現在位置:
  1. 朝日新聞デジタル
  2. 特集
  3. いじめと君
  4. いじめている君へ >
  5. 記事
2012年7月21日23時17分

印刷用画面を開く

mixiチェック

このエントリーをはてなブックマークに追加

いじめている君へ

《いじめている君へ》細山貴嶺さん

写真:細山貴嶺さん拡大細山貴嶺さん

■その胸の内 話してみて

 僕は17歳。高校3年生です。小学生のときに死のうとしたことがあります。

 水泳の授業の後、更衣室で制服のネクタイを自分の首に巻き、両端をぐっと引きました。息が苦しくなり、天井がゆらゆら揺れ、両親の顔が浮かびました。泣いていた気がします。

 結局、死ねなかった。後で冷静になって「死ななくてよかった」と思いつつ、同時に「苦しみは続くんだ」と落ち込みました。

 幼稚園から中学までずっといじめられました。「デブなお坊ちゃま」というキャラクターでテレビに出たことも、気にくわなかったみたい。「臭(くせ)えよ、ブタ。近寄んな」って殴られる。

 誰も助けてくれない。僕は本当に無価値なんだと信じていました。深夜、教室でパンツを脱がされてうずくまった自分の姿をわっと思いだす。心臓がばくばくして、涙が出て。親に隠れて包丁を握り、ぼーっと考え込む。死はずっと僕のそばにあったのです。

 いじめている君に、いじめられる側のそんな気持ちを考えてみてほしい。

 僕は「死ね」という言葉に敏感です。「殺す」には相手に対する積極的な感情がある。「死ね」にはそれすらない。「勝手に消えろ」「価値がない」と。君は軽く使っているだろうけど、それでどんなに傷つくか。

 1年前、かつて僕をいじめた相手に尋ねました。「なぜ僕をいじめたの?」。答えは「俺、いじめてないじゃん」でした。この温度差は何なんだろう。

 君も「いじめじゃなくてイジリ」と言うかな。僕は、君がなぜ人をいじめるのかを知りたい。本当は君も何かに苦しんでいるんじゃないだろうか。そうなら、いじめという形で発散せず、誰かに胸の内を話してみてほしい。僕は、君にも救われてほしいんです。(ほそやま・たかね=タレント)

検索フォーム

おすすめ

マイケル・サンデル教授の名講義を書籍化。東大での特別授業「イチローの年俸は高すぎる?」を上巻、「戦争責任を議論する」を下巻に収録

心を病む教師を長年にわたり診察してきた精神科医の警告と提言

制度の隙間で孤立し、罪を犯してしまった人たちを救う手立てはないのか。

元刑事の証言。行方不明となった少女の手がかりは、かけらもなかった…。

大人の都合と貧困に翻弄され、あまりにも無力な子どもたちを追った。

「いつから、こんな使い方をするようになったのだろう……」。ことばは時代や場所によって変わっていきます。校閲記者が、いろいろなことばを掘り下げていきます。


朝日新聞購読のご案内
新聞購読のご案内事業・サービス紹介
海猿×朝日新聞デジタル

朝日新聞社会部 公式ツイッター