第1回 乱獲で資源は危機的に、生息地破壊も一因

温帯域の3種類のシラスウナギの資源量の変化 (立川賢一による)

 ウナギ資源の減少はニホンウナギだけにとどまらない。主に食用になっている他の2種、欧州のヨーロッパウナギと北米のアメリカウナギも、ニホンウナギと同様に個体数の減少が目立つ。

 中でもヨーロッパウナギの状況は深刻で、国際自然保護連合(IUCN)の絶滅危惧種リスト(レッドリスト)では、最も絶滅危険度の高いランクである「近い将来に極めて絶滅の恐れが高い種(CR)」とされ、ワシントン条約の規制対象種にもなっている。アメリカウナギも、米国東海岸の各州レベルで漁獲の禁止措置や規制が導入されている。

 ウナギ減少の理由は必ずしも明確にはなっていない。だが、重要なものとして指摘されているのが、河口堰やダム、水力発電所などウナギの遡上や降下を阻む巨大な河川構造物の建設だ。これに、河川や湖沼の護岸のコンクリート化などによる生息地の破壊も加わって、ウナギの生息に大きな影響を与えたとされている。

 北関東の利根川流域や茨城県の霞ケ浦・北浦などは、かつては日本最大級の親ウナギとシラスウナギの産地であったのだが、1960年代後半から70年代に掛けて利根川の河口堰やその隣の常陸川の逆水門などが建設された結果、漁獲量が急減し、漁業がほぼ崩壊状態となったことがデータによって裏付けられている。

ウナギの生息に悪影響を与えた利根川の河口堰(写真クリックで拡大)