◇五輪男子サッカー代表強化試合 日本2−1メキシコ
前半終了を告げる笛が鳴ると、すぐさまピッチ上で「反省会」が開かれた。吉田が真っ先に呼び止めたのは、守備ラインで相棒役を務める鈴木だった。身ぶりを交え、ポジショニングの修正を強く言い聞かせているようだった。時間にして約30秒。吉田はまるで鬼のような形相だった。
もちろん、伏線は失点シーンにあった。1点リードで迎えた前半39分、強烈なミドルを突き刺された。敵陣左サイドで宇佐美がボールを奪われると、守備ラインはそのままズルズル下がるだけ。序盤以降のメキシコのパス回しがボディーブローのように大きく響き、まったく圧力をかけられないまま、悪夢のような弾道を見守るしかなかった。
20日の夕食後、選手ミーティングが開かれた。攻守の戦術のすり合わせから個々の細かな連係まで、忌憚(きたん)のない意見をぶつけ合った。話はメンタル面にも及び、オーバーエージの吉田が4年前の苦い記憶を引っ張り出し、切々とこう語ったという。
「大会が始まればあっという間に終わってしまう。もし転ぶようなことがあっても、切り替える時間もないくらい。だから、後悔しないようにやろう。『もう少しやっておけば』とならぬようにやろう」
「それぞれが出た意見に対して、言いたいことを言い合えた。でも、大事なのはそれをピッチの上で出すこと。それが話し合いをする意味、意義だと思う」
確かに圧倒された。主導権を握られ、後半は攻撃にも転じられなくなった。それでも、権田を中心に微調整を重ねながらシード国相手に耐え、踏ん張った。フラフラになりながらも、辛抱強い守備が大津の劇弾を生んだ。
あぶり出された課題も成果も根こそぎ持ち帰り、すべてを初戦のスペイン戦にぶつける。
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