うなぎ養殖
■概要
- ウナギは、古くからかば焼きなどの料理で親しまれ、養殖の歴史も長い。
- 関連リンク
■養殖の位置づけ
■主な生産県
■生産量推移
■養殖方法
- 養殖形態と飼育方法 ウナギの養殖では、主に1月下旬〜3月上旬に海から河川に遡上してくるシラスウナギ(体長約6cm、体重約0.2g)を採捕して種苗とし、池中で飼料を与えて200g前後の食用魚にまで育てて出荷する。従来、この養殖は、露地の止水池で自然水温下で行われていたが、シラスウナギを池に収容してから、餌付けを開始するまでの期間が長いために、その間のへい死率が高かった。また冬季は低水温でウナギが摂餌しないため、食用魚の生産に1.5〜2年間を要していた。
最近、シラスウナギの不足から、その歩留まりを向上させるため、シラスウナギを加温施設内の流水池、半流水池、または循環濾過池に収容して採捕直後から餌付けを開始し、初夏に自然水温が20〜25度になってから露地の止水池に移して飼育を続け、早いものは初秋までに食用魚にまで育てる方式が一般的になってきた。加温施設内で成長の遅いものは、そのまま夏期も施設内の池で飼育される場合もあり、また露地池に移したもので、初秋までに食用魚にまで育たなかったものは再び加温施設に移して、冬季にも飼育を続けるといった様々な方法が行われている。
- 適地選定 従来の養殖法では、ウナギの摂餌期間の長い気候温暖な地域であることが適地選定の有力な条件であった。しかし最近では加温経費の経済性と養魚方式の変化から、水温の高い地下水が豊富に利用できる場所が第1条件となってきた。止水式、半流水式、流水式によるウナギ養殖において、食用ウナギ1kgを生産するのに、24〜193m3の水量が必要という。また種苗の入手が容易であるためにも、できるだけシラスウナギが採捕自給できる地域が良い。
- 飼育施設と設備 加温施設は室内上屋と池からなる。上屋は、鉄骨ビニール張りが一般的である。池水の加温方式は、3.3m2当たり2m位の割合で池底に2〜2.5in(インチ)の亜鉛管を敷き、その中を45〜80度の温水を流す間接加温方式が大部分である。温水機は加温面積1000m2当たり、30〜50万kcal能力の重油ボイラーが多く使用されている。
上屋にある温水池と露地池を使用した、シラスウナギから食用魚までの一貫生産において、両者の池面積の割合は静岡、三重、千葉の各県では、それぞれ4〜6%と94〜96%、高知、徳島、宮崎の各県では30〜35%と65〜70%で、地方により異なる。 年間食用魚生産が15tとすると、上記生産方式では600〜800m2の温水池が必要とされ、その内訳は最初採捕したシラスウナギを入れて育てる元池として10〜50m2の池2面、生長したシラスウナギを分養する池として50〜300m2のものが少なくとも5面は必要となる。
池の水深は40〜70cmで、池壁は水面よりさらに50cm高くする。池には動水機(水車)や池底からの送気装置を設け、上屋内には換気扇が必要となる。露地の止水池は長方形で、面積は1000〜6000m2が標準である。水深は1m前後で、池壁はコンクリート製、ブロック製または玉石積みが一般的である。池底には、保水力があれば素堀でよい。いこい(憩)場(プール)、動水機も設置する。池のほかに、調餌用・出荷用諸施設と器具が必要なことは、他の養魚の場合と同様である。
- 養成法 シラスウナギを購入する場合は、どこで採捕されたか、大きさが揃っているか、活力があるかなどを調べ、池へ放養する前に薬浴をする。加温施設内の元池へ放養する場合、元池の水温は15度前後に設定し、シラスウナギを収容してから1昼夜に5度づつ上昇させ、最後に25〜28度とする。
餌づけは、夜間電灯をつけて、イトミミズを皿の上にのせて行う。2〜3日たって餌をとるようになったならば、徐々に配合飼料か魚肉を混ぜ、7〜10日後には完全にこれらの飼料に切り替える。この間給餌時間を徐々に明け方に移動させる。給餌量は、配合飼料では体重の5〜8%を、鮮魚では20〜30%量で、これを1日に2〜3回に分けて与える。
元池に放養したシラスウナギが成長して、池の収容力以上になると毎夜鼻上げするようになる。このようになったとき直ちに分養池に成長の良いものを移す。分養するには、前日の給餌を控え、当日餌に最初に集まってきたものが大型であるので、網でそれをすくって分養する。温水池の池水アンモニア態窒素は3〜20ppm、亜硝酸態窒素は1〜5ppmと一般に高いが、前者の安全濃度は水温25度、pH6.7〜6.8で10ppm以下とされているが、pHが上昇するとアンモニアの毒性は強くなる。溶存酸素量は50%以上あることが望ましい。
6月頃になって、温水池と露地池の水温がほぼ等しくなったときに露地池に移す、このとき、大型のものを間引いて食用魚養成用種苗として販売することもある。また、露地池での飼育では、現在では配合飼料がほとんどの養魚場で使用されている。粉末配合飼料に市販油を5〜6%添加し、水を入れて練り餌とし、金網かごの上に乗せて与える。給餌量は体重の2〜3%を1日1回午前中に与える。
- 収容量 収容量は養魚方式によって異なる。止水池では0.6〜3.0kg/m2、流水池では注水量によって異なるが10〜50kg/m2、1日1回池水が入れ替わる程度の注水を行っている、半流水池では3〜6kg/m2が一般的である。ウナギの成長に伴って、分養や間引きを行って上記の収容密度を保つようにする。
- 取り揚げ 食用サイズに達したウナギは間引いて取り揚げる。取り揚げ方法は、網差しと網引きの2通りがある。網差しは、餌に集まったウナギを4×4mほどの四角形の網で底からすくい上げる方法であり、網引きは地引き網を池全面にわたって引いて取り揚げる方法で、食用サイズに達したウナギのほとんどを出荷するときに行う。取り揚げ時、食用サイズに達していない魚は再び池に戻して飼育を続ける。
- 出荷 取り揚げられた食用サイズのウナギは、円形ビクまたは重ねかごの中で活けしめされてから、活魚または加工して出荷される。活魚輸送は、ビニール袋に10kgのウナギと水と氷を入れて酸素を吹き込み、輪ゴムで封をして行われる。2袋20kgをカートン箱やプラスチック箱に詰めて輸送する。加工品は頭を取り、開いて白焼きの後冷凍したものや、加熱すれば蒲焼きになるよう味付け後真空パックされたものなどがある。