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[ ワールドサッカーサテライト|ワールドサッカーキング 09.12.17(No.132)掲載 ]


大議論を呼ぶ“ベッカム法”廃止
リーガの競争力は保たれるのか?(2/3)

文=ハビエル・タマメス

移籍市場での利点を失うスペイン勢

バルセローナがイブラヒモヴィッチを獲得出来た背景にも“ベッカム法”の存在があった
バルセローナがイブラヒモヴィッチを獲得出来た背景にも“ベッカム法”の存在があった

04年以来、世界的名声を得たスター選手が相次いでスペインを新天地に選ぶようになったのは、決して偶然ではない。分かりやすい例を挙げると、R・マドリーはベッカムが加入した03年までは、2000年にルイス・フィーゴ、01年にジネディーヌ・ジダン、02年にロナウドと、基本的にはビッグネームを1年に1人だけ獲得する方針だった。それが04年を境に、“国外組”が急増する。マイケル・オーウェン、ワルテル・サムエル、ジョナサン・ウッドゲイト、ロビーニョ、アントニオ・カッサーノ、ルート・ファン・ニステルローイ、ファビオ・カンナヴァーロ、エメルソン……わずか3年間で、これだけの人材が国外から加入したのである。これらの移籍交渉で、R・マドリーが他国のクラブより有利な立場にあったことは間違いない。名門のブランド力を差し引いても、他国のクラブより税金が少ない分だけ、簡単により良い年俸を提示出来るアドバンテージは小さくなかったはずだ。

来年1月からこの“武器”を失う各クラブは、当然ながら新税制に激しく反対している。「政府には再考を促したい。さもないと、リーガへのスター選手の上陸が滞ってしまうだろう」と警鐘を鳴らすのは、バルセローナのジョアン・ラポルタ会長。彼もまた“ベッカム法”の大きな恩恵にあずかってきた一人である。

この夏、インテルからイブラヒモヴィッチを獲得するために、バルサは年俸として約1100万ユーロ(約14億9000万円)を提示した。この金額はそれまでインテルが彼に支払っていた年俸とほぼ同じなのだが、スペインに“ベッカム法”があるおかげで、最終的にイブラヒモヴィッチ本人の手に入る金額は約209万ユーロ(約2億8000万円)もアップすることになったのだ。

もっとも、新税制が適用されるのはあくまで来年1月以降に加入する選手のみ。“ベッカム法”が廃止されたとしても、イブラヒモヴィッチにすぐさま約43パーセントの所得税が課されるわけではない。ただし、その“執行猶予”はリーガ在籍年数が6年に達するまで。つまり、もし彼が在籍7年目以降も今と同じ手取り額を要求した場合は、バルサは1470万ユーロ(約19億8000万円)もの金額を用意しなければならない。

LFP(プロサッカー連盟)の会長を務めるホセ・フイス・アスティアサランは、『マルカ』紙のインタビューで次のように語っている。「新税制はリーガ全体に総額1億ユーロ(約140億円)の負担増を強いる。そうなればリーガの各クラブは、他国のクラブに対抗する力を失うだろう。クラブの支出は今まで以上に増え、スター選手がリーガに来ることはなくなる。結果として、ファンもリーガに興味を失うかもしれない」

このセリフには“反対派”の考えが集約されていると言っていいだろう。国内の全プロクラブによって構成されるLFPは「新税制が施行されればリーガの一斉ストライキも辞さない」という激しい態度で、政府に対して徹底抗戦の構えを見せている。



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