稀勢、初Ｖ逃した悔しさは白鵬破って晴らす！…名古屋場所１３日目

稀勢の里（左）は寄り切りで琴奨菊を下す

　◆大相撲名古屋場所１３日目　○稀勢の里（寄り切り）琴奨菊●（２０日・愛知県体育館）　稀勢の里が琴奨菊との大関対決を寄り切りで制し、２場所連続で２ケタ白星を決めた。全勝の白鵬と日馬富士が１３連勝し、優勝の可能性は完全消滅したが、１４日目の相手となる横綱・白鵬を真っ向勝負で粉砕し、日本人大関の存在感を見せつける。

　稀勢の里が、燃える胸の内を吐きだした。琴奨菊を寄り切って１０勝目を決めた支度部屋だ。「ここしかないでしょ。今場所は」。視線の先は白鵬をとらえていた。この日、初Ｖは完全消滅。日本人大関への期待を裏切った今、存在感を示すには全勝の横綱を倒すしかない。「やるしかないっしょ」寡黙な男の熱い響きが闘志を表していた。

　燃える材料は取組前にあった。今場所は今年初の大関昇進後、初めて東の正位に座った。通常なら千秋楽で白鵬と対戦するが、取組を編成する審判部は、優勝争いを重視し、楽日の横綱の相手に全勝の日馬富士を持ってきた。加えて１２日目の把瑠都戦で２度にわたる立ち合いの手つき不十分で幕内の土俵入り前に審判部に呼び出され、注意を受けた。大関の誇りに傷がつく事態。取り戻すのは土俵しかない。相手は過去、１３勝２５敗と苦手の琴奨菊。立ち合いで敵の手つき不十分で待ったがかかった。嫌な流れも左四つガップリの体勢から右上手を引き力でねじふせた。「必死でした」。白星にも笑顔もなく唇をかみしめた。

　先場所は１１日目で２差をつけＶレースでトップに立ちながら逆転を許した。反省は「冷静さ」を失ったことだった。場所後は知人に紹介された整体師に立ち合いの構えを指導された。編み出したのは静の構え。今場所から右手をしっかりついて相手に向かう姿勢に徹している。「落ち着いていこうと思っています」。２場所連続で２ケタを決めた要因が立ち合いの構えにあった。

　白鵬との大一番。「恥ずかしい相撲を取らないように思い切ってやるだけ」。静から動へ。優勝を逃したうっぷんをすべて横綱にぶつける。