02 PDJ-Lab #02 2012.5.16 TABLOID@日の出

第1部 PDJ論

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対談テーマ PDJ世代の働き方について 猪子 寿之 安藤 美冬 猪熊 純 刈内 一博

第1部 PDJ論

第2部 PDJ会議

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ノマドとコワーキングワーキングカップルの課題 参加メンバー50音順 島原 万丈 浜田 晶則 猪熊 純 刈内 一博 木内 玲奈 笹本 直裕 茅野 達郎

第2部 PDJ会議

「働き方」とともに「職場」の意味も変わってきているのかもしれない。 日本人全体の働く環境を俯瞰することと コワーキングという新しいキーワードに接近することで 見えてくるものがある

刈内 一博刈内さん
前回の会議では、どんな暮らしや住まいがあると幸せかをテーマに議論をしましたが、その中で「ノマド」、「コワーキング」というキーワードが出てきました。
今回は、そのキーワードをテーマに会議をしたいと思います。
お二方のゲストにお越しいただいています。
島原万丈さん。『ポスト団塊ジュニア考』という報告書を2006年に出されていて、その中でPDJ世代について研究しまとめられています。
もうひとりは浜田晶則さん。大学院時代にコワーキングスペースの研究をされ、卒業後は独立して、コワーキングの企画をされていらっしゃいます。

PDJ-Lab #02 第2部 PDJ会議

また、今回のライブは「TABLOID(タブロイド)」という会場を使っているのですが、まずここについて、木内さんからご紹介を。

木内 玲奈木内さん
PDJラボでは毎回、会議をする場所にもこだわりながらライブを開催しています。
今回は東京の湾岸エリア、日の出にあるTABLOIDという場所で開催しています。
もともとは印刷工場だった建物で、情報化の中で役割を終えて使われなくなったものを、オフィス商業複合施設という形で再生したスペースです。
多目的ギャラリーやフォトスタジオ、アートギャラリー、その他にいくつかのオフィスも入っており、さまざまな展示会やイベントが行われています。
まさに、印刷工場として情報発信拠点だった文脈を今の時代に残しながら、新しい文化情報の発信拠点として、いろいろな方にご利用いただいている施設です。
TABLOID

会社の「職場」とは違う視点を持つ場としてコワーキングスペースに所属。
さまざまな場所で仕事ができても「職場」は絶対必要。
「職場」とはマザーシップ。
あなたにとっての「職場」とは?

