【ニューデリー】スズキのインド子会社であるマルチ・スズキ・インディアの同国北部マネサール工場での従業員による暴動で死亡した人事部長は、両手両足を折られていて、事務所が放火された際に逃げることができず窒息死していたことが明らかになった。
マルチ・スズキの広報担当者が、検視の結果を引用して伝えた。18日夜の暴動で死亡したアビナッシュ・クマール・デヴ人事部長(50)の遺体は「黒焦げ」になっていたが、金歯のインプラントを基に家族が確認したという。19日夕に火葬が行われた。マルチ・スズキは、売上高でインド自動車業界最大。
インド北部ハリアナ州の警察幹部は20日、同警察がマルチ・スズキの労働組合幹部12人の捜索を開始したことを明らかにした。この警察本部長補佐はダウ・ジョーンズ経済通信に対し、これまでに同州マネサール工場の従業員91人を逮捕したと明らかにした。
同本部長補佐は「マルチ・スズキは12人を告発した。労働組合の幹部だ」と伝えた。さらに、「捕まえて尋問する」と語った。
マネサール工場の従業員たちは18日に暴徒化して事務所などに放火し、デヴ氏が死亡するとともに、警官9人や日本人駐在員2人を含む100人近い幹部が負傷した。数十人の幹部が依然、入院している。
マルチ・スズキは19日、班長に暴力を振るったとして停職処分となっていた従業員の停職処分撤回を労働組合が求めてきた後に、この暴動が発生したと明らかにした。この工場では3200人の組立作業員が働いており、その約半分は常勤者で、残り半分は契約社員だという。
一部報道では、班長と従業員間の議論は班長による階級制に基づく侮辱に端を発したものだったと伝えていた。しかし、先の警察本部長補佐は20日、警察はこれについては疑っていると話した。というのも、関係したとみられているこの班長は伝統的なヒンズー教の階級制に属さないインドの原住民族の出身だからだという。またこの従業員は下のほうの階級の出だった。
同本部長補佐は、「発生時点ではカースト制に関することは関係していなかった」とし、「さらに、労働組合幹部の大半はこの班長や従業員の階級と何の関係もない地元出身者で、階級制の要因がかかわっていたという見方はここでは全く当てはまらない」と話した。
本部長補佐は、警察は労組の12人の幹部が同工場で計画的な暴動を起こすために、工場の従業員の一部および、以前に解雇された従業員と共謀していたのではないかとみていることを明らかにした。労組の幹部たちは「企業側幹部と交渉をしていて、この工場の1階にいた。彼らが窓を割って、作業現場にいた従業員たちを招き入れ、企業側幹部全員に乱暴を加えたり、けがをさせたりした」と述べた。
工場は暴動発生以降、閉鎖されており、広報担当者は工場再開の時間的なメドについては明らかにしていない。