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[ ワールドサッカーサテライト|ワールドサッカーキング 09.12.17(No.132)掲載 ]


大議論を呼ぶ“ベッカム法”廃止
リーガの競争力は保たれるのか?(3/3)

文=ハビエル・タマメス

新税制に賛成するスペイン人関係者

ミランのガッリアーニ副会長は「同じ条件で戦える」と語り、新税制に賛成の意向を表明
ミランのガッリアーニ副会長は「同じ条件で戦える」と語り、新税制に賛成の意向を表明

“反対派”の声を一通りまとめたところで、“賛成派”の意見にも耳を傾けてみよう。言うまでもなく、関係者全員がこの新税制に不快感を示しているわけではない。とりわけスペイン人選手の間では「外国籍選手だけが税率が安いのは不公平だ」として、当初から“ベッカム法”に反対する意見が多かった。R・マドリーのカピタン(キャプテン)を務めるラウール・ゴンサーレスは「全員が同じルールの下でプレーすべきだ」というシンプルなセリフで新税制を歓迎する意向を示しているし、オサスーナのカピタンであるプニャルはこの件について、次のようなコメントを残している。「すべての選手が平等に、というのが私自身の考えだ。そもそもスペインの法律なのだから、外国人ではなく我々スペイン人に恩恵が与えられるべきだと思う」

同様の意見は、AFE(スペイン人選手連盟)のヘラルド・ゴンサーレス・モビージャ会長や、R・マドリーの下部組織を指導するルイス・ミゲル・ラミスからも聞かれた。私の知る限り、スペイン人関係者には新税制に好感を抱く者が多いようだ。

そんな中、エスパニョールの監督を務めるマウリシオ・ポチェッティーノは、アルゼンチン人ながらもスペイン側の意見に賛同して、次のような論を展開した。「スペイン人が約43パーセントの所得税を支払っているのに、外国人が約24パーセントで済んでいる理由が理解出来ない。そのような特権があること自体、全く理由が分からない。私は新税制の下でもリーガの競争力が低下するとは思わないし、仮に外国籍選手の獲得が難しくなるというなら、カンテーラ(下部組織)からトップチームに引き上げる選手を増やせばいいだけじゃないか」

また、海外からも“ベッカム法”の廃止を歓迎する声が伝えられているが、これは当然のことだろう。何しろ、現在のスペインの税率によって、移籍市場で不利な状況に立たされていたのは彼らなのだから。「スペインのクラブには申し訳ないが」と、ミランのアドリアーノ・ガッリアーニ副会長は言う。「彼らの税率がイタリアと同等にまで引き上げられれば、我々は移籍市場での劣勢を挽回(ばんかい)出来る」


競争力の低下は避けられない

さて、実際のところ、新税制はリーガにどれほどの影響を与えるのか?マスコミは既に多くのテーマについて議論を戦わせている。「今後もリーガのクラブは競争力を維持出来るのか?」、「R・マドリーは今後もスター選手をかき集めようとするのか?」、「バルサはロビーニョを獲得出来るのか?」などなど。現時点ではっきり断言することは出来ないが、最後に私自身の見解を述べておこう。

まずR・マドリーとバルサに関しては、新税制の打撃を受けることはほとんどあり得ない。世界中に存在するソシオ(クラブ会員)と独占的な放映権という、2つの巨大な“資金源”を持つ彼らは、少々の負担増など痛くもないだろう。世界的な金融不況の中、今シーズン開幕前に平然と大型補強を行った事実がその証拠である。

一方で、その他のクラブ、特に経営基盤そのものが脆弱(ぜいじゃく)な中堅以下のクラブは、非常に大きなダメージを受けるはずだ。ポチェッティーノの言うように、新税制がカンテーラ出身選手の台頭を促せばいいが、今までカンテーラを重視してこなかったクラブにとっては悪夢のような状況が待っている。LFPのアスティアサラン会長が主張するように、ある程度の競争力低下は避けられないだろう。

もっとも、「全員が平等に税金を支払う」というこの法律を、スペイン国民は基本的に歓迎しているようだ。どう転ぶかは時がたってみないと分からない。まずは良い方へ転ぶことを期待して、1月の移籍市場を見守るとしよう。



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