刈内 一博刈内さん
職場の持つ意味、場所としての存在意義、位置づけというのは、それぞれの方によってだいぶ違うようです。時代や世代によっても変わっていきます。
まずは、ここにいるメンバーそれぞれが、職場をどう位置づけているかをお伺いしたいと思います。
笹本 直裕笹本さん
僕の上長は「自分の体が職場だ」、「行った場所が職場になる」と言ってましたが、僕は1スタッフであり、設計を仕事としている限りは紙にしばられます。
現在のオフィスは古いタイプの形で、1人当たり2〜4㎡くらいの広さです。
サッカーで言うホーム&アウェーではありませんが、そういうオフィス以外に、人を招き、相手からすれば来たくなるようなオフィスがほしいと思い、現在は個人的に、渋谷の「PoRTAL(ポータル)」というコワーキングスペースに所属しています。
そこでは絵を描く作業を行うなど、普段とは少し違う視点で考えられる場所にしています。
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猪熊 純猪熊さん
僕は大学と事務所を半分ずつ使っています。
モノをつくっていると頭の中だけでは想像できない分がいっぱいあるので、事務所は、脳みその代わりに考えていることを物にして散らばらせておく場所、みたいなことになっています。
そういう意味ではスペースがほしいというか。ちょっと入って電源が使えるところが外にあると、すごく助かりますね。
大学は書類系が多いので、普通の事務的なことに使う仕事場に近いですね。
茅野 達郎茅野さん
自分は営業をしていて、ほとんど職場イコール事務所だと思っています。
そこでお客様からいただく要望をまとめたり、提案書を作ったり。それを上司や仲間と共有、相談、報告して、必要があれば情報発信を行うなど、皆を巻き込んでいく場になっています。
今、コワーキングスペースなど、いろいろな場所で仕事ができるようになったといわれますが、大事な仲間や上司がいる「職場」というのは絶対になくなり得ない、もしくは絶対必要なものだと思います。
そうは言いつつも、パソコンを持ち歩き、喫茶店などで仕事をすませてそのまま帰宅。そうやって時間をつくるというメンバーも周りに増えてきています。
うちの会社(東京ガス)はどちらかというと、そういうことが進まないタイプの会社ですが、そのうちでさえ、こういう働き方が進んできていると実感しています。
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木内 玲奈木内さん
職場って聞いた時に頭に浮かんだのが、オフィスとそこにいる人。上司や後輩など、そういう環境全体を思い浮かべました。
私は広報なので、外に出て仕事をしたり、外でインプットやアウトプットを行うことがわりと多く、どこでも職場になるのかもしれませんが、職場ってもっとマザーシップ的な、拠点みたいな印象を持っています。
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刈内 一博刈内さん
今、僕自身が、コワーキングスペース付きのシェアハウスに住んでいます。
職場を使い分けているところがあって、この人とは短い時間で早く仲良くなって仕事をスムーズに進めたいと思う時は、あえて勤務時間外に自宅に招きます。
そこで軽くお酒でも交わしながら話をした方が、うまく仕事が進むケースも多いです。
もちろん、職場で上司や同僚と相談して進めていくことも必要で、本来の職場とシェアハウスの中のサテライトオフィスとを、うまく使い分けて仕事をしている感じがしています。
島原さん、PDJ世代をはじめ、日本人全体の働き方がだいぶ変わって来ているように思うのですが、そのあたり、どのようにとらえていらっしゃいますか?

数字的には、日本の雇用環境はイメージされているより全然変わっていない。
しかし、ノマドがレアなケースではないという実感はある。
統計に表れていることより先に何かが動き、意識が変わり始めているんだ

guest_0202島原さん

日本で働いている人、就業者は6600万人くらい。そのうち、いわゆる雇用者、企業に雇われている人が5700~5800万人です。働いている人の中で、勤めている人の割合が非常に多いわけです。
現在、ノマドやフリーランスの人達が注目されていますが、そういう自営業ないしは家族従業に携わっている人はどんどん減っています。企業に勤めている人がどんどん増えているのです。正社員の数も変わってはいません。
実は、日本の雇用環境は、イメージされているよりも全然変わっていないのです。
大学生に人気の企業ランキングも相変わらず大企業志向ですし、大企業に勤めている方の転職率はやはり低いです。よく終身雇用が崩れたといわれますが、一定規模以上の企業においては崩れていない実態があります。
そのあたりは、冷静に見ていかなきゃいけないと思います。

ただ、変わってきている点として、働く女性はすごく増えています。
生産労働人口である15〜64歳までの人口は減ってきていますが、就業者は増え、会社員も増えています。何が増えているかというと、非正規雇用の人たちが増えてきているのです。派遣さんですね。その大部分が20代前半〜30代前半の派遣さん、パート・アルバイトの方です。
従来、1970年代くらいからの話ですが、女性は20代半ばで結婚し、寿退社するか子供ができたときに会社を辞め、子供に手がかからなくなった40代後半に、またパートで職場に戻るという感じでした。

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労働力率は、1回下がって上がる「M字曲線」と言われています。このM字の谷の部分がどんどん上がっていのが、大きな変化の1つです。
終身雇用は崩れていないと言いましたが、年功序列賃金は見直されてきています。いわゆる実力主義、成果主義の人事制度をとっているところが多くなってきています。
年功序列が崩れていくと、勤め続けていれば給料は右肩上がり、という人生設計ができなくなってくることが大きなポイントだと思います。

