01 PDJ-Lab #01 2012.4.4 THE SCAPE(R)@渋谷

第1部 PDJ論

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対談テーマ PDJ世代の幸せについて ジョン・キム 安藤 美冬 古市 憲寿 刈内 一博

第1部 PDJ論

第2部 PDJ会議

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参加メンバー50音順 安藤 美冬 猪熊 純 刈内 一博 木内 玲奈 笹本 直裕 茅野 達郎 成瀬 友梨 林 宏昌 古市 憲寿

第2部 PDJ会議

ノマドワークやコワーキングという新しい働き方がどんどん増えている今、 単に住まいを買うか借りるかだけじゃなく、もっと生き方に合った多様な住まいがあってもいい

刈内 一博刈内さん
第二部では、この世代の暮らしや住まいについて、どうしたらもう少し世の中をよくして、我々が幸せに暮らしていけるのだろうというところを考え、実際行動に移し、世の中を変えていくことを一緒にやっていけたらと思います。
今日は、「どんな暮らしや住まいがあれば幸せだろうか?」というところを、メンバー全員でブレストしていきたいと思っています。

住まいを買うか? 賃貸にするか?
買うことで広がる選択肢と、賃貸でいることの自由、どちらを選ぶ?

林 宏昌林さん
僕は結婚して、最近、子どもが生まれました。共働きなのですが、今住んでいるマンションの人達とのコミュニケーションがすごく薄いのです。
もっと支え合いながら暮らしていけたら素敵なのに、と思うのですが、そういう点、皆さんはいかがですか?
茅野 達郎茅野さん
自分は正直、そういう思いはないですね。そういう人は、この世代に意外と多いと思います。つまり、どんな家で暮らしたいなどの思いがあまりない人が多いのではないかと思います。
僕は今、親と一緒に分譲マンションに住んでいて、不満はありません。だからといって、将来はマンションに住みたいとか戸建に住みたいとか、どうなりたいという思いも特に持っていないですね。
林 宏昌林さん
僕は、マンションを自分で買って住んでいて、まあ、満足してはいますが…。

全員口々に:買ったんですか! すごい! 偉い!

古市 憲寿古市さん
この年でマンションを買うって、どういうことなんですか? すごく興味があるんですけど(笑)
林 宏昌林さん
大学時代は6畳一間みたいなところで暮らしていました。
きれいで素敵なマンションのチラシが、郵便受けに入るじゃないですか。僕はPDJ世代というより、もうちょっと上の世代の感覚に近いのかもしれませんが、将来、絶対にこういう素敵なところに住んでやるぞ、と思いながら、そのチラシを壁に貼ってました。

全員口々に:えー! すげーー! おもしろい!!

安藤 美冬安藤さん
わかる! 私も今は賃貸暮らしですが、3~4年ぐらい前までは分譲・賃貸に関わらず、こういうところに住みたいという欲望をすごく持っていました。会社をやめるときにあきらめた夢の1つですが。
今はワンルームマンションでも幸せです。家に不満もないし、逆にこんな家に住みたいという欲望もあまりない。ただ、住む場所は、自分の好きな町がいいと思っています。
林 宏昌林さん
僕は賃貸で毎月お金を払うのが、もったいないという感覚がありました。
古市 憲寿古市さん
でも、3.11の震災によって、家を持つリスクも話題になったじゃないですか。災害で家はなくなってローンだけが残ってしまうなど…。
林 宏昌林さん
そうなったら仕方ないと思っています。
自分なりに、「こういうのが理想的な暮らし方と家」みたいなものがあって、それを手に入れたい。その結果、災害などで壊れてしまったら、それは運命だったんだなと。もう一度、一から建て直して頑張ろうと。

