(cache) 田中茂

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連載 57

2006/09/01

長時間、効果が持続するがんの痛みをとる貼り薬

　
先月号では骨転移による痛みに有効な、ビスホスホネート剤についてお知らせしましたが、読者からたくさんの反響が寄せられ、がんの痛みに苦しむ方が多いことを改めて知らされました。
そこで今回は、がんの痛み全般を改善する薬についてお話したいと思います。　

がんはある程度進むと痛みが発生し、末期には７割ほどの患者さんに痛みの症状が出て、その約８割は激痛と言われます。
その場合は痛みのコントロールのために、モルヒネ等の麻薬を使用したり、神経ブロックといって、痛みの通路を遮断する方法がとられます。
　
がんの患者さんにこのような痛み止めの処置を行う第１の目的は「夜間、痛みに妨げられず眠れる」ことです。
夜間ぐっすり眠ることで、精神的、肉体的なストレスが軽減されます。
この目標が達成されたら第２段階は「昼間、安静時の痛みが消失している」を目指します。
これで家庭復帰が可能になります。第３段階は「身体を動かしても痛みがない」というもので、こうなれば日常生活には問題なく、社会復帰も可能になります。
　
今までは医師のなかにも「麻薬は末期がんに使用するもの」という考えが根強くあって、最新の治療法を学んでいなかったり、手続きが面倒ではないかと誤解している医師が多くいました。
患者さんの側も、「モルヒネ＝麻薬＝危険＝廃人」と連想し、痛みを我慢しているケースが多かったのです。
　
覚醒剤やコカインと同様、悪用すると非常に危険な薬ですから、国としても規制が厳しく、以前は医師のモルヒネの投与量はアメリカの４分の１しか使われておりませんでした。
しかし、最近は厚生労働省もがんの疼痛には大胆な使用を認めるという方向に変わり、アメリカなみの投与量になりつつあります。
　
モルヒネ製剤は医師の指示通り、適切な使用をすれば何ら問題はなく、痛みの治療にとって最高の薬となります。
　
患者さんも、がんの痛みは我慢する必要は全くなく、辛いから痛みをとって欲しいと医師に伝えてください。
今やがんの痛みは90％以上コントロールできるようになり、がんの初期であっても、激しい痛みにはモルヒネなどの麻薬が処方される時代なのです。
　
その進歩の過程を追って見ますと、平成元年には徐放性剤という、徐々に薬の成分が放出される薬剤が開発され、１日に１回ないしは２回服用すればいいモルヒネ製剤や、８時間有効の座薬なども使えるようになりました。
　
また、モルヒネの仲間のフェンタニルという麻薬を含む貼り薬も開発され、多くの患者さんを痛みから解放しています。
この薬はデュロテップ・パッチという商品名で、皮膚に貼るだけで72時間、約３日間という長時間の効果が得られることから、注目を集めています。
モルヒネ製剤と比較すると副作用として起こりやすい便秘が軽度で、モルヒネを使えない腎機能障害の患者さんにも安心して使用でき、利便性が高いことが特徴です。
入院しなくても通院しながら自分で貼りかえることができ、患者さんの日常生活の質をおおいに高めることができるようになりました。
　
この貼り薬も、他のモルヒネ製剤と同じように、痛みの強さに応じ、使用量が決まります。
２・５㍉・㌘の貼り薬１枚を３日ごとに張り替えるだけで痛みがなくなる方から、10㍉・㌘の貼り薬を１度に５枚以上貼る方までいます。
決して自己判断で増減せずに、必ず医師の指示通り使用することが、大事な約束事となっています。

当研究所ではがんおよび他の医療・健康に関するご相談を無料で受付けています。
ＥＭ―Ｘ予防医学研究所（　０４８―４６１―２００９）

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