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2012年7月21日(土)付

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シリアの混乱―「アサド後」への連携を

時間の余裕はない。国際社会はシリアのアサド政権に対し、あらゆる手段で包囲網を狭めるべきだ。同時に、政権の崩壊を見据え、新体制の輪郭づくりを急がねばならない。混乱による犠[記事全文]

衆参選挙制度―審議会で抜本改革急げ

参院の「一票の格差」をどう是正するか。与野党の協議が、またもや小手先の一時しのぎで終わりそうだ。先週、民主党の一川保夫参院幹事長が示した案は、来夏の選挙から選挙区の定数[記事全文]

シリアの混乱―「アサド後」への連携を

 時間の余裕はない。国際社会はシリアのアサド政権に対し、あらゆる手段で包囲網を狭めるべきだ。同時に、政権の崩壊を見据え、新体制の輪郭づくりを急がねばならない。

 混乱による犠牲者は推定1万6千人を超えた。ダマスカスでは、爆発事件で国防相やアサド大統領の義兄らが殺された。政権と反体制派の報復の連鎖は、いっそう激化しよう。現政権の先は長くないかもしれないが、市民の危機を放置できない。

 なのに国連安全保障理事会は亀裂をあらわにした。アサド政権に10日以内に市街地から軍を撤退させることなどを求める決議案は廃案になった。安保理がシリア決議に失敗したのは、これで3度目だ。ロシアと中国が制裁に反対し、ことごとく拒否権を使うからだ。

 これほど事態が悪化しての決議の再三の失敗は、2003年のイラク開戦をめぐる安保理の決裂以来の禍根といえる。

 ロシアにとって、シリアは軍事・政治的な利権がからむ友好国だ。中国と手を組み、米欧による紛争介入に抵抗するのはいつものことだが、人道の危機は急を告げている。大国の国益を優先する振る舞いは時代錯誤というほかない。

 米国、英国、フランスも、ロ中両国を非難するばかりでは責任逃れといえる。米国は11月の大統領選挙をひかえる。経済危機の西欧も、他国の紛争にかかわることに及び腰だ。米欧の退潮と中ロの台頭という新たな国際秩序が影を落とす。

 米欧は、アサド政権の関係者の資産凍結や原油取引の禁止など、国連の枠外で科している制裁をさらに強める必要がある。そのうえで、前国連事務総長のアナン氏が進めるシリアの国民各派による政治対話を、力を入れて支援すべきだ。

 市民の大量殺害に手を染めたアサド大統領への退陣要求は当然だ。重要なのはその後の、国民各派を代表する民主的な新体制への平和的な移行にある。

 独裁後の受け皿がないままに政府機能が失われると、今度は宗教や宗派の間の内乱になりかねない。

 国連の停戦監視団は、停戦が実現せずに少人数で派遣され、あまり機能できなかった。有効な平和維持活動をするには、米欧がめざしたような停戦違反への制裁をふくむ決議が要る。

 まとまりのないシリア各派の結集と新体制の構想を進め、「アサド後」への動きが加速すれば、それが、ロシアと中国に再考を促す最大の説得材料になるだろう。

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衆参選挙制度―審議会で抜本改革急げ

 参院の「一票の格差」をどう是正するか。与野党の協議が、またもや小手先の一時しのぎで終わりそうだ。

 先週、民主党の一川保夫参院幹事長が示した案は、来夏の選挙から選挙区の定数を「4増4減」するというものだった。

 自民、公明両党などが賛成する方向で、この法案が今国会で成立する見通しという。

 まったく不十分な案である。

 格差は最大4.75倍となる。東京高裁など各地の高裁が「違憲」「違憲状態」と断じた10年参院選の5.00倍はかろうじて下回るが、最高裁が国会に早期是正を求めた07年参院選の4.86倍とほぼ同じ水準だ。

 政党の利害が入り乱れ、抜本改革ができない。選挙制度をめぐる各党の協議で何度も見せつけられた光景が再現された。

 とはいえ、次の参院選は1年後だ。ここは違憲状態を解消するためのやむをえない措置として、今国会で「4増4減」を最低限実施すべきだと考える。

 任期満了まであと1年しかない衆院でも、参院と同じく、最高裁に「違憲状態」と指弾された一票の格差是正に各党が角突き合わす状態が続いている。

 衆院でも当面の措置として、今国会で小選挙区定数の「0増5減」を先行実施するのが現実的だろう。

 ただ、こうした緊急避難的な措置は今回限りにすべきだ。

 衆参そろって司法から厳しい批判を受けた異常事態をただせない。そんなことになれば立法府としての自殺行為だ。

 各党はこのピンチを奇貨として、両院の選挙制度を抜本的に見直すチャンスとすべきだ。

 なすべきことは明らかだ。

 政党同士の議論で結論が出せないのなら、ここは議員以外の第三者に任せるしかない。

 首相のもとに有識者らで構成する選挙制度審議会を今国会で設置し、改革案づくりをゆだねるのだ。

 審議会に求めたいのは、衆参の役割を再定義し、両院の制度を一体的に見直すことだ。

 たとえば、首相指名で優越するかわり解散もある衆院は、ときどきの民意を映し、政権党を選ぶことに主眼をおく。

 一方、参院は政党より人物を選ぶことを重視し、政策論争による合意形成を大切にする。

 両院が選挙区と比例代表の組み合わせという、よく似た制度のままでいいか。適正な定数の規模も重要な論点になろう。

 こうした議論には一定の時間がかかる。参院は16年の次々回選挙から、衆院も次々回総選挙からの適用をめざすべきだ。

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