんがインフルエンザによる高熱で寝込んでいる場合は、なるべく側にいて回復するまで経過を見守り、心配なことがあればすぐに主治医に相談してください。
　
　ＥＭ―Ｘ予防医学研究所では健康全般に関するさまざまなご相談を受け付けています。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（℡０４８―４６１―２００９）

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