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被ばく線量偽装疑い 立ち入り調査
7月21日 12時48分

被ばく線量偽装疑い 立ち入り調査
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東京電力福島第一原子力発電所の事故の収束作業で、工事を請け負った会社の役員が、作業員に対して、線量計に放射線を通しにくい鉛のカバーをして被ばく線量を少なく装うよう指示していたことが分かりました。
厚生労働省は、21日、作業員の被ばく線量のデータを保管している原発の敷地内にある事務所を立ち入り調査しました。

被ばく線量を少なく装うよう指示していたのは、福島県や青森県に事務所がある設備メンテナンス会社「ビルドアップ」の50代の役員です。
ビルドアップは、福島第一原子力発電所の放射線が高い現場で、配管が凍結しないための工事を請け負っていましたが、会社の社長によりますと、去年12月、役員が作業員に対して、それぞれが身につける線量計に放射線を通しにくい鉛のカバーをして被ばく線量を少なく装うよう指示したということです。
この役員は、21日、社長の電話での聞き取りに対し、「現場を下見した際、放射線量が急速に上がっていることを示す線量計のアラーム音に驚き、被ばく線量を少なく見せかけようとした。9人の作業員が一度鉛のカバーを使った。申し訳ありません」と説明したということです。
このため、厚生労働省は、作業員の安全確保のため線量計を正しく使うよう定めた労働安全衛生法に違反する疑いもあるとして、21日、原発の敷地内にあるビルドアップに工事を発注した企業の事務所に立ち入り調査を行い、作業員ごとの線量計のデータを確認するなどして当時の状況を詳しく調べています。

福島県内の下請け会社の話

福島第一原発での作業を請け負っている、福島県内の別の下請け会社の社長の男性は、「放射線量が高い現場での仕事の方が、お金は多くもらえるのは事実だ。しかし、被ばく量が1年間の限度量の50ミリシーベルトを仮に超えてしまえば、従業員は原発でそれ以上働けなくなってしまうし、会社としても原発の仕事ができなくなるので、放射線量が高い現場は、必ずしもいい話だけではない。うちの会社の場合は仕事を長く続けるために、放射線量ができるだけ低い場所の仕事を優先して請け負うようにし、個人の被ばく線量も毎日記録して厳密に管理している。今回のように、線量そのものをごまかして処理するのはあり得ないことで、原発での作業を支える下請け会社の信頼が低下してしまうのではないかと心配している」と話しています。

原発作業員の話

事故の直後から福島第一原発で作業にあたっていた男性は、「作業員の1年間の限度量は正式には50ミリシーベルトだが、実際には20ミリシーベルトを超えると、発注元の業者は現場での作業に出すことを避けている。私自身もおよそ30ミリシーベルトに達しているため、原発での仕事ができない。このため下請け会社は雇った作業員の被ばく線量が高くなると、作業員を事実上、派遣できなくなるため、日常的に被ばく線量を抑えたいと考えている。その一方で、被ばく線量が高くなり現場に入れなくなったベテランの作業員も多く、重要な人材が現場で不足している現状もきちんと知ってほしい」と話しています。

被ばく線量の管理の仕組み

原子力発電所で働く作業員の被ばく線量について、厚生労働省は安全を確保するため労働安全衛生法で、年間50ミリシーベルトまでと上限を定めています。
50ミリシーベルトを超えた作業員は、原発の管理区域で働くことはできず、違反した場合は、事業者に6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が課されます。
作業員がどのくらい被ばくしたかは、作業のときに身につける線量計でチェックし、事業者が管理することになっています。
福島第一原発では、作業員は作業を始める前に、東京電力側から線量計を渡され、終わったら返却することになっています。
今回、問題となったビルドアップの作業員の被ばく線量は、東京電力と元請けの東京エネシスが管理し、作業員に毎日伝えられるほか、ビルドアップにも、月に一度累計が報告されていたということです。
データは財団法人「放射線影響協会」に定期的に報告され、作業員が別の事業者に雇われても、被ばく量の累積が分かるようなっているということです。
作業員は今回、鉛のカバーをしたとされるデジタル式の線量計のほか、ガラスバッジと呼ばれる線量計も持っていることから、厚生労働省は、2つの線量計の値に大きな違いがないかや、同じ場所で働く作業員の線量を比較するなどして、当時の詳しい状況を調べています。

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