また、ノマドについてですが、国では「テレワーク」と呼んでいます。ICT(Information and Communication Technology)を使って職場以外で働く人、ということです。
国土交通省によるテレワーク人口実態調査を見ると、テレワーカーと言われる人達は、被雇用者と自営業の方を含めて、2011年の調査で19.7%。2000年代半ばから伸びそうで伸びない状況だったのが、2010〜2011年にかけて伸びています。
やはりノマド化か、と思うとそれは間違いで、増えたのは在宅ワークです。
東日本大震災の影響で東京の企業が節電をしなければいけなくなり、早く帰って家で仕事をしてもいいということになったことが、大きく寄与しています。

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ですがノマドが、日本の3大都心部で働く人達にとってはレアなケースではない、という実感はあり、統計に表れていることより先に何かが動いていると思っていいでしょう。
ノマドワーカーと聞いたとき、フェイスブックで「いいね」を押すくらいの感覚はあるわけです。その「いいね」を押した人の意識にどう変化が生じるか。ここが、今僕らがもやもやしているところだと思います。
つまり、働き方は構造的にはまだほとんど変わっていませんが、意識が変わり始めている、ということになると思います。

猪熊 純猪熊さん
女性の労働者が増えている一方で、1人当たりの収入が減っている現実もあるじゃないですか。
その埋め合わせをするために共働きが増えていて、本当は働きたくないのに働いているのか、でもそこに何かおもしろさがあって働き始めているのか、働く理由を知りたい気がしますね。
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guest_0202島原さん
30代の収入が下がっているというのは、特に男性の給料が下がっているという経済的な部分は大きいと思います。
茅野 達郎茅野さん
正直、東京ガスという会社に勤めている以上、ノマドで自由に働く暮らしというのが、10年後20年後も想像できないのですが、その一方で、会社の後輩の中にはそういう思いを持った人達が出て来ています。
私も少なからず、上の世代よりはそういう部分を持っていると思います。
そう考えると、ノマドの定義にもいろいろな形があるのかな。
猪熊 純猪熊さん
大きい会社にいらしても、そういう空気感があるものなのですね。
茅野 達郎茅野さん
部署の下のメンバーに、だんだん増えてきていると思います。
業務に忙殺されていて、それをできないという葛藤もありますけどね。
刈内さんはどうですか?
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刈内 一博刈内さん
そういう風にしたいと思っている人は多いと感じます。
ただ、実際にはきっかけがなかったり、時間がなかったり。
そういう人が多いと思いますね。
guest_0203浜田さん
友達が某広告代理店で働いているのですが、そこでは最近、企業内ベンチャーみたいな制度をつくったらしいのです。事業計画を作って提案をし、収益などのリアリティがあればやっていいと。
そういうときに、自分がホームとして働いている場所とは別の、もう1つの場所が必要になってくるのではないかな。
そういう意味で、企業も変わりつつあるという予感はしています。

コワーキングとは「共に」という意味の「co」+「working」で
「集まって働くスタイル」のこと。
世界各国にあるコワーキングスペース「ファブラボ」は
日本の鎌倉とつくばで体験できる

刈内 一博刈内さん
現実として、日本では渋谷を中心にコワーキングスペースみたいなものが増えてきています。
今日はコワーキングスペースを研究していらっしゃった浜田さんに、研究の内容をダイジェスト版でご説明いただきます。
guest_0203浜田さん

コワーキングとは「共に」という意味の接頭語である「co(コ)」+「working(ワーキング)」で、「集まって働くスタイル」を言い、そういう場所が「コワーキングスペース」と呼ばれています。
目的は情報交換、イベントでの交流、技術や知恵のシェアなど、コミュニティづくりがメインになっていることが多いですね。
同じ場所を共有するという意味で、一緒に何かをつくることを目的にしている人がけっこう多い。1人や2人など、少人数でできる仕事の人が多いのが特徴です。
コワーキングスペースに来ている人はノマドワーカーのように、いろいろなところで働いている人が多いイメージだと思いますが、「ここで働きたい」と思って来ている人が多いいのではないかと思います。アンケート取ったわけではありませんが、僕の感覚として。
ニーズとしては、「自由」がありますが、フリーランスの方は比較的孤立した環境にあるので、逆に、実際の物理的な空間でのコミュニケーションというニーズもあると思います。

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一般的なオフィスは、1つの事業体が1つのオフィスを所有しています。すべてが共有スペースになっていて、企業のコミュニティが共有している状態をつくります。
ソーホーは個人で空間の設備を占有している状態です。
シェアオフィスもコワーキングスペースも、複数の事業体で1つのオフィスを共有しているのですが、コワーキングはコミュニティの中ですべての空間・設備を共有しているところが大きく違います。
シェアオフィスはブース貸しなのでセキュリティ面の問題はありませんが、コワーキングスペースはそれを、コミュニティをつくることでクリアしているところがあると思います。
では、事例を見ていきましょう。

下の写真は、ロンドンの「Hub(ハブ)」。コワーキングスペースの最初期の事例です。
料金設定が段階的に分かれているのが特徴です。
月にどのくらい使えるとか、無制限に使えるとか。「バーチャルオフィス」と言って、そこで登記だけをするプランや、「コネクション」というメーリングリストなどの情報を共有するプランもあります。
写真は「ホットデスク」と呼ばれるエリアで、皆が自由に使える場所です。

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これは、カフェとオフィスが複合している事例です。
会員だけがカフェの奥のコワーキングスペースを使うことができるのですが、彼らが働いているところを一般のカフェ利用者も見ることができます。
そういうところで、うまくコミュニティ外とも接続している事例です。

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保育所とオフィスが複合した事例で、1階に保育施設があり、2階にオフィスがあります。
設立者のご夫婦が、子供ができたときに働くことを断念しなければいけない状況になり、自分で働ける場所をつくればいい、他にもそういうことを思っている人がいるだろうと、立ち上げられたものです。

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工房とオフィスがくっついた事例。日本にもある「ファブラボ」です。写真はアムステルダム。
モノ作りがテーマで、そういうことが好きな人たちが集まり、自分では持てない設備をここで使うことができるというものです。
世界中の「ファブラボ」とwebカメラでリアルタイムにつながっていて、何をやっているかがなんとなくわかるようになっています。

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刈内 一博刈内さん
「ファブラボ」の定義を説明していただけますか?
guest_0203浜田さん
「ファブラボ」は固有名称で、「ファブリケーション」はモノづくりのこと。
たとえばCADデータをつくり、それをCNCルーターというマシーンでカットしたり、3D次元のデータを3Dプリンタで作ったり。
機器を使ったモノづくりを「デジタルファブリケーション」と言いますが、そういう新しいモノづくりを広めようという意識のもと、活動している団体です。
茅野 達郎茅野さん
それは日本にもありますか?
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guest_0203浜田さん
鎌倉とつくばにあります。
刈内 一博刈内さん
猪熊さん、ファブラボの起源ってわかりますか?
猪熊 純猪熊さん
もともとはMIT(米国マサチューセッツ工科大学)が、アジアのわりとスラムっぽい場所に、研究というか実験としてファブラボをつくったのが最初です。
すると、住民が自分達で家や家具をつくるようになり、どんどん町の状態が改善され、これはすごいものだということに。
次に、ヨーロッパやアムステルダムに置くとどういう使われ方をするかやってみたところ、アート系だったり、家具職人などが自分のクリエイティビティを発揮するために使ったり。
同じ設備なのだけど、その場のコンテンツによって使われ方が全然違い、しかもそれぞれが場所に合った形でうまくいき始めるというところがすごいということになって、広がって行ったのです。
今、おそらく世界中に40〜50くらいの数があり、日本には2つあるということですね。

単に仕事をする場所というだけではなく
新たな仕事をつくり出す場でもあるのが、コワーキングスペースの特徴。
日本では導入が始まったばかりで、可能性はこれから広がっていく

刈内 一博刈内さん
浜田さん、お話の途中にすみませんでした。
続きをお願いします。
guest_0203浜田さん
これは最初に出ていた「Hub(ハブ)」の、アムステルダムのものです。
皆が自由に使えるキッチンがあり、よく昼食に使われています。
写真はポストですね。メンバーごとにポストがちゃんと分けられているなど、設備もそろっています。
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木内 玲奈木内さん
事例を拝見していると、すごくバリエーションがありますね。
先ほどの、料金に「コネクション」というコースがあるのがおもしろいですね。
コミュニティに参加するみたいなことが価値ということですか?
guest_0203浜田さん
いろいろな仕事が生まれる情報が、メーリングリストで回ってくるのです。 「こういうこと今やろうとしていて…」みたいなことがわかり、メンバーが「それ手伝えるかも」など、リアクションをとることもできます。
メールングリストを目的に来る人も、けっこういますね。
仕事をする場所というだけではなく、仕事をつくっていく場所でもあるというのが、コワーキングスペースの特徴だと思います。
木内 玲奈木内さん
運営がおもしろいですね。
コミュニティが価値になるとすると、どういう運営をしていくか。
イベントなど、何か運営的なことでおもしろい取り組みもあるのですか?
PDJ-Lab #02 第2部 PDJ会議
guest_0203浜田さん
ロンドンに「bootstrap company(ブートストラップ・カンパニー)」というところがあります。
コワーキングスペースやシェアオフィス、カフェ、庭を皆で手入れしてくつろぐコミュニティガーデン、シアターなど、いろいろ複合的に運営されています。
刈内 一博刈内さん
研究内容のご紹介、ありがとうございました。
日本と海外のコワーキングスペースに違いはありますか?
guest_0203浜田さん
海外は日本に比べて、規模が大きいものが多いですね。大きいということは人が集まるポテンシャルがあるということですから、その大きさが特徴的かな。
これから日本のコワーキングスペースも、大きいということがけっこう大事になっていくのではないかと、個人的に考えているところです。
僕は今、富山でコワーキングスペースの提案をしています。
もともと惣菜カフェをやりたいとのリクエストだったのですが、現場に行ってみたら敷地が100坪あり、コワーキングスペースを提案させてもらったのです。
地方の特徴である一次産業とコワーキングを、うまく結び付けられないかと思っています。ITに強い人達と一次産業で働いている人達が、こういう場所で上手くマッチングできたらいいですよね。
PDJ-Lab #02 第2部 PDJ会議
刈内 一博刈内さん
コワーキングスペースは日本ではまだ導入が始まったばかりで、試験的なものだと思います。
そこに何が必要なのか、暮らしや住まいを考える我々が、これから真剣に考えていく段階にあると感じました。

30代前半の所得が、ここ10年で200万円近くも下がっている今
「ワーキングカップル」はPDJ世代の課題の1つ。
子育てを考えると、ゆるやかに助け合えるコミュニティが必要なのでは?

刈内 一博刈内さん
今日はもう1つのテーマとして、ワーキングカップルの課題を挙げたいと思います。
30代前半の所得が、ここ10年で200万円近く下がっています。今、380万円ぐらいが、30代前半の男性の平均年収と言われています。
お母さんや奥さんも働かないと家計が苦しいということで、共働き、ワーキングカップルが増えてきていると思います。
お母さんが働きながら子供を育てるのはすごく難しいのに、それが今起きていて、待機児童の問題やワークシェアの問題など、さまざまな社会問題が起きてしまっています。
社会のOSが追いついてきていないのではないかと思うのですが、そのあたり、島原さんのご意見、感想をお聞きできますか?
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guest_0202島原さん
たとえばオランダでは、正社員と非正社員の給料が変わりません。 日本は逆に正社員の既得権益がすごく強く、同じ仕事をしていていても、正社員と非正社員ではずいぶん給料や待遇が違います。これをフラットにしていけば、正社員であるメリット、非正社員であるデメリットは小さくなっていきますよね。
たとえば夫婦2人で、派遣的な仕事を週に3日ずつしたら、世帯で6日働くことになります。5日ずつ働けば10日です。そうすると、世帯収入としては比較的調整しやすいと思います。
ただし、そうなるためには企業の中における既得権益や労働組合をどうするか、もっと言うと、それを前提にした社会保障システムすべてを書き換えなければいけないので、非常に大問題だと思っています。
ただ、僕個人の考え方で言えば、フラットに選べればいいかなと思っています。ワーキングカップルをやろうが、旦那さんが働いて私は専業主婦でやると決めようが、二世帯同居で親におんぶに抱っこで暮らそうが、頑張って働こうとが、企業にぶら下がっていようが…。
頑張って皆で一生懸命に働かなければいけないということを、降りてもいい社会ができないのかなと、個人的には思っています。降りるではなく、半分降りるくらいですね。
刈内 一博刈内さん
木内さんは女性として、今後の働き方にどういうビジョンを持っていますか?
木内 玲奈木内さん
私はたぶん、一生働くだろうと思っています。でも、結婚して出産して家族を持って…ということもしたいと思っています。
島原さんがおっしゃったように、降りられたらいいですけど、たぶん降りられる環境にないというのが1つ。
あと、私はわりと働いているのが楽しいので。経済的に困るからという理由だけではなく、働いていたい気持ちがあります。
周りの人やお友達を見ても、子供を産んでも家庭だけにいるのではなく、外の活動をしたり、自分のしたい仕事をしたり。女性の方が、仕事とやりたいこととを両立している人が多い気はします。
PDJ-Lab #02 第2部 PDJ会議
茅野 達郎茅野さん
社内には共働きのメンバーも結構いるので、ちょっと聞いてみたのです。
「共働きすることによって何が変わりましたか」という質問に対して、皆が言っていたことの1つは、上手く時間を使えるようになったということ。
そして、身近に必ず頼れる人が必要だということも、全員が言っていました。
木内 玲奈木内さん
実際に自分が結婚して子供を産んで、働きながら育てるということを考えた時、私は実家が東京ではないので、親が手伝ってくれる状況ではない中、やはり住むところはすごく考えた方がいいと思っています。
ちょうど同じくらいの年齢の人と、同じくらいの時期に妊娠して、一緒に助け合おうみたいな。そういう環境がないと育てられないよね、みたいな話を友人としたことがありますね。
ゆるやかに助け合えるコミュニティは必要だろうと思います。
笹本 直裕笹本さん
僕の周りも今、まさに子供を生む段階の人が多いのですが、奥さんが働いてない人はほとんどいないのが現状です。僕自身も今結婚するとしたら相手に働いてもらわないと、おそらくいろいろなものが成り立たなくなると思います。
社会で提供できる住宅のストックが、さきほど木内さんが望んだような、共同体をつくって提供できる住宅モデルなのかというと、そうではありません。
ニーズを掘り起こせばあるのだろうけど、実際の住宅の提供の仕方はまだ整ってないと、仕事としていて思うところですね。
刈内 一博刈内さん
ワーキングカップルの問題は、すでに課題として明確にあると思います。
制度的な問題や働き方の問題、会社の問題などいろいろありますが、住まいを考えていく我々にもできることが確実にあると思います。
そういうことをこの場を通して真剣に考え、ワーキングカップルの世代が暮らしやすい世の中に変えていけるような活動を、少しでも進めていきたいと思っています。
PDJ-Lab #02 第2部 PDJ会議

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