「「ニッポン」を売り込め 海外営業の先駆者に学ぶ」

アフリカが愛する「ゲイシャ」の味

川商フーズが売るガーナとナイジェリアの国民食

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2012年7月4日(水)

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 成長する海外市場をどう開拓するか。それぞれの企業はもちろん、日本経済の将来をも左右する大きなポイントになる。新興国の経済発展で競争のフィールドは大きく変わり、戦い方も一様ではなくなった。その最前線では何が起きているのか。

 「日経ビジネス」は6月25日号で「『ニッポン』を売り込め」と題した特集をまとめ、未踏の地に果実を求める先駆者たちを追った。この企画と連動し、「日経ビジネスオンライン」では5回にわたり、海外営業の猛者たちを紹介する。

 最終回は、西アフリカのガーナとナイジェリアで国民食となっているニッポンの缶詰「GEISHA」の売り上げ増に取り組む2人の人物を紹介しよう。ガーナに赴任している川商フーズの小和田規浩アクラ事務所長と、中東ドバイの拠点でガーナとナイジェリアの販売代理店を統括する中東川商フーズの林靖記社長だ。

=文中敬称略

 サハラ砂漠の南西に位置する西アフリカで、“ゲイシャ”が国民的人気を博している。

 といっても、宴席に華を添える「芸者」のことではない。サバのトマトソース煮の缶詰「GEISHA」(現地の日本人の間では「ゲイシャ缶」と呼ばれている)である。現地で「ゲイシャ」といえば、一般的にサバ缶のことを指すほどのブランド力を持つニッポンの商品だ。

ガーナとナイジェリアで国民食となっている、川商フーズのサバのトマトソース煮の缶詰「GEISHA(ゲイシャ)」

 ゲイシャの歴史は古い。今から101年前、「ノザキのコンビーフ」で有名な野崎産業が、米国向けに輸出したカニやミカンの缶詰のブランド名として産声を上げた。そして戦後間もなく、政府による缶詰産業振興プロジェクトの一環として、安価なサバを使った缶詰にも「GEISHA」ブランドがつけられて、世界各地に輸出されたという。その中で根づいた地域の1つが、ガーナとナイジェリアを中心とする西アフリカだった。

 最初は野崎産業の営業マンが、ゲイシャ缶を担いで西アフリカに売りに来たようだ。だが、そのゲイシャ缶が、なぜ、どのようにして、西アフリカに根づいたのか、その詳しい経緯は今となっては誰も知らないという。分かっているのは、最初に目をつけたのが西アフリカで活動していた香港に事務所を持つインド人で、その会社が代理店となってロンドン経由で輸出したらしい、ということくらいである。高タンパク質で保存が利き、値段も手頃という特徴が受けたと思われる。

入荷、即売り切れの「ゲイシャ缶」

 現在、ゲイシャ缶を取り扱っているのは、JFE商事(2004年に野崎産業と合併した旧川鉄商事)グループの川商フーズだ。同社はゲイシャ缶を中国で生産し、ガーナとナイジェリアに輸出している。年間輸出量はナイジェリア向けが約300コンテナ(1コンテナは1000箱、1箱は155gの小型缶が100缶)で、ガーナ向けが約100コンテナに達する。正確な統計はないものの、川商フーズによれば、ガーナとナイジェリアでのサバ缶における市場シェアは5割程度あるという。販売数量は年率2割程度で伸びており、川商フーズの稼ぎ頭の1つだ。

ガーナの首都アクラにあるスーパー「SHOPRITE」では、ゲイシャ缶は棚に補充後にすぐに売り切れてしまうほど人気だ

 人気のほどは、スーパーの棚に商品が並ぶと、すぐに売り切れることが裏づける。5月の最終水曜日、ガーナの首都アクラにある南アフリカ資本のスーパー「SHOPRITE(ショップライト)」を訪れた。

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大竹 剛(おおたけ つよし)

1998年、デジタルカメラやDVDなどの黎明期に月刊誌「日経マルチメディア」の記者となる。同誌はインターネット・ブームを追い風に「日経ネットビジネス」へと雑誌名を変更し、ネット関連企業の取材に重点をシフトするも、ITバブル崩壊であえなく“休刊”。その後は「日経ビジネス」の記者として、主に家電業界を担当しながら企業経営を中心に取材。2008年9月から、ロンドン支局特派員として欧州・アフリカ・中東・ロシアを活動範囲に業種・業界を問わず取材中。日経ビジネスオンラインでコラム「ロンドン万華鏡」を執筆している。

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