◆いわきが炭坑で栄えていた当時、ノンプロの「常磐炭鉱野球部」は都市対抗野球7回出場を誇る強豪で人気を博した。だが炭坑の閉山で野球部は廃部に。その後、クラブチームの先駆けとして「オール常磐」が結成され、都市対抗に出場。フラガールが客席で応援して全国に観光の町いわきが知れ渡った。
「ピンチのときに野球があって、チャンスのときも野球があって、それが地域の人の下支えのエネルギーになっていました。だから原発で非常に疲弊している地域を救える、一つの材料になると思うんです。オールスターが来れば町が変わるきっかけになると期待しています」
「それぞれが自分のポジションで何かやらないとと思っているはずなんです。たまたま自分は野球場にいますから。やれることを最大限にやりたい。それがオールスター誘致であり、野球を通じた慰問活動。夢と希望を子供たちに与えることなんです」
‐野球には、それほど魅力がありますか。
「この辺りは巨人ファンが多い地域で、2010年に初めて巨人の公式戦がこの球場で開催されたとき、失神したお年寄りが相当出て救急車も3台ぐらい来ました。観客の平均年齢は高くて、お年寄りの人がつえをついて見に来られる姿が多かったんですが、野球はいろんな人を奮い立たせるんだってことを目の当たりにしました」
‐市内の野球組織を束ねる、いわきベースボールコミュニケーションの事務局長として野球教室などの開催にも携わっていますが、震災後、子供たちの練習環境は変わりましたか。
「いわき市内のグラウンドや広場など20数カ所が、がれき置き場となっていて練習をする場所がなくなったり、活動休止状態になっているところもあります。放射線量を心配する親御さんは、屋外でのスポーツを控えさせていたり、子供たちが本来、普通にできることができにくい地域になっています。子供たちにはお腹一杯、野球をやらせてやりたい。そういう環境を少しでも早くつくりたいと思っています」
‐グラウンドなどは除染が進んでいるのでは…。
「苦労して除染しても、雨が降るとたちまち使えなくなるんです。(汚染された)上の土を削って下の土と反転させ、40、50センチぐらいの深さにナイロンを敷いているので水はけが悪く、雨が降ったら何日も使えなくなる。50メートルぐらい走れるような屋内施設の建設を求めていますが、霞が関と現場の乖離(かいり)はありますね」
‐5月にプロ野球の2軍戦が開催されるのは楽しみですね。
「震災後、初めてのプロ野球です。市内の小中学校の野球チームを無料で招待して盛り上がろうと考えています。ここに宿営していた自衛隊の方を招待する話も進めています」
‐オールスターは秋ごろには開催球場が決定の見込みです。
「とにかく今、みんな単純なワクワク、ドキドキしたことが欲しいんですよ。オールスターが来ちゃうかも、っていう。震災後、口を開けば原発がどうだ、線量はどうだとか、いい話題がない。でも(福島開催決定の)3月1日以降、野球好きは会話が弾んでにこやかになっています」
◆福島でのオールスター開催の先には、世界に向けての夢もある。
「去年、メキシコでアンダー16の国際大会があって日本代表のスタッフとして同行させてもらったんです。現地では“フクシマ”を誰もが知っていて、お前は大丈夫か、よく生きていたな、と声をかけてもらいました。いつか野球の国際大会を開いて、福島は元気です、東北は元気です、外で野球をやれていますと、発信できれば。ここにいることでチャンスをいただいていますから、やっていきたいです」
‐被災地から発信したいことはありますか。
「被災地に住む人は不安な中に生きています。明日がどうなるか、来年がどうなるか、不安を抱えています。仮設住宅では自殺者も出ています。人間は孤独に耐えられない動物です。全国の人に背中を押してもらったり、叱咤(しった)激励される、そういうつながりを持ち続けたいんです。東北のことを忘れないで欲しいです。われわれも感謝の気持ちを忘れません。これから自立して歩む中での、お力添えをお願いしたいです」
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柳澤潤(やなぎさわ・じゅん)1974年7月5日生まれ、37歳。福島県いわき市出身。福島工業高等専門学校卒業後、いわき市役所入り。区画整備課、農地課を経て、いわき市公園緑地観光公社の公園緑地グループ統括に。関東圏で地元の農作物の安全性PRや販路拡大の営業も行う。08年結成の「いわきベースボールコミュニケーション(IBC)」の事務局長も務め、プロ野球選手の慰問活動受け入れや野球教室運営にも携わる。母校の福島高専野球部で29歳から3年間、
監督を務めた。
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