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奇人・変人・超人は「主に私」…加藤一二三さん著「将棋名人血風録」

名人について語った加藤一二三九段

 今年で誕生から400年を迎えた将棋の「名人」制度。現役生活58年の元名人・加藤一二三九段(72)がつづった「将棋名人血風録」(角川書店、780円)は、ファン以外も楽しめる一冊だ。加藤は、副題の「奇人・変人・超人」を「主に私です」と明かす。

 インタビュー時、録音のICレコーダーを準備していると、加藤がひと言。「あれあれ? 取材は1時間くらいですよね? 普通は全部覚えますよ、うふふふ」。名人になる人は、やはり違う。

 加藤は、1935年に世襲制から実力制へ移行された後、誕生した12人の名人の全員(自らを除く)と対局した経験を持つ。「最強は…羽生(善治)さんかな。他の人と比べ『これは歯が立たない』と感じる時がありました」。大山康晴―升田幸三の死闘、同世代の中原誠の強さ、先月まで行われた今年の名人戦でも覇権を争った森内俊之と羽生の人柄など、歴代名人のエピソードがつづられる。

 だが、一番面白いのは、自身の話だ。「対局地の旅館に流れる人工の滝を止めてもらったようなことはありました」。持参したストーブを相手に向けて怒られた思い出、「残り3分です」と記録係に告げられた10秒後に「あと何分?」と聞いた逸話…。副題の「奇人・変人・超人」は「主に私です、ふふふ」と明かす。

 加藤にとって、名人位は悲願だった。弱冠20歳で初挑戦しながら、大山に敗退。ようやく念願かなった時には42歳になっていた。「昭和57年7月31日午後9時1分に中原さんを相手に終わったのですが、終局の2分前に絶妙手を見つけて『あ、そうか!』と叫んだのは劇的な瞬間でした。当人が言うのもなんですが、名局中の名局です、ええ」。直後から40件もの取材依頼が殺到。名人位の影響力を実感した。

 話し出すと止まらない。気がつけば、取材時間は1時間20分を超えていた。今も名人を頂点とする順位戦に参加している72歳。「引退を考えたことは一度もないです。一生エネルギッシュにバリバリと、目をランランと光らせて戦いに臨みます。できる限り現役で」。甲高い声は最後まで弾んでいた。

 ◆加藤 一二三(かとう・ひふみ)1940年1月1日、福岡県稲築町(現・嘉麻市)生まれ。72歳。54年、史上初の中学生棋士に(14歳7か月は現在も最年少記録)。以来4期連続昇級し「神武以来の天才」と称される。82年、名人に。タイトル通算8期(名人1、十段3、王位1、棋王2、王将1)。9日現在で通算1307勝(歴代3位)1083敗(歴代1位)。現在、名人を目指す順位戦はC級1組に在籍。

 [新刊レビュー]

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(2012年7月10日13時46分  スポーツ報知)

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