［ハンマー投げ］室伏２つの夢叶える！金＆ＩＯＣ選手委員

米国からロンドン入りし、出迎えた報道陣に手を振る男子ハンマー投げ日本代表の室伏

　２大会ぶりの金メダルが期待される陸上男子ハンマー投げ代表の“鉄人”室伏広治（３７）＝ミズノ＝が２０日、練習拠点の米国からロンドン入りした。４度目となる五輪では競技での結果以外にも、日本選手団をサポートし、立候補しているＩＯＣ選手委員選挙の活動も行う。ハンマー投げ発祥の地で行う五輪に競技と“裏方”との二足のわらじで挑む。

　室伏は薄手のジャケットを羽織って雨模様のロンドンに降り立った。約３０人の報道陣に手を振りながら歩み、柔和な表情には充実感を漂わせた。「いよいよ試合も迫ってきた。自分の力を出し切ること以外ない。結果はどうなるか分からないけど、自分の実力を出したい」と静かに言った。

　０４年アテネ五輪で、投てき種目でアジア史上初の金。昨年の大邱世界陸上は日本史上初となる五輪、世界選手権の２冠を達成した。今回も当然、狙うはメダル。だが、頭にあるのは競技の結果だけではない。ＩＯＣ選手委員の開票が８月９日にある。「陸上は後半だし、より多くの選手、特に前半の競技の選手と交流したい」。さらに「日本選手団も初めて五輪に出る選手が多くいるし、できるだけ声をかけて勇気付けたい」と日本の先頭に立つ決意を見せた。

　０８年北京五輪でも立候補したＩＯＣ選手委員には強い思い入れがある。「私の目標は選手のセカンドキャリア。競技にかけてきた選手が、次のプランがないがために納得する人生が送れないということがないよう、プログラム（の構築）などをＩＯＣでやりたい」。北京では２９人中１５番目の得票で落選。今回の改選は４人で、当選すれば８年の任期がある。競技者としての高い志を貫くため、選挙活動も重要だ。

　予選は８月３日、決勝は同５日。２週間前の現地入りは時差調整に加え、選挙も考慮したからだ。今後は英国中部レスター州のスポーツの名門ラフバラ大で調整し、数日後に選手村入りする予定。「ハンマー投げ発祥の地に日本から来たので不思議な感じがする。相撲で言うと外国人力士が来たような感覚に見えるかもしれない」と笑う室伏が、ロンドンで２つの夢を追いかける。

　◆国際オリンピック委員会（ＩＯＣ）選手委員　いわば「選手会代表」のような委員。選ばれれば自動的にＩＯＣ委員となる。現メンバーは２０人。うち１２人は五輪出場選手の投票によって選出される。ロンドン五輪での改選は４人で２１人が立候補。すでに投票は始まっている。日本は過去にシンクロの五輪メダリスト、小谷実可子さんが務めており、室伏が当選すれば２人目、現役選手としては初となる。