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【北陸文化】

【原発】傍観者でない生き方問う 安冨歩さん 金沢で「コンポジウム」

「矛盾を正当化する原発の論理が日本を覆っている」と語る安冨歩東大教授

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原発危機は、私の何を変えたか?

 「原発危機と『東大話法』−傍観者の論理・欺瞞(ぎまん)の言語」(明石書店)が話題となった東大東洋文化研究所教授の安冨歩さんが今月十一日、金沢市アートホールで「『魂の脱植民地化』を考えるコンポジウム@金沢」と題したイベントを開いた。テーマは「原発危機は、私の何を変えたか?」。市内の医師らが参加し、歌や芝居などを交えながら、原発事故後にあらわになった日本社会の問題点を議論した。(松岡等)

 安冨教授は、シンポジウムとコンサートを組み合わせた「コンポジウム」を各地で開いていて、今回は福井に次いで四回目。ツイッターなどを通じ交流している金沢市内の医師、福島県からの避難者、元原発技術者らがステージに上がった。

 スポーツドクターで声楽家でもある金沢市の北山吉明さんは、交流のある福島県須賀川市の自然食レストランが開設した市民放射能測定所をスライドで紹介するとともに、得意のテノールを披露。福井県敦賀市在住の舞台女優人村朱美さんは「ふげん婆ちゃんともんじゅ君」と題して一人漫才を演じ、核燃料サイクルの行き詰まりによる原子力政策の矛盾を皮肉って、会場を沸かせた。

「原発危機は、私の何を変えたか?」をテーマに語り合う「コンポジウム」の参加者=いずれも金沢市アートホールで

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 東京・中野で料理店を営む真崎庸さんは「東京の料理人から見た今回の危機」と題し、持ち込んだかつお節を削って参加者に試食してもらいながらトーク。「今の食べ物の流通を考えれば放射性物質が全く入っていない食材だけを出すのは不可能。安全かどうかは一人一人、自分で判断するしかない。魚や野菜を一つ一つしっかり見ていく、本当においしいものは何かを自分自身で考えることが、本来の生き方につながっていくのではないか」と語った。

 原発メーカーの元技術者のナカガワケンイチさんは、浜岡原発2号機、柏崎・刈羽1号機などの設計に携わった経験から「設計で津波に対する想定はなく、それは北陸電力志賀原発も同じ」「つくってきたからこそ心配なことはたくさんある。原発はもう人間には必要ない技術」と。福島原発から約二十五キロの福島県田村市から金沢市に避難している浅田正文さんも登壇し、福島での自然農法を紹介しながら、それを奪われた避難の現状を訴えた。

 「原発事故を『私』という視点で考えたい」と開催の趣旨を説明した安冨さんは、「原発を推進しようとしている人たちは『危険性』とすべきところを『安全性』という言葉にすり替えている」と、指摘。原発専門家の議論を紹介し「『機械は人間が使うもの』と言いながら、『人智を超えた原発について、人間の英知が必要であり、それを信じている』と論理が内部矛盾を起こしている」と批判する。

 原発事故で「原発を正当化するこうした論理が日本を覆っていることがあらわになった」という安冨さん。「幸福の追求をすべきはずなのに、幸福の偽装工作が追求されているようなもの。生活や生き方が問われている」と語りかけた。

 

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