全員口々に:すごい! かっこいいですね。

木内 玲奈木内さん
私も持ち家です。
うちの会社の物件ではなく、普通に中古マンションを買ってリノベーションしました。賃貸と購入、どちらでもよかったのですが、かかるコストと得られる空間や条件などで決めました。
5年住むかどうか、くらいの感じで考えています。46㎡くらいのマンションなので、ライフステージが変わったら移ることになるだろうなと。
安藤 美冬安藤さん
マンション買うとき、基本的には給料が右肩上がりなのを前提にしますよね。
26歳で体を壊した時、いくら元気でも、いつ何時、何が起こるかわからないと、ものすごく思いました。働けなくなったら、会社を首になったらと…と考えると、私は買えないです。怖くてできないなあ。
木内 玲奈木内さん
私は逆で、32歳の時に勤めていた会社が民事再生し、一瞬無職になったのです。
収入がガクッと下がったのですが、でも、生きてる限り住宅コストってかかるんだな、みたいなことを漠然と思いました。
そのとき、いろいろ最悪のことも考えたのです。仕事に疲れたらコンビニでバイトをして、マンションを人に貸して、自分はちょっと安いところに住む。そうすれば全然暮らせちゃうかなとか。
そんなことまで考えて買ったので、選択肢は増えた気がしています。
猪熊 純猪熊さん
感覚が似ていますね。
僕も木内さんと一緒で、買ったのは、自分の住みたい家に住みたいから。その後、本当に5年したら貸しちゃえばいいや、と思っています。
家の選択肢にどのくらいの広がりがあるのか、それが伝わっていないことの方が実は問題なんじゃないかな。
住宅を選ぶときの正しい情報や、そこから広がる可能性が伝わっていなくて、少ない情報の中から選び取らされているというか…。僕はそこに問題を感じます。
安藤 美冬安藤さん
分譲マンションを否定するつもりはないのですが、そういったリスクや想定外の事態も含めて、私は賃貸を選んでいます。
もっと言えば、自分の人生を固定したくない、という気持ちがとても強いです。
今はこの場所に住みたいけれど、来年や再来年は、海外や地方も含めて別の環境に…とか。なので固定化しないために賃貸を選んでいます。そういう人は、わりと多いのじゃないかな。
成瀬 友梨成瀬さん
私もまさにそうですね。家を買ってないですからね、建築家だけど(笑)
決めたくないと言うのもありますし、今はまだ、自分の住まいにそこまで興味がないのかもしれない。家に帰るのは1日のうち数時間だし(笑) 他に、作りたいものや仕事の方に興味が行っていて、あまり買うことに興味はないですね。
林 宏昌林さん
古市さんはどういう感じのお住まいなんですか?

全員口々に:興味あるー(笑) 知りたい! 聞きたい!

古市 憲寿古市さん
普通の賃貸ですよ。一生賃貸でいいんじゃないかと思っています。 安定とか固定は、ある意味リスクだと思うのです。突発的な出来事が起こらないとも限らない日本で、家を買うというリスクを進んで取る気はないかな。
一緒に仕事している友人と、同じマンションの違う部屋に住んでいて、職場兼活動の場ではあるので、寝るだけの場所というわけでもないのですが。

仕事と住まいが同じ場所にあることで、生まれる余裕がある。
固定のオフィスを持たず、移動しながら仕事をする「ノマドワーカー」という働き方

刈内 一博刈内さん
ここまでは、所有か賃貸かという、経済的な面から見た住まいの話が中心でしたが、いったんお金の話は置いておいて、今の暮らしから導いた「純粋にほしいと思う住まい」を考えてみたいと思います。
ほとんどの人は1日の中で仕事の時間が多いと思うので、「仕事を続けていく中でほしい住まい」とは?
安藤 美冬安藤さん
古市さんは、同じマンションの中に、住まいと会社の両方があるとか。
古市 憲寿古市さん
それがいちばん合理的かなと思って。 少人数の会社なので、オフィス専用のビルを借りる必要はないし、皆で近い所に住めば、遠い場所のオフィスにわざわざ行く必要もない。そもそも出勤出社を考える必要がないので、一番いいと思ってやっています。
今、多くの人は住む所と会社が分かれた生活をしていますけど、それって合理的じゃない場合も多いと思います。なんで皆、満員電車に乗って会社に行くんだろうなって、すごく感じますね。
安藤 美冬安藤さん
私もまったく同じ発想です。
今は仕事するスペースと住むスペースが同じ所で、階数を変えれば仕事スペース、部屋に戻れば住宅スペースになるというのは、すごく合理的だし便利です。
笹本 直裕笹本さん
合理化は逆に言うと、そうすればするほどストレスがたまる可能性もありますよね。僕が家をつくらせていただく方の中には、家は会社からちょっと離したいと違う距離感を取る、違う合理性を取る方もいらっしゃいます。
家とオフィスが一緒というのは、実際やってみてどうですか?
古市 憲寿古市さん
逆に余裕が生まれるんじゃないかな。
合理化というのはアーキテクチャーや行動レベルの問題なので、時間がスキップされたことによって、人としゃべる時間は増えるし、自分に使える時間も増えるので、豊かさみたいなものが生まれると思います。
安藤 美冬安藤さん
私も通勤時間がなくなったことで、本をゆっくり楽しむ時間が増えました。
私はノマドワーカーなので、あえてペーパーレスにして、どこでも同じ仕事ができるようにしています。どこでもオフィスになるし、遊び場にもなる。仕事と遊びが一体になるのって、すごくいいですよ。
刈内 一博刈内さん
ノマドワーカーとはどういうものでしょう?
安藤 美冬安藤さん
一般的には、固定のオフィスを持たずに、あちこち移動しながら仕事をする人をノマドワーカーといいます。
私の場合、デスクを1つだけ借りていますが、そこだけではなく、カフェや契約している企業さんのロビー、自分の部屋も含めて、あちこち使いながら、同じ仕事をいろんな場所でやっています。
フリーランス云々ではなくて、仕事のやり方のスタイルの1つです。
刈内 一博刈内さん
この中でノマドワーカーの人は…安藤さん、猪熊さん、成瀬さん、古市さん…約半分ですね。
林 宏昌林さん
多いですね。日本全体ではそんな割合にはなりませんから。
猪熊 純猪熊さん
最近、建築の現場監督もそんな感じですよ。
ナレッジワーカーというか、アイデアだけの商売じゃなくても、実は昔からある商売でノマドになったらすごく効率がいい、という場合もあると思います。
安藤 美冬安藤さん
ポイントは時間と場所の制約を受けずに働く、というところです。
刈内 一博刈内さん
1人でカフェなどで仕事をすると、ネットワークが広がらないということはありませんか? 皆で一緒に働いているからこそ生産性が高まる、という側面もあると思うのだけど。
安藤 美冬安藤さん
メリハリだと思います。
成瀬 友梨成瀬さん
うん。ずっと1人でいなくてもいいですしね。

同業者や異業者とコラボできる場として作られた、コワーキングスペースというスタイルも増えて来た。
でもそれって、PDJのためのものなのかな?

安藤 美冬安藤さん
コワーキングスペースやシェアSOHOなどで、いろいろな職業の人達といろいろな場所で働くという形もあるし、多様性を自分の中に取り入れるということが大事だと思います。
刈内 一博刈内さん
コワーキングスペースという言葉が出ましたが…。
猪熊 純猪熊さん
いま会議をしているこの場所、「THE SCAPE(R)」(東京都渋谷区)がコワーキングスペースの1つですね。
いつも1人だけで仕事をしていると煮詰まってしまうということで、もともとは、ただ一緒に仕事をする人がいるだけでいいというところから入りつつ、同業者や異業者とコラボできる場として作られたスペースです。それによって、一時的な組織としてのブランド力が高まる面もあります。 今、そういう場所が増えていますね。
ただ、増え方の割には、使う人は急激には増えていないようです。コラボでビジネスが大成功したという話もまだ聞かないので、たぶんそこが次のハードルでしょう。
木内 玲奈木内さん
うちの会社(リビタ)もシェアオフィスをやっているのですが、毎日そこにいる人というのはほとんどいなくて、カフェとオフィスの中間くらいの感じです。
見ていると、ノマドワーカーの方ってすごく多いし、会社員の方でも「状況が許せばそういう働き方をしたい」という声がすごく多いですね。
刈内 一博刈内さん
普通のサラリーマンって、会社の中で嫌な思いをしている人も多いので、生活圏と仕事圏は少し離しておきたい人も多いと思う。
僕自身は近くても全然気にならないけれど。
笹本 直裕笹本さん
会社にずっといなきゃいけない職業もありますから、そうなると離れたほうがいいと思うこともあるでしょうね。
成瀬 友梨成瀬さん
私が独立した頃は、ワンルームマンションの狭い部屋で、デスクの隣にベッドがあるようなところで仕事をしていました。でも、だんだん煮詰まってきてしまって、まだ仕事は少なかったけど引っ越して、家とオフィスを分けたのです。 そうしたらすごく効率が上がって、仕事がうまく回るようになったのです。
でもそれは、すごく離しておきたいわけではなく、今は同じマンションの違う階だったらよかったと思いますね。
古市 憲寿古市さん
仕事と仕事でない部分って、きれいに分かれますか? 僕は分けにくいのだけど…。
成瀬 友梨成瀬さん
私達もすごく分けにくいです。
猪熊 純猪熊さん
全部の境目がよくわからない(笑)
ところで、そういうふうにいろいろな場所を持ちながら仕事するのって、PDJ特有なんですかね?
刈内 一博刈内さん
その答えはわからないけど、世代が持ってる価値観というのは1つにあると思います。
また、社会自体が変わってきている面もあり、世代論とは別に、おじさんやおばさん達の住みたい形も変わってきている気がします。
猪熊 純猪熊さん
以前、「シェアしながら生活する」をテーマに展覧会をやったのですが、そういうことに一番抵抗があるのは、50代以上の男性の方達でした。女性は「年を取ったら、皆でこういうところ住みたいわ」とか言うのだけど。
日本全体が中流でなくなっている中で、僕はむしろ、シェアが苦手なおじいちゃんやおじちゃん達が、うまい形で仲間みたいなものを作れる社会に意図的にしていきたい。そうと思って設計活動しています。
だから、シェアとかってPDJのためになのかというのは、ずっと感じている疑問です。
林 宏昌林さん
それ、いいですね。
たしかにPDJが多いと思うけど、さらにそれに共感できる周りの方々をどんどん巻き込めれば、幸せな価値観がひとつ増えますね。

ライフスタイルが多様化しているのに、マンションの基本的の設備は昔からほとんど変わっていない。
生活スタイルに合わせた自由な住み方をしたいよね

刈内 一博刈内さん
このライブを観てくださっている女性の方から、ご意見をいただきました。
「かつての同潤会アパート(注:大正時代末期〜昭和時代初期にかけて、東京・横浜の各地に建設された集合住宅の総称)のような、下に図書館やカフェ、飲み屋、銭湯などがあるマンションに住みたい」と。

全員口々に:おもしろいですね。いいね。

安藤 美冬安藤さん
マンションに学食がほしいです(笑)料理ができないので。
古市 憲寿古市さん
食堂付きマンションというのはありますが、そういえば、デベロッパーはなぜそういうマンションをつくらないのかな。
刈内 一博刈内さん
法律的にはつくれる床の面積が決まっていて、それを住宅に回すか、皆で使う共用部分に回すかで、バランスが変わってくるのです。
共用部分が増えるほど家賃や価格が高くなるので、そのバランスがいつもせめぎ合いのところなのです。
笹本 直裕笹本さん
床=価値、みたいな考えは、PDJというか、これから買う人の間ではだんだんなくなっていくのかもしれませんね。
安藤 美冬安藤さん
これだけライフスタイルが多様化していても、マンションの基本的の設備って、昔からほとんど変わってないですよね。
多様な働き方や生き方、ニーズに合ったマンションという視点って、あるんじゃないかな。
猪熊 純猪熊さん
ニーズより、もっと提案型ですね。
皆、多様性がなくても幸福だと思わされてるんですよ。全部同じでも、別に住めるからいいよね。やっぱりマンション買った方が幸せだよね、みたいな感じ。
もっとどんどん作っちゃった方がいいと思いますね。
古市 憲寿古市さん
狭いワンルームが普及したのは1980年代。若手のサラリーマンの身近な投資先としてすごくヒットしたたのが、そのまま今に来てるんです。
でも、20代の結婚してない人は、1つの部屋の中にバスやキッチンなど、全部を収める必要はないですよね。
日本だけワンルームマンションが普及しすぎてしまったために、皆、若いうちはワンルームマンションに住むのが当たり前だと思っている。それって国際的に見ても異常な状況だと思うのです。それも変えてもいいんじゃないかな。
林 宏昌林さん
バス、トイレ別かが焦点、ということがそもそもちょっと悲しいですよね。もっと自由に多くの希望や種類があると、もっと楽しいと思います。
安藤 美冬安藤さん
俳優を目指す人のために、ちっちゃな劇場を併設した家があったらおもしろい。ライフスタイルのど真ん中のテーマで、おもしろいコミュニティやアウトプットが生まれるやり方ってないのかな。
笹本 直裕笹本さん
1つの公園があって、そこが使えるシェアハウスとか。
そこでは音楽もスポーツもできて、その周りにはシェアハウスがいくつも建っていて、皆、その公園に集まって一緒に何かやれたりして。
家の中で完結するのではなく、町ぐるみだとか、都市に広がっていく可能性とか、そういうところに皆でつくる家の可能性があるのかも。
木内 玲奈木内さん
それ、すごくいいと思う。
コミュニティがそれを許したり楽しんだりしちゃうみたいな。町ぐるみ、建物ぐるみで、特別な場所をつくらなくても、集まってくる人や一緒に住んでる人達でそういう場所にしていくとか。そういうこともできちゃうのかも。
古市 憲寿古市さん
でも、開けば開くほど多様な人が入れるけど、一方で、入ってきてほしくない人も入ってきてしまう可能性も高まりますよね。
セキュリティとシェアは大事な問題であって、安全面を考えると、僕はあまり開き過ぎたところには住みたくないなあ。
林 宏昌林さん
今はそういう開かれた場所があまりにもない状態なので、そういうのもあって、そういうのが嫌な人もいるというふうに、選べるのがいいと思いますね。

全員口々に:うん、うん。そう思う。

刈内 一博刈内さん
そういうニーズに、提供する側が応えられてない、という現状があるのかもしれませんね。
今日は皆さん、ありがとうございました